勇者の凱旋
僕は、ある遠い世界の勇者の国に来ていた。
その国は山々に囲まれ、王様や勇者の住まう、お城には高い山が聳え立ち、絢爛豪華な国だと聞く。
しかし、此処にたどり着くまでに、近隣の村々を見てきたのだが、絢爛豪華とは裏腹に人々は痩せ細り、家畜も人々もあばら骨が浮き出た状態だ。
僕はガイドに雇った青年に話しかける。
「アル。もうすぐ、勇者のいる国だよね。どうして、みんな、痩せ細ってるの?」
ガイドの青年はアルという名で、僕はアルの村の近くで、この世界に転移した。
アルの村は村人が100人もいない小さな村で、他の人里よりも離れているため、自給自足で何とか生活してる。
アルは毎月、塩を買うために他の村まで足を運んでいるので今回、ガイド役を買って出てくれた。
「主人・・・先ずは、勇者じゃなくて勇者様です。近くにいる者に聞かれると不味いことになります。そして、世界は平等じゃないて事ですよ。ただ、それだけです。」
アルは、それから口を噤んでしまった。
勇者の呼び名からして、正されたのに、それから以降は此処では喋れないのだろう。
僕の思い描いている勇者の国とは、どうやら違うようだ。
勇者の住まう町の前には、大きな壁で仕切られ、壁の前には行く当てのない浮浪者たちの小屋が幾つも立ち並ぶ。
町の入り口の門には強面の憲兵が睨みを利かす。
「おい、次 通行許可書を出せ。」
アルは憲兵に通行許可証を見せる。
「ん?お前たちの村は先々週、来たばかりだろう。其れに後ろの変なのは誰だ?」
アルは澄ました顔で答える。
「すいません。買ったばかりの塩を先週、川に落としてしまいまして、あと、後ろの此奴は荷物持ちです。通行料を通常の2倍払えば通して頂けると聞いて・・・・」
アルは憲兵に通常の通行料の5倍の金額を手渡す。
「ちっ、仕方ねぇな。今回だけだ。おい、さっさと行け。おい、次!」
と憲兵はすんなりと道を開ける。
何処の世界も、同じだな・・・と僕は思う。
町に入ると、突然、ラッパが鳴り響き、人々は雄叫びをあげる。
アルも之には、ビックリしたようだ。周りをキョロキョロ見回す。
人々の手には号外の瓦版が握られ、アルは近くにいるオヤジさんから瓦版を譲ってもらう。
**********【号外 勇者様の凱旋】*******************
本日、勇者様が魔王の村を攻略したお祝いに凱旋パレードを行います。
先週、弓使いのベール 魔法使いのアシュレット 剣士のガンズ ヒーラーのリーサを引き連れて魔王の村を攻め落とす。
第一の村では村人が全員、ゾンビ化の力を使い、やられても、やられても、復活し襲ってくる。
しかし、弓使いのベールと剣士のガンズがゾンビ共を足止めし、魔法使いのアシュレットが村ごと焼き払う。大規模火力魔法により、ゾンビ共120匹をチリに返す。
その中には、魔王軍の将軍も兵士も含まれていた。という大健闘 ‼
残念ながら、第二村で強敵に道を阻まられ、汚い手口で、ベール、アシュレット、ガンズ、リーサが魔王の手に掛かってしまう。
第一の村に残っていた勇者様が危険を察知するも、あと一歩及ばず・・・
しかし、しかしながら、第一の村の攻略を祝い。亡くなった4人を弔おうではないか?
みんな、本日は大いに歌い、そして踊れ!
******************************************
そうなのか・・・凱旋パレードね と僕は思う。
勇者様・・・・どんなに立派な人なんだろう、と思いをはせる
「おい、アル パレード。パレードだってさ! 見に行こうよ。」
と、僕は人垣にむかう。
と、アルから腕を掴まれる。
「と、痛い!どうしだんだ? 痛いだろ?」
アルは悲痛な表情で下を向きプルプル震えながら・・・呟く。
「あの村は・・・あの村の人達は皆、いい人達だったんだ・・・ゾンビ化の力なんか誰一人として持ってないかった。」
アルの声は人々の歓声によって掻き消されてしまった・・・
しかも、アルは人達と言った。魔王の村にも人が住んでいるのだろうか?




