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Prik Kee Noo  作者: ムトウ
17/23

17.Interlude

幕間。ハルと珠美さんの会話。



「佐藤さん」

「佐藤さん?」


「……え、…は? ああ、前園さん」

「ボーッとしてるね。大丈夫?」

「ああ、いや。まあね、うん、大丈夫」

「大丈夫? って聞かれたら、つい大丈夫、って応えちゃうよね(笑)」


「佐藤さん、これ、よかったらどうぞ。唐辛子煎餅」

「お。あ、これ東京の、神田の! 有名なやつだ。俺好きだよこれ、くれるの? ありがとう」

「すっごいビジュアルだよね。こんな真っ赤なお煎餅、初めて見た。八重樫さんが贈答用にそこのお煎餅注文したんだけど、そのときに見つけて、これは絶対ハルが好きなやつでしょ、っておもしろがって注文したの」

「へーそうなんだ。ガッシーにもよろしくお礼言っといて」


「で、前園さん、最近はどうなの。ガッシーとうまくいってる?」

「おかげさまで」

「ちぇ。相変わらずガード固いよな。ちょっとくらいのろけたっていいんじゃないの?」

「職場でそういう話好きじゃないって知ってるでしょ」

「昼休みくらいいいじゃん」

「昼休みじゃなくたってしてるよね、佐藤さんは」

「さては、午前中に独り言マシンになり果ててた俺って、社内の噂になってる?」

「しりとりのお題メーカーになってたって聞いたけど?」


「ていうか、俺にも何がなんだか。ひたすら、あーあ、とか、ヒドいよなぁ、とか言ってるだけだから、訳わかんないよな」

「うん。でもそれ、訳がわかるように喋ったりはしないでしょ。チャラく思われてても、実は口堅いよね、佐藤さん」

「……なに、急に」

「そういうところ、かなり信頼してる。私が困ってたとき、話を聞いてくれてすごく助かったから」

「……ひょっとして、“話聞くよ”って言ってくれてんのかな?」

「うん。そうね。もし佐藤さんが話したいなら。聞くよ?」

「…………そっか。うん、ありがと」




「あのね、佐藤さん。実はね、」

「ん? 何改まって」

「実は、……私、水野さんとつきあってたの」

「…………はあ?!」

「しっ。声大きい」

「あ、ごめん」


「って、営業の?」

「ああ、あーあーあー、そっか、そうだ、なるほどあいつ結婚したよな。そういや、あれ送別会の日だった」

「えーーー、あいつそうなの? そーいうやつだったの。ひっでえな」

「あ、でもその後、弁護士がどうとか言ってたよね。いろいろあったんだなーーー」

「そうだったのか…………」


「ていうか前園さん、いきなりどしたの。何故に今ぶっちゃけタイム。しかも昼休みとはいえ会社で」

「……別に、もう前の話だし。今となってはどうでもいいんだけど、なかなか悲惨でしょ? あのときは結構キツかったのよ」

「そりゃ、まあそうだね。目の前に元凶がいるんだもんな」

「元凶って(笑)」



「あれ。もしかして、俺を励まそうとしてくれたの?」

「………………」

「うわ。前園さんかわいい。そのまま箱詰めしてガッシーに届けたい」

「…………何言ってるの」


「励まし、っていうか。悲惨なわりにアホらしい話だから、ちょっと笑えるかな、と思ったのよ」

「ははっ、確かに。びっくりして、なんか気が紛れた」


「ありがとね。ガッシーも、心配してくれてんのかな。お礼言っといて」

「自分で言えばいいでしょ」

「そこでツンツンされるのかー。やっぱいいよなー前園さん。ガッシーと別れたら俺とつきあわない?」

「……You’re so silly」

「さんきゅー!」

「褒めてないから」




前園珠美さんと水野さんの話は「Ginger」に出てきます。




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