異世界初夜
うう、全然眠れないよ。
月曜日までには家に帰らないと会社が。
携帯も家のテーブルの上に置いてきちゃったし・・・。
無機質な天井を見ながら、床に就く前の話をぐるぐると頭の中で考える。
・・・
「帰れないの?あたし。」
「あんたみたいに、他所の世界からカムニアに流れてくる人は稀にいるんだ。
俺達の世界ではドリフターって呼んでるんだけど。
で、もちろん他所から来るわけだから言葉も通じなければ、金も住むところもないだろ?
そういう人達のために『ドリフター支援センター』ってとこがあって、衣食住の補助してくれるんだが、
大体の人は元いた世界に帰る術がわからずに、そこで居つくって話だよ。
今日はもう遅いから、明日、とりあえずカエデもそこ行ったらいいと思う。」
「うん、分かった。」
「そっちのベッド使えばいいから。明日カエデのいた世界のこと、詳しく教えてよ。
あとさっき店で店員に見せてたカードのことも。」
「うん。泊めてくれたお礼に、それぐらい幾らでも教えるよ。知りたかったらスリーサイズも教えようか?お姉さんの。」
「じゃあ、電気消すから。お休み。」
「・・・うん。おやすみ。」
うう、いっくんスルースキル高すぎる。
あたし渾身のギャグなのに!
・・・
ガラス張りの窓からネオンの光の様なものがチラチラと入ってくる。
ああ、やっぱりあたし、違う世界に来たんだなぁ。
どうなるんだろうなぁ。
・・・ダメダメ。いつでも前向きに行かなきゃ!頑張れプリンセスあたし!
帰る方法だってきっと見つかる!
明日は早く起きて、いっくんに朝ごはん作ってあげよう。せめてものお礼に。