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黒い白鳥  作者: ツァイト・ツァラトゥストラ
3/10

第二夢

「はじめまして。『私立色音学園・高等部』校長補佐の霰野です。どうぞよろしく」

「はじめ…まして」

(美人な女性(ひと)だなぁー…。できる女って感じがすごい…)

霰野は20代中盤くらいの女性だった。

「では、こちらに」

初等部の廊下を歩き出した。

「白鳥さん。あなたはスマホをお持ちでしょうか?」

「え、ええ。持ってますが…」

「先程聞いたと思いますが、この学園では通常のスマホは使えないんですよ。なので、学園(こちら)側が用意したものに変えてもらっているんですが、白鳥さんは変えるのは大丈夫でしょうか」

「はい。大丈夫です。先程、妹のを見ていましたが、特別、危険なこともなさそうなので」

「妹…。二人いらっしゃいましたね」

「そうですね。双子の姉妹です」

「双子…。見た感じ、性格は全然違いそうでしたね」

「あー。そう見えますか…。まあ、実際そうなんですがね」

初等部2号館を出た。

「初等部から高等部までは1kmほどありますので」

「1km…。どんだけ広いんだ…」

「学園全体の敷地面積が約295000㎡ですからね」

「でかい…のか?」

「それなりには大きいはずです」

その後、霰野さんは学校の施設や部活などについて教えてくれた。

「ここが高等部の2号館です」

「初等部のよりも大きいんですね」

「それはそうでしょう。初等部と同じ規模…あるいはより小さいと、初等部、あるいは幼少部になってしまいますからね」

(それもそうか…)

「では、生徒会室へ案内いたします」

「生徒会室?校長室じゃないんですか」

「ええ。大体、生徒の事情は生徒会の役目です」


生徒会室は2階の最端にあった。

篳篥(ひちりき)生徒会長。白鳥さんをお連れしました」

生徒会室の中には、背の高いメガネのクールな男性がいた。

「ああ。ありがとうございます。ここから先は生徒会の役目ですので、お帰りいただいて結構です」

「では。失礼します」

霰野が生徒会室から出ていった。生徒会室の中には生徒会長と呼ばれた男性と俺だけだ。

「さて。君が白鳥黒衛だな?」

「そうですが…」

「私は高等部生徒会長の篳篥(ひちりき)(かなで)だ。よろしく」

手を差し出してきた。

「よろしく…お願いします」

握り返し、挨拶をした。

「早速だが、姫川(ひめかわ)。書類持ってこい」

「分かりました」

姫川と呼ばれた女性が初等部と同様に奥の部屋へと消えていった。

「先ほどの彼女は姫川(ひめかわ)鼓美(つづみ)。高等部生徒副会長だ」

「…生徒会には何人いるんですか?」

「生徒会長の私。生徒副会長の姫川。書記の荒谷(あらや)(ひびき)。会計の出雲(いずも)の5人だな」

「一人だけ名前で呼んでましたね」

「響か?彼は私の弟だからな」

「きょ、兄弟揃って生徒会ですか…!」

「珍しいか?」

(どっちも優秀ってことだよな…。うちの兄妹とは真反対だな)

「生徒会長。持ってきました」

「ああ。ありがとう。白鳥は初等部で妹の転入手続きをしてきたらしいな」

「え、ええ。そうです」

「なら、話が早い。やることは全く一緒だ」

ということで、書類に

『白鳥黒衛 16歳 男 県立憲律高等学校出身』

と書き、学校側が用意したスマホに情報を読み込み…。そこから先は割愛だ。

「これで白鳥。君の転入は完了した。君の転入を生徒会長として歓迎しよう」

「ありがとうございます」

「ところで白鳥。なぜ君が転入出来たか、分かるか?」

「さあ…?空きがあったからじゃないんですか?」

奏が頭を振った。

「違う。白鳥。君はこの学園が特殊なものだと知らないのか?」

「能力が特出している人を優先的に入れる…でしたっけ」

「そうだ。なら、君には能力がある。ということになるな。君自身は分かっているか?」

「いや…。自分に特別、すごい能力があるとは思っていませんから」

「ほう。そうか。なら…」

言い終わる前に奏は俺に向かって回し蹴りを繰り出してきた。

「っぶね!」

()けられるじゃないか」

(なんだ…?今の感覚…。既視感(デジャヴ)?)

「教えてやる。君の能力は、『見た夢を正夢にすることが出来る』だ。私の蹴りを避けることが出来たのは夢で見たからだろう」

「な、なんで俺でも知らないことを知っているんですか…?」

「それは私の能力が『見た相手の特出したものを見抜く』というものだからだ」

「能力って…。そういう『能力』なんですか?」

「勿論、運動ができるなどといった能力を持っている人間の方が、この学園は多いが、私達のような俗に言う『異能力』だとか『超能力』だとかを持っている人間もいるんだ。君が配属される、Bクラスにはそういった人が多い」

「じゃあ、妹達も何かあるんですか?」

「いや、彼女らには何も無いだろう。運動が出来る、勉強がかなり出来る。そういうのだと思う。詳しいことは知らないがな」

確かに、蒼惟は運動神経抜群だし、紅音は勉強がかなり出来る。俺には何も無いものかと思っていた。

「まあ、今は転入手続きのために来てもらっただけだから、あまり長くは話さないようにしよう。何かあればこのスマホで私を呼び出してくれればいい」

「は、はあ。では、俺はこれで失礼します」

「外にBクラスの担任がいるはずだ。その人について行け」

「ありがとうございます」

生徒会室を出ると、女性が立っていた。先ほどの霰野さんとは違った雰囲気のできる女感がある。

「高等部1-B担任の指宿(いぶすき)夕夏(ゆうか)だ」

「あなたが担任ですか。担当教科は…」

「化学だ」

「そうですか…」

即答だったな…。

「じゃあついて来い。全教室、1号館にある。まあ、ものの数分で着くさ」

そう言って指宿先生は廊下を歩き出した。

「特別教室も1号館なんですか?」

「いや。特別教室は3,4号館だ。音楽室、美術室などの芸術系のものは3。科学室などの通常授業で使うようなものは4にある。…あそこが1号館だ」

指宿先生が指さした方を見ると、

「こりゃまたでかい建物だなー」

「そうだな。普通の高校よりは大きいだろう」


俺達は2号館を出、1号館へと入っていった。

「1年の学級は10クラス全て1階にある。それ以上の階には2,3年の学級がある」

Jクラスの横を通る時に中を見ると、不良のような輩が沢山いた。

「あのー、先生。この学校のクラス分けって…」

「Jを見てしまったか。思っている通りだろう。Jがゴミの掃き溜め。Aは優秀。そういうカーストになっている」

「それ、変動することってあるんですか?」

「何か特出したものを持ち、(かつ)成績優秀なら、個人で上がることが出来る」

「クラスで上がることは…」

「ほとんど無理だが、一応そういったものはある。スマホを見てみろ」

Bクラスの前で止まり、先程渡されたスマホを見た。

「学生証を出してみろ」

学生証…。ホーム画面の左上にあった。

「そこの中央少し下に数字が書いてあるだろう」

150000ynm。なんだこれ?

「それはエノム。学園内通貨だな。高等部から入学した人には100000ynmが最初から入金されている。お前は転入生だからプラス50000だ。1ynmにつき、1円の価値がある」

「すげえ大金…」

「そのエノムは学園内にあるどんなものでも買える。例外はあるがな。ここまで説明すれば分かるだろう。これで分からないのならば、C…いや、Dに落ちてもらう」

「理解しましたよ…」

「ほう?説明したまえ」

「大金積み上げて買えばいいんですよね?クラスを」

「まあ、そうだな。さっきのは冗談だが、説明出来なかったらどうしようかと思っていた」

「やべぇ。笑えねぇ」

「ハハハ。そうか。まあ、いい」

そう言いながら先生はBクラスへと入っていった。

「ついて来い」

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