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黒い白鳥  作者: ツァイト・ツァラトゥストラ
5/10

第四夢

「白鳥君」

「なんだ?梅重(うめがさね)

「あなた、能力、何?」

「…今?昼休みにして。転入早々、目ェつけられんの嫌だから」

「…。分かった」


4時間目のチャイムが鳴り、昼休みが開始した。

「白鳥君」

「ああ。…どこか人に見られないところで話そうか」

「分かったわ。じゃあ、屋上がいいかしら」


屋上は5階のさらに上にあるようだ。

「うおっ。(さみ)ぃ」

「じゃあ、手短にするわ。あなたの能力は?」

「何故気になる?」

「それによってはAクラスに上がることも夢じゃなくなるわ」

「Aに固執するようだが、何故だ?まだここのこと、よく分かってないんだ」

「先に私の質問に答えて」

『あまり自分の能力を多言しない方が良い』

脳裡に生徒会長の言葉がよぎった。俺が生徒会室を出る直前に言われた事だ。

『それを言うと、学園内での生活が困難になるかもしれない』

「…。俺は別に特殊能力とかは無いよ」

俺がそう言った瞬間、梅重の黒い眼がさらに濃くなった気がした。

「…。ウソ。あなたは何か特殊能力を持っているわね」

(なぜ分かった?これも特殊能力の類か…?)

「バレちゃしょうがないな。生徒会長に言わないよう言われてたんだが。まあ、あれだ。未来が見える…とかそんなのだ」

また梅重の眼が濃くなった。

「はいウソ。さっさと言ったら?屋上、寒いでしょ?」

「……。あれだよ、夢をホントにすることが出来んだよ。俺は」

梅重が微笑んだ。

「やっと本当のことを言ってくれたね」

「なぜ俺の嘘が分かった」

「私の能力が『嘘を見抜く』っていうのだからよ」

「それは、嘘ではないのか?」

「自分が嘘を()くと、強烈な不快感に襲われるのよ。だから、私は嘘を吐けない」

「副作用付きの特殊能力か…」

「大体みんな副作用はあるはずだわ。勿論、あなたにもね」

副作用…。まだ能力を使っていないからか、感じないな…

「まあ、私の知りたいことは知れたし、もういいわ。昼休み、あと40分あるけど。どう?私と一緒に食堂行かない?」

「『私と一緒に』…ね。まあ、そこの使い方教えてくれよ」

「決まりね。じゃ、早速行くわよ」


「ッ!」

1号館から、食堂までの間にある広場、つまり中央広場を歩いている時、突然、後ろから蹴りが飛んできた。

既知(デジャヴ)だったから、避けることが出来たが、かなり危険な、鋭い蹴りだな)

「ハハッ!流石だなぁ、ローエングリン」

「あ?誰だ貴様は」

「俺は浅山(あさやま)帝男(ていお)。Eクラスの支配者だ」

浅山と名乗った男は、見るからに不良そうだが、見る人によってはいい人に見えなくもなさそうな人だった。

「Eクラス…。アッハハ!雑魚じゃねぇか!」

「浅山くん。何の用かしら」

「あ?おお、梅重じゃねぇか。俺はローエングリンを試してこいって言われたんだ」

「ローエングリン?さっきからお前、そう言ってるけど、誰のことだ」

「お前だよ。ああ。そうか、()()の呼称だったな。すまないな。白鳥黒衛」

「試せって言われてんのかどうか知らんが、俺らは急いでんでな。また今度にしてくれねぇか?雑魚くん」

浅山が腹に向かって殴ってきた。

「ガハッ!」

「おい。二度と雑魚っつうんじゃねえぞ」

浅山は低くそう言った。

(なんだ?既知の外側だったのか?…いや。何かがおかしい。こいつと出会うことは予見していた。さっきの蹴りをかわしたのが証拠だ。なら何で?)

「ハッ。腹パンが通じたのが何でかって顔してんな。教えたろうか?俺ァ『気配を消せる』んだよ」

「気配を…?」

「そ。さらに俺はお前と違って自由に能力を使える。梅重もだな」

(自由に?俺が今、使っているやつは確かに自由に使えている訳じゃないが…)

「自由に使えるようにさせるためにフラージェレは俺をけしかけたのさ」

「フラージェレ…?誰だ?」

「生徒会長、と言えばわかるか?」

生徒会長が何か関わってんのか?だとしたら、なぜ自分で来ない…?

「あと、フラージェレがてめぇで来ない理由は、奴が『思考(ノイマン)型』だからだ」

「何の話だ」

「『思考型』。私や生徒会長はそれなのよ」

「だから何の話だ!」

「能力が覚醒した場合の力の流出の形の事よ。あなたや浅山くんは『行動(カレリン)型』」

「何が違う」

「『思考型』は、覚醒した場合、IQが大幅に上昇し、頭がとても良くなるの。それに対し、『行動型』は、運動神経や力が強くなるの。現に、浅山くんはドーピング並の力でさっきあなたを殴ったり蹴ったりしてる」

「なのに俺は大怪我を負ってないのか?何で…?」

「そりゃあ、お前が既知で無意識にダメージを最小にしてるからだな。だから、自由に使えるようになりゃあかなり強くなれる」

「そりゃあいいな。だがな、俺は強くなりたいわけじゃないし、アンタらがなんでそうしたいのかも知りたくないんだ。ゆえに、俺はアンタらに関わりたくない。行くぞ、梅重。時間がもうない」

俺らが立ち去ろうとすると、

「後悔しねぇな?」

「ああ。しないだろうな」

「この先、俺らはこの学園で大量虐殺を行う可能性もあるんだぞ?」

ガンッ

気が付くと俺は浅山の胸倉を掴んでいた。

「ここには俺の妹がいる。そんなことをしたら…」

「許さねぇってか?…ハハハハハ!覚醒もしていないお前が?俺らを?カハハハハ!ふざけろよ」

そう言うと、俺の腕を握ってきた。

「ッ!」

かなり力が強い。本気を出せば折れてしまうだろう。

「この手も(ほど)けねぇだろ?」

「やめろ。エンペラー。お前がフラージェレから任されたのは彼の覚醒の手助けのみ。ここまでする必要は無い」

そう言って浅山のうでを握ったのは姫川(ひめかわ)副会長だった。

「ハッ!わぁーったよ。クイーン」

「白鳥君。あなたもこの腕を()きなさい。覚醒してないあなたでは私たちにまだ勝てないわ」

…。舐めやがって…?

「白鳥君!」

目の前が点滅する。血が頭に登り、頭が熱い。だが、思考は冴えている。

「ほう。お前自身で覚醒するとはな。驚いた」

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