表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ダンジョン経営物

何故か女の子と一緒にダンジョン経営する事になった

作者: 名嵐

前から考えてたネタを1年近くかけて書いてみた

駄文のような気はするけど気にしないので、感想やら文句に訂正要求など有ればよろしくお願いします


「あー、皆さん、やっと全員が揃ったようですね」


 その声に目を聞こえてきた方に向ける。

 ん、何か可笑しくないか。俺は今まで部屋で動画や小説をいつものように見ていたはずなのに。

 どうして、だだっ広い真っ白な空間でよく分からない赤や青などの色とりどりの火の玉に囲まれて椅子に座っているんだか。

 そして、聞こえてきた声の主は俺の様子に気が付いていないのか話を進めている。


「えー、皆さんは私の管理する世界でダンジョンマスターとして生きる権利を手にしました」


 わー、パチパチと一人で虚しく話す声の主は美醜の考え方が違わない限り十人いたら十人全員が美人だと答える銀髪の似合う美貌と男を魅了する身体つきをしている。

 だが、俺はそんな事はどうでも良かった。今聞こえた生きる権利という言葉に今までに拍車をかけて今の状況が良く分からなくなってしまう。

 ただ、そんな俺の周りの火の玉の中にはその言葉を聞いてから妙に左右に揺れているモノや上下に弾んでいるように動いているモノがいた。

 うん、なんか余計に分からなくなったぞ。もしかして、俺も火の玉になっているのか?


「喜んで頂いてる方が多くて助かります。では、話を続けますね」


 美人さん――創生と破滅の女神メルキュルリスによると管理していた世界のシヴィラガリアが停滞期から終末期に入ってしまい、管理外世界からの脅威が迫りくる状況になってしまったとの事。

 管理外からの脅威による世界の破滅は全神界でも認められていない事、破滅を司る女神とはいえど自分の管理している世界の中で発生する危機ではないので早急に対処しなければいけない事、元々その世界にもダンジョンは有ったが、ダンジョンマスターが誕生する事が少なくて脅威に立ち向かえるような強者が育つ環境になる前に攻略、消滅させられてしまう事から変わりにダンジョンに理解の有る俺を含めた火の玉たちをダンジョンマスターとして派遣する事で脅威に対抗できる存在を生み出そうと考えたらしい。

 おいおい、ただ単に殺されるだけの為に転生(?)させられるのかよ……。


「ただ、それでは申し訳ないので成果を上げた方にはそれ相応の見返りを用意いたしますし、向こうでも無事に生活できるように特典を付けさせて頂きます」


 貰える見返りは脅威が去った後の転生の条件を決めれる事。

 正直言って魅力を感じるかって言われると個人的には微妙と言いたいけど、今までみたいな人生を歩むよりもマシな事になるのは良いかなと思ってしまう。

 勿論、ただでさえ小説みたいな状況にプラスしてそれが有るという事でメチャクチャ喜んでいる火の玉――たぶん、何年か前の俺みたいな考えの奴が荒ぶっているのが見える。

 次に特典としてダンジョンコアから個々の望んだナビゲーターが創られる事、ダンジョン管理ツールにダンジョン管理用兼通貨――DP(ダンジョンポイント)の配布、管理ツールを使用した元の世界の物の取り寄せ、指定属性の高位モンスター一体を無料配布、コアルームとは別の休憩室が用意されている事、三ヶ月の準備期間などが有る。

 まさに至れり尽くせり。何でも今回の事は本当に予想外過ぎてメルキュルリス以外の神々も協力してくれる事になっていて出来たことらしい。

 ははは、よく有る日本食が恋しいとか○○が欲しいとか○○作らなきゃとかが無い分マシなのかな……。


「次に注意事項ですが、皆さんが何らかの原因で死んでしまった場合はダンジョンの消滅してしまいます。勿論、その時点で成果を上げていない場合は見返りも無しです」


 ここで気を付けないといけないのが、ダンジョンコアが壊れた場合は今までの成果のリセット、ダンジョンの消滅が有り、その時にダンジョンマスターが生きていた場合はダンジョン規模に合わせた期間と次のダンジョンコアが配布されるまでダンジョンマスターは行動できないらしい。勿論、ダンジョンが消滅した時点でDPもリセットされてしまうので行動できるようになってもまたゼロからスタートしないといけなくなる訳だ。

 まぁ、それは仕方ない事だろうなと思ってしまう。ただ、行動できない時にいる場所はどこなのかが気になるな……。

 ここに強制的に転移されるなら良いけど、ダンジョンの在った場所に居続けなければいけないとかコアを壊したモノから逃げないといけないだったら厄介だ。一応、後でメルキュルリスに確認しておこう。


「ここまでは大丈夫ですかね?」


 そう言って全員を見渡しているメルキュルリスを見ながらも俺は考える事に必死になってしまう。

 そして、ここまで聞くと気になってくるのは成果をどう判断するかだが、メルキュルリスによると脅威を防げたかどうかは勿論の事、ダンジョンマスターの行動に合わせて評価を数値化していって分かり易くするらしい。ただ、現状でどういう風に数値化するかとかは教えてくれないらしい。

 まぁ、行動によっては減点も有るらしいので仕方ないと思うし、そういう事も含めて注意しなければいけないのだが、そんな事を考えていなさそうなのが何人かいるだろう?


「では、これからダンジョンの設定に入ります。皆さんにツールの一つでも有るタブレットを配りますので各自入力してください」


 そう言ってメルキュルリスは右手を俺たちに向かって横に振ると目の前に一瞬でタブレットが現れ、落としてはまずいと慌ててそれを手に取る。


「入力を完了する場合は一番下の完了ボタンを押してください。押すと皆さんは直ぐにご自分のダンジョンのコアルームに転移して設定も変更できないようになるのでくれぐれも設定ミスが無いようにお願いします」


 コアルームに着いたら、部屋の中心に有るダンジョンコアに触る事でパートナーと残りの管理ツールやDPが手に入るようになっているらしい。また、手に入った段階で自動的に管理ツールが起動するのでそこからは各自好きなようにダンジョンを生成していってくれればいいと言うメルキュルリス。

 周りは一心不乱に手元のタブレットを操作する火の玉というあり得ない光景が続く中で聞きたい事が有る俺は手元のタブレットに入力はしないで辺りの様子を窺った。

 どれくらい経ったのか、まず一つの火の玉が光を纏ってその場から消えるのが見えた。ちょうど俺のいる位置からは離れた場所にいた火の玉で偶然視界に入っていたから気が付いただけだが。

 そうしている内にまた一つ、また一つと徐々に消えていく火の玉たちを見送りながら、何かを祈るように両手を前で組んで消えていく火の玉に視線を向けて見送ってるようなメルキュルリスを見ると今話しかけるべきか悩んでしまう。

 そして、ついに残ったのは俺と何やら挙動不審に震え続ける火の玉のみとなった。

 ちょうど良さそうだと思って俺がメルキュルリスに話しかけようとするとどうやら震え続ける火の玉の方が先に話しかけたのかメルキュルリスがそっちに向いて何かしているようだった。

 どうやら今までと違って個別に話す場合は他には聞こえない様になっているようで何を話しているのか全く分からない。

 仕方ないのでもう少し待ってみるかと思っているとメルキュルリスは手を頬に当てて何やら困ったような仕草を見せる。そして、俺が残っている事に気が付いたのか一瞬だけ目を見開いた後に何か思い浮かんだのか一回手を叩いて火の玉に再度話し出す。


「――では、そういう事で」


 何か話していたメルキュルリスは火の玉との話を終えると俺と向い合い、何が話し合って決まったのかを話始めた。


「大変申し訳ありません。実はもう一人の方について貴方を含めて話したい事が有りまして、このままではお二人が話しにくいので少し変えさせていただきます」


 そう言ってメルキュルリスが手を振った事で俺は一瞬だけ違和感を感じたが、メルキュルリスの傍を漂っていた火の玉が消えていてその場に見知らぬ人が座り込んでいるのを見て、何が起きたのかを理解した。

 こっちを見ていた元火の玉の人は一瞬驚いたような表情を見せた後、メルキュルリスとの距離を縮めたように感じた。

 うん、髪型はショートで眼鏡を掛けてちょっとダボついた感じの服装を着てるけど、その見た目からしてたぶん年下の、雰囲気的にはメルキュルリスとは違った可愛い女の子だな。


「それで……、えっと……」


 どうやらメルキュルリスは何と呼べばいいのかを悩んでいる様子だったので、チラチラと俺を見てくる女の子を無視して名乗る。そして、それに合わせるように女の子も名前を教えてくれた。


「あ、あの、私は天野茉莉奈(あまのまりな)です。よ、よろしくおい願いします」


 それを聞いて改めて俺は女の子――天野さんを見てみるが、恥ずかしそうに顔を軽く赤く染めながら俯く姿は可愛い。たぶん、こういう仕草で周りの男共を魅了していただろう。


伊須田(いすだ)九郎(くろう)、さん。えっと、伊須田さんは大丈夫そうだと思っていたんですが何故ここに?」


 俺の名前を思い出すように呟くメルキュルリスに何が大丈夫なのかを聞きたくなるところだったが、恐らくここに残っている事が気になったんだろう。

 取りあえず、メルキュルリスの傍で不思議そうな顔をしている天野さんは無視して聞きたい事を素直に聞いてみるとメルキュルリスは納得して頷いき、何が気になったのか聞き返してきたので思っていた事を話す。

 どうやら答えれない事は無かったのか聞いた事を素直に教えてくれたメルキュルリスによるとダンジョンコアを破壊されて次のコアが配布されるまでは一時的に今いる空間みたいなところに強制的に転移される事、ダンジョンの作られる場所はタブレットに入力した希望を元に選ばれる事などが分かった。


「これぐらいでしょうか……。では、こちらの話も聞いていただいても?」


 二人の様子からそんなような気がしていた俺がその言葉に頷くとメルキュルリスと天野さんは二人揃って顔を見合わせた後、嬉しそうな顔をして話し始める。

 それによるとなんでも天野さんはダンジョンとかの出てくるゲームなどをやった事が無く、その上で幾ら理由が有っても誰かを傷つける事を進んでやりたくないらしい。ただ、それでもメルキュルリスの話を聞いて、どうにかお願いを聞いてあげたいと思ったらしい。


「本来ならコアから創られるパートナーからサポートを受ける事でダンジョン自体はどうにかなると思うんですが……」


 そりゃ、そうだよな。普通なら態々サポートしてくれるパートナーがいるから余程の事が無い限りは問題ないと思うもんな。……今回はその余程の事態な訳だが。

 メルキュルリスも最初はそう思っていたようだが、天野さんと話している内に不安に思う事が出てきたようで何点か気になった事を天野さんに聞いた所、本人から無理と言われてしまったと……。

 その言葉に天野さんを見てみると申し訳なさそうに頭を下げてから何かを拝むような視線を向けられてしまう。

 なら、天野さん以外の人を呼んで変わって貰えばとメルキュルリス言ってみるも、現状ではもう他の人を呼ぶことができない事や無償でこれ以上は特典を付ける事が出来ないと言われてしまった。


「ここまで聞いてしまったので、このまま転移するのは忍びなく……」


 ふむ、話の流れからしては俺にも何らかの協力をして欲しいと……。

 ここで気になるのはどういう協力の仕方なのかと協力した時のメリットとデメリットだよな。正直言って協力しましたが、メリットは有りませんがデメリットが有りますってなっても困るし。

 それにさっきから変わらず俺を見ている天野さんもどう思っている事やら。


「その、私からの提案なんですが、お二人でダンジョンを創って貰えないかと」


 俺が悩みながらも視界の淵で天野さんを見ながら考えているとメルキュルリスが提案をしてくる。どうやら、事前に天野さんには話していたようで天野さん自体は反論が無いのか様子は変わらない。

 取りあえず、話をまとめると天野さんと二人で一つのダンジョンコアを使ってダンジョンを創る事、ダンジョンコアが一つの為にパートナーは一人しか創られない事、管理ツールとDPや指定属性の高位モンスター、休憩部屋は個々に配布される事、ダンジョンの出来る場所は同じ場所に出来て外からの入り口が二つ出来る事、お互いのダンジョンで手に入ったDPに関して同意の上で有れば譲渡出来る事などが有るそうだ。

 そこまで聞いて悩んでいると天野さんが声を掛けてきたのでそっちに顔を向ける。


「そ、その、私はその条件で大丈夫です!!」


 えっ、マジで? 正直、異性同士だからどうなんだろうと思ってたんだけど……。

 どうやら驚き顔から悩んでいた理由を悟られたらしく、メルキュルリスにその辺りは条件をクリアしない限りはもう一人の休憩室に入れないようにすると言われてしまった。

 ちょっと残念に思ってしまったが、天野さんはその事を考えていなかったのか顔を真っ赤に染めて俯いてしまった。うん、可愛いね。

 あー、でもそうなってくると断る理由が無くなってくるなぁ。取りあえず、天野さんには落ち着いて貰っていいかな、どこまでがセーフでアウトかを聞きたいし。


「えっと、どこまでとは?」


 うん、その思い当たる事が無くて軽く首を傾げる姿は可愛いじゃなくて……。

 簡単に言うと召喚したモンスターやダンジョンに入ってくる人やモンスターをどこまで傷つけて平気かって事。それ以外にも天野さんのダンジョンだけじゃなくて、俺が傷つける事も大丈夫かって事。

 俺の言葉に今までの様子が嘘のように泣きそうな顔をしながらも必死に考えて答えようとする天野さん。


「あっ、うっ」


 あー、何となくその反応で理解できたわ。となると普通のダンジョンは無理なんだけど……。

 そう思ってメルキュルリスを見てみるも彼女も難しそうな顔をして悩んでいるのが分かる。

 それにね、ダンジョンが有るような世界だから定番でいえば身分制度で王侯貴族の横暴さや平民や奴隷制度の問題も有るだろうし、その辺りも含めて取りあえず頭の片隅で考えてほしいかな。

 で、メルキュルリスに聞きたいんだけど、特典が付けれないってのは何かを代償に支払えば増やしてもらえるって事でいいのか。


「そうですね。何かしらの代償が有るので有れば増やす事もできますが……」


 じゃあ、天野さんの方を考えるなら何かを代償にして増やせば大丈夫そうかな?

 んー、いっその事、ダンジョンにリスポーン機能みたいなのを付けるとかか……。


「「リスポーン……?」」


 そっ、死ぬか死にそうになると決めておいた場所に転送されようなの。

 まぁ、モンスターに関しては一部の個体がってので良いかもしれないけどねと続けて言った俺の言葉に二人は理解できたようで嬉しそうに笑う。ただ、直ぐにメルキュルリスは顔を顰めた。


「その、悪くは無いと思うんですが実現させるは難しいと思います……」


 どうやらメルキュルリスの考えによるとダンジョン全体にそんな機能を付けるのは無理らしい。ただ、条件を付けた上でならそういったアイテムを創る事は可能らしい。

 ただし、条件としてはそのダンジョンしか効果が無い事、代償としてDP若しくはそれに代わる物を支払う事でその機能を利用できる事などがあるとの事。


「そして、そのアイテムを創るにあたって常にDPが消耗される事ですね。そして、それが代償になります」


 つまりは召喚とかをしてなくてもDPが減るって事か……。

 んー、俺と天野さんのダンジョンは一つのダンジョンコアで二つのダンジョンが創られる。なら、最初から俺のダンジョンで手に入るDPの一部を天野さんに譲るって風にできないかな?


「よろしいので?」


 期待するように見てくる天野さんの強い視線に一歩引きたく気持ちをなんとか押し殺して頷く事で了承する。そして、それを見た天野さんだけではなく、メルキュルリスまでもが嬉しいのか笑顔を見せた。


「では、そのようにさせていただきます」


 ではと続けたメルキュルリスに従って俺と天野さんはタブレットを近づける。そして、メルキュルリスの手に光の玉が現れて、二つに分かれたそれが互いのタブレットに吸い込まれるように消えた。

 それをしっかりと見届けたメルキュルリスは一つ頷いて話始める。


「そろそろ、お二人のダンジョンについて入力をしていただきたいと思います。画面を見ていただければわかると思いますが、希望の場所と属性を最大で二つ選んでいただくだけです」


 なるほど、ならまずは属性から決めようか。

 天野さんにもそう提案して思ったように選んでもらう。ただ、選んだ属性に関しては教えてもらってお互いが被らないようにしないと。


「悩む所ですが、あの、光と風で……」


 光と風か……。うーん、なら俺は一つは闇にするとしてもう一つをどうしようかな……。

 水も捨てがたいけど土も良さげなんだよな。正直、その二つでも良かったけど、天野さんが光を選ぶなら一緒にダンジョン創る俺が闇を選ばないのは勿体ないしな。

 ここは昔ながらのアレで決めてみるか、えーと、て、ん、の、か、み、さ、ま、の、い、う、と、お、りっと……。

 なるほど、もう一つが水ってのが神様のいう事なのね。まぁ、元々二つの内のどちらかってことだったし、問題ないだろう。


「つ、次に場所ですか……?」


 あー、はいはい、そんな心配そうな目で見なくても大丈夫だよ、天野さん。

 チラっとメルキュルリスを見ながら何か選ぶ基準になる物が無いかと目で訴えてみる。


「場所に関してですが、適当な候補地の説明を見ていただければある程度は分かると思います。あ、あと、お二人は全く同じに入力してください」


 そんな言葉を聞いて俺は試しに候補地を確認してみる。方角、人里規模、地形の三項目を設定する事が出来るようで、方角は東、西、南、北から、人里規模は村、街、都市、大都市から、地形は草原地帯、森林地帯、山岳地帯、都市内部から選ぶことが出来た。

 良くありがちな事で考えれば人が多い所ほどDPが多く手に入るが最初から危険が多く、人がいない所ほどDPが手に入りにくいが最初は危険が少ないだろう。

 天野さんはどれが良いのか分からないからか俺とメルキュルリスをチラチラと見ているし、考えたことが間違っていないか確認してみるか。


「そうですね。それで有っていますし、方角は他の条件から複数の候補地が出てきた場合に重要になってきます」


 なんでも世界各地を対象にしている為、候補地が多いと百を超える事が有るので最初に世界規模で見た時の位置を方角で絞り、その他の条件に当てはまる所をピックアップして最後にその中で選んだ方角の端にある場所になるらしい。

 ふーんとしか思えないが、それ以外にも方角によっては条件が選べない場合が有るらしいのでたかが方角と思わない方がいいと言われてしまう。


「あのー、それでどうします?」


 そう言っていつの間にそばに来ていたのか上目遣いで覗き込んでくる天野さんにドキっとしながらも俺は特に方角に拘りが無く、良かったらそこは天野さんの好きなのでいいと伝える。

そして、悩みだした天野さんを視界に収めながらも他の条件について考え始める事にした。

 正直、俺一人なら好きなように選んでも何とかなるだろうけど、天野さんの話を聞いたて問題なさそうなダンジョンを創るとなると論外となるのが人里規模の大都市と地形の都市内部だよな。

 そうなるとどっちも残り三つから選ぶことになるけど、ダンジョンが作られる時の形って洞窟とか塔とかでいうとどういうのになるんだ。


「基本的には洞窟になりますが、ダンジョンの上に何かしらの建物を建ててそこもダンジョン化する事はできます」


 なるほどねぇ。じゃあ、草原地帯と都市も選ぶのを止めておいた方がよさそうだな。

 で、残るのは人里規模が村と街、地形が森林地帯と山岳地帯の二つずつな訳だが、最初から天野さんの要望っていうか理想を叶えきれないのは予想ができるし、いろいろと時間が必要になるだろうから一番低い村が良いかな。ただ、もう一つの地形が悩むんだよな。


「よし、方角は西にします!」


 あぁ、決まったのね。なら、こっちもそろそろ決めないといけないのか……。

 森林地帯も山岳地帯も外敵から守りやすい場所になるのは分かるんだけど……、たぶん、副産物も同じぐらいの価値だろうしなぁ。いっそ、これも天野さんに決めてもらうようにするか……。


「えっ? 森林と山岳でどっちが良いか……ですか?」


 腕を組んで悩み始めた天野さんを見ながらもメルキュルリスにどっちの方が良いのかを聞いてみるがにこやかに笑うだけで教えてくれる気配が欠片もしない。まぁ、ここで教えてくれるなら最初から場所はメルキュルリスの方で決めてくれている筈だしな。

 しかし、天野さんの考えを元にしたダンジョンは訓練用とか試練用と言っても良さそうなダンジョンになるだろうから個人的には山岳地帯でそれっぽい雰囲気を出すようにしたいけど、天野さんが女の子な事を考えると森林地帯の方が喜んでくれそうな気がする。

 うーむ、決めてもらうよう頼んだのにやっぱり俺が決めるっていうと感じ悪そうだからしたくないけど……、どうしたものやら。

 俺がそうやって悩んでいると天野さんは決めたようで一度深く頷いた後に力強い目線で俺を見て話しかけてきた。


「あ、あの、山岳地帯でお願いします!!」


 えっ、それでいいのか。いや、個人的には有りがたいんだけど。

 うん、なら山岳地帯にしよう。人場所規模は村にしてくれるかな、天野さん。

 俺がそういうと嬉しそうにしながらもタブレットを操作して確認のために見せてくれる。

 後はダンジョンに行ってからだけど、パートナーは天野さんに渡せば大体の決める事は終わるよな。


「それで大丈夫そうですね」


 どうやら天野さんはメルキュルリスにも見せたらしく、喜びながら二人して話をしている。


「では、そろそろ……」


 そんなメルキュルリスの言葉に頷く天野さん。二人でしんみりしている所を邪魔するのは悪いので設定の再確認してもうちょっと声を掛けるのは止めておこう。

 えっと、属性良し、方角良し、人里規模良し、地形良しと……。


「伊須田さん、後はよろしくお願いします」


 どうやら、話も終わったようで俺に話しかけてくるメルキュルリスとその傍に立っている天野さんの二人に頷き返して、天野さんと共に完了ボタンを押した。




 一瞬、暗闇に包まれたかと思うと直ぐに明るさを取り戻し、辺りはさっきまでとは打って変わって薄暗く正方形の部屋にいる事が分かる。

 部屋の中央には恐らくダンジョンコアだと思うクリスタルが台座の上で浮かんでいる。

 ちょうど中央から黄色と紫に分かれているそれは今はまだ少しくすんでいて若干みすぼらしいように感じてしまう。


「ここがコアルーム……」


 その声を聞いた事で俺は天野さんの存在を思い出して辺りを見回してみると少し離れた場所で辺りを見ているのを見る事が出来た。そして、天野さんの姿を見つける事が出来て良かったと思う。

 あり得ないだろうが、もしあれだけ二人でダンジョンを創る話をしていたのに別々のダンジョンになっていたら目が当てられなかったからだ。

 取り合えず、前もって考えていた通りに天野さんに声を掛けてコアに触ってもらう事にした。


「えっ、私が良いんですか?」


 戸惑う様子を見せる天野さんにこれからの事も考えるとその方がいいと伝えてみるが、それでも気になるのか俺を見ては少し動いてと悩んでいるのが見て取れる。

 はぁ、こういうのは良く知ってるから俺は良いよ。


「それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらいますが……」


 やっとの事で天野さんがコアに触ると今までの様子が嘘のように徐々に回転を始めたコアに光が集まりだして、くすんでいたコアに輝きが戻ってそこから一つの光の玉が天野さんの傍に現れる。

 徐々に姿を変えて人型を取り出したそれが恐らく天野さんのパートナーになるのだろう。


「初めまして、ダンジョンマスターのお二人様。この度は私を生み出して頂きありがとうございます」


 そう言ってお辞儀をする姿は生まれたてとは思えないほど様になっていてこっちが萎縮してしまう。


「創造神で在らせられるメルキュルリス様からお二人については聞き及んでおります。その為、私を生み出していただいたアマノ様だけではなく、イスダ様のサポートも務めさせていただきますのでよろしくお願いします」


 下げていた頭を上げて天野さんと俺を交互に見ながら言ったその言葉に天野さんは良かったというように笑顔を見せて嬉しそうに俺を見る。


「良かったです。もし、私だけだったらどうしようかと……」


「それでは、お二人にダンジョンマスターとしての最初の仕事をお願いしたいと思います」


 天野さんの嬉しそうな姿を見た後に俺を見ながら話しかけてきた内容に二人して疑問に思いながら話を聞き、それが何をするのかと聞いてみる。


「はい、最初の仕事は私、ダンジョンコアからパートナーとして生み出された者に名前を付ける事です」


 にっこりと笑うその姿に天野さんの様子を見てみるとちょうど良かったと言わんばかりに目を輝かせてこっちを見た。


「伊須田さん!名前を付けてあげてください!!」


 天野さんの言葉に俺は断ろうと言葉を出すもどうやら色々と俺が自分に譲ってくれている事に申し訳なく思っていたようで今回については譲る気は無いらしい。

 はぁ、どうしたものか……。たぶん、何言っても聞かないんだよね。

 そんな風に思いながら、良い案は無いかともう一人を見てみるが何か面白そうに見ているだけで特に何か言うつもりはないらしい。

 しょうがないね。言い聞かせるように呟きながらどういう名前にするかを悩み始める事にした。

 見た目はロマンス・グレーの頭髪に左目だけを覆う鼻眼鏡を着けて、スラっとした身体ながら力強さを感じさせる細マッチョ体系に黒のタキシードと白い手袋、どっからどう見ても執事ですとしか言えない見た目ですか。

 うん、天野さんは何を思ってこんなパートナーを生み出したのか……。

 しかし、名前か……、執事の定番と言えばセバスチャンだけども漫画からとってウォルターやクラハドールとか有るし、敢えての爺やと言うのも捨てがたいけどな……。

 うん、どう考えても色々と拙い気がするし、フォラスってのはどうだろう。


「「フォラスですか?」」


 そう、フォラス。期待してみてるけど元はソロモン七二柱から序列三一番の偉大なる総裁で地獄の二九の軍団を率いる存在。

 かなりの知識を持っていて、望まれれば人を透明にしたり長寿を与えたり、雄弁にもできる。財宝や失くし物を発見する力も持ってるらしいし、知らない事だらけの俺たちをサポートする存在ならちょうど良いかなと思って。まぁ、悪魔って事を考えると申し訳ないけど。

 そういう俺の言葉を聞きながら目を瞑り、呟きながら頷く姿に天野さんは心配そうに見ていたが、直ぐにその表情は喜びのものへと変える。


「喜んでその名前を頂きましょう、イスダ様、アマノ様」


 そう言って嬉しそうに笑って頭を下げたフォラスの姿は全身から喜びが溢れ出しているように感じるほどの雰囲気をしていて、それを見たも同じようにしながら名前を呼んでいる。


「あの、名前で読んでください!」


「は、はぁ、では、マリナ様とお呼びさせて頂きます」


「伊須田さんも名前で呼んでくださいね」


 あぁ、なら俺も名前で良い。勿論、フォラスもだ。

 そう言った俺に嬉しそうな顔を見せる茉莉奈さんを見ながらこれはなかなか恥ずかしい物が有るなと思う。

 そして、いつの間に頭を上げたのか笑顔で俺たちを見ていたフォラスだったが、俺が見ていた事に気が付くと一つ咳をした後に笑顔をそのままにして俺たちに告げた。


「ゴホン、マスター二人による命名を承諾しました。これよりマスターのサポートを開始します」

キャラ紹介

伊須田九郎

 日本ではネットで小説や動画を見るのを日課にして変わらない毎日を惰性のように過ごしてきたが、メルキュルリスに召喚されて異世界の危機を救うために茉莉奈と共にダンジョンマスターになった。

 後に何故か女神メルキュルリスに封印された魔王イスダークロウと呼ばれるようになり、茉莉奈や召喚したヴァンパイア・クィーン、追放された侯爵令嬢たちと賑やかなダンジョン経営の日々を送る事になる。


天野茉莉奈

 メルキュルリスに召喚されて異世界の危機を救うために人を傷つける事を嫌う事から九郎のサポートを受ける事を前提にダンジョンマスターになった。

 後に女神メルキュルリスの使い“天”のマリーナと呼ばれ、魔王イスダークロウの封印を守護していると思われている。


創生と破滅の女神メルキュルリス

 世界を生み出し、生命を見守る女神。

 世界の危機にダンジョンマスターとして主人公たちを呼び寄せ、時より管理ツールからダンジョンマスターとコミュニケーションをとる事を楽しんでいる。


フォラス

 茉莉奈によってダンジョンのコアから生まれたパートナー。

 主に茉莉奈の世話をしながら過ごす姿は風貌も相まって熟練の執事にしか見えない。



現状で続きのプロットは軽くあるけど、そこまで書く気が起きてないので、評価や続編希望、書く気が湧けば続かせるかも

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ