魔王として
わたしは、彼が来ているの知ったのは、それから数日が経ってからだった。
アルという少年を私の配下の者が見つけたのだ。
少年は両手を切断され、足に釘を何本も打たれ。背中には彼の左手と右足が括り付けられていた・・・そうだ。
何とか、何とか命を繋ぎとめていた。
たまたま、私の配下の者が偵察で勇者の城の近くまで足を延ばしていたから、運よくアルを見つけた。
私の配下の者は、そのような者を見過ごすことが出来ない。
助けることで、自分も捕まるのも覚悟の上だったのだろうが・・・・今回はそんな事は起きなかった。
そう、それは私をおびき寄せる。餌を担いでいたからだ。
それは、間違いなく彼の左手と右足だ・・・私が間違えるわけがない。
アルは喋るために舌を抜かれていない。しかし、片耳は潰されれ、片目はえぐられていた。
私はアルに優しく囁く。
「アルとやら、先ずは彼の事を伝えてくれて礼を言う。ありがとう。そして、巻き込んでしまって、すまない。しかし、私は今の彼と勇者の状況を君に問わなければならない。辛いだろうが答えてほしい。」
アルは静かに頷くとゆっくり喋り出す。
「主の状態は・・・はっきり言うと私にもわかりません。左手と右足を切られた後、会ってはいないのです。・・・ですが、勇者が貴方の名前を執拗に主に問うていたのですが、主は一向に喋りませんでした。だから、私が囮として解放されたのだと思います。」
そう、彼はまだ死んではいないかもしれない。でも死ぬほどの目に合っているのは確かだ。
アルは私を涙目で見つめる。
「魔王様。・・・魔王様。主を・・・主を助けてください。」
わたしは、そんなアルに告げなくてはいけない。魔王として
「すまない。アル。お前の主は助けてはやれない。これは魔王としての返事だ。」
彼一人の命と魔王軍の運命。これを天秤に掛ける訳にはいかない。
魔王として・・・そう、魔王としての決断
アルは信じれないという表情で私をみる。この返事は想定したなかったのだろう。
「なんで? なんで? 主は貴方の知り合いでしょう? 主は貴方を・・・貴方だけを探しに来たんですよ?」
私はアルに向かって叫ぶ。
「そんな事は・・・そんな事は分かっているわよ。」
私は自分のどうしょうもない感情をケガ人にぶつけてしまっている。情けない。くやしい・・・」
私の目から涙が落ちる。
「魔王なのに・・・魔王だから・・・誰一人助けれれない。彼だけは・・・・・」
私はもう、喋れなくなる。




