嵐山カエデ25歳
「金っ曜っ日~♪金っ曜っ日~♪」
思わず鼻歌が出てしまう。
魔の月曜日を乗り越え、道中の火曜日をヒイヒイ言いながら進み、中ボスの水曜日を華麗に倒し、ラスボスの木曜日、裏ボスの金曜日を華麗にスルーしたプリンセスあたしがマイスイートホームに帰宅する。
「あー、ヒールしんど。」
むくんだ足を締め付けるヒールを脱ぎ散らかして部屋に転がり込み、ストッキングを脱ぐ。
「・・・くっさ。」
脱いだストッキングを洗濯機に投げ込む前に、匂いを確認したことを後悔した。
麗しの25歳♀の匂いだとは思えない。
だって仕方ないじゃん。頑張ったってことだよあたし、ナイスファイト。
自分でも訳の分からない言い訳を頭の中で言った後、帰り道に寄ったスーパーで買ってきた半額の弁当と缶ビールを取り出し、録画しておいたドラマを再生する。
「んあ~。」
疲れた体にビールが染み渡る。
「いっくん、カッコいいな~。」
大好きな主演俳優のイクト君がヒロインを壁ドンしている。
一回でいいから、あたしもあんな風にされてみたいな。
「・・・さみし。」
今の気持ちが自然と口からこぼれた。
ダメダメ、前向き前向き。きっと王子様があたしのことさらいにやってくるはず!
・・・とかいってるからだめなんだろうなぁ。
「・・・はぁ~。」
ビールの飲み口に口を付けるが出てこない。もう飲み切ってしまった。
もっといっぱい買ってくればよかった。
めんどくさいけどコンビニまで行こうかな。明日と明後日はあたしの味方、エンチャンターの土曜日とヒーラーの日曜日だし。
・・・
「いらっしゃいませ~。」
いつもの大学生っぽい男の子の店員が挨拶してくる。
あの子いつ来てもシフト入ってるみたいだけど、大丈夫なのかな?
まあいいや、知ったこっちゃないや。ビールビール。
・・・後は、柿の種も買っちゃうか。明日休みだから今日ぐらいいいよね。
「いらっしゃいませ。」
レジに買い物かごを出す。
「Vポイントカードはお持ちでしょうか?」
「あ、はい。あります。」
この子いつも聞いてくるなぁ。あたし常連なんだからそろそろ覚えてくれないかなぁ。
なんて、わかってるよ。マニュアルで言わないといけないって決められてるんだもんね。
お姉さんわかってる、わかってるから。などと思いながらVポイントカードを差し出す。
「お客様、ポイントがかなり溜まっているみたいですけど、使いますか?」
「ううん、貯めといてください。」
「かしこまりました。合計586円です。」
ラッキー。ぴったり586円持ってる。
「ちょうどお預かり致します。ありがとうございました~。」
ふふ。あたしにはちょっとした趣味がある。小学生の頃に作ったVポイントカード。
このポイントカードは色んなお店で使えて、貯まったポイントはお金の代わりとして使うことができる。
普通の人はある程度貯まったら、支払いの際に、小銭が出ないように端数を払ったりとかして使っちゃうんだろうけど、
あたしはこのVポイントカードに、作ったその日から今の今までポイントを貯め続けている。
ふふふ、レシートをもらっても、ポイントの部分はいつも見ない。
でもたまに、●●ポイント貯まってますけどって言ってくる店員さんもいるから、ざっくりは知ってるんだけど。
スゥーと開いた自動ドアを颯爽と抜けて、プリンセスあたしが自城を目指して行進する。