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苦手な方はご注意ください。

異世界転移で霊力無双!(仮題)

作者: 直江 志

前に書いたやつの改訂版です。とあるキャラの性格とか設定がやっと定まりやっとかけるようになった作品!!推敲する前にとにかく出してぇんだ!という感覚で投稿しました。楽しくかけたので皆様も楽しんでくれると幸いであります。

おっと、そろそろ本作読みたいですよね。

──ではあと書きで会いましょう

──式は霊気によってもたらされ

──式は理をもとに事象を得る

──式は事象を増大する

──式は肉と魂に干渉する

──式は魂にのみ干渉し得ない

──魂は肉の世界の裏に存在する


以上、六つの定義を基に鬼術を体現する。

            〜山川 剛〜


〜〜〜〜〜〜〜〜

 カイトは暗闇の中全身の力が拔ける様な感覚と浮遊感、そして体内に無理矢理何かが押し込められる様な不快感を全身で感じていた。

 体の中に……いや、魂に何かが干渉してきているのだ、そうカイトは確信した。

 カイトは無詠唱で不完全な結界を鬼の印を結びながら必死に維持する。それでも自らに流れる魂の干渉は抑えきれない。それでもカイトは必死に拒絶した。自らの魂の変容を……これを拒まなければ何処か元に戻れないような恐怖がカイトを支配していた。

 霊気が尽きかけ、カイトの意識が朦朧としてきた時だった。

 暗黒に支配された世界に一筋の光が差し込み世界が一変する。


「ようこそガディードへ。歓迎いたします勇者様、そしてその同胞の皆様──」

「へ??」

ハッキリとしない意識の中、カイトは非現実的な状況に間抜けな声を上げることしかできなかった。

〜〜〜〜〜〜〜〜


 4月……それは学年が一つ持ち上がり、新しいクラスに心を踊らせる季節。新入生の声が階下から聞こえ、等の2年4組の生徒たちも各々の友人同士と談笑していた。

 そんな中で、カイトは傍目では机に突っ伏しており、独り言をまるで誰かと話している様な声量で話していた。クラスメイトは少し気味悪がりながらも、気にしないようにしているふうだった。


「はぁ、眠い、ダルい、寝たい……」

当のカイトは、机に上半身を預けたまま気だるそうに言った。ここ暫く、まともに睡眠を取っていない事が原因である。

 するとカイトの耳元から、若干の寒気と共に可愛らしい少女の声が聞こえた。


『カイト……また寝不足?どーせ式術の研究でしょ?たまにはしっかり寝なさいよ!私でも睡眠は取るわよ!』

「ん?ああ、奈々子か……おはよー」

『お、おはよう……って、話聞いてたぁ?』


 カイトは少女の言葉を聞き流し、寝ぼけ眼のまま顔を上げる。

 するとそこには明らかにカイトの高校の制服ではない、セーラー服を着た中学生くらいの少女がいた。しかも、少女は体が半透明に透けており宙に浮いていたのだ。


──そう、彼女は幽霊なのだ。


 しかし、カイトには驚く様子もなく、寧ろ親しい間柄の様な受け答えをする。奈々子もカイトと話せる事が楽しいのかカイトの周りをグルグルと飛び回りながら笑顔で談笑する。それが原因でクラスメイトから気味悪がられている事にカイトと奈々子は気が付かないが……


 少年……もとい、山川 海斗は生まれつき霊能者(シャーマン)である母の家系に似て視えざる者……“幽霊”や“魂魄”が視えていた。

 その上、霊力が強すぎる為か母に期待され、よく霊能力者組織に連れ回されていたのだ。件の寝不足もその研究のプレゼンづくりの為だったのだ。


 そんなこんなで11年と数ヶ月、カイトは霊力を鍛錬し続けていた為、奈々子程度の幽霊には動じるどころか、仲良く出来ているのである。


 閑話休題、カイトはまるで人と話すように開けっぴろげに奈々子と話していると近くに3人の生徒が詰め寄り、厳つい顔持ちでカイトに絡んでくる。


「おい、カイト。テメェ誰と話してんだよ!いい加減キメェからそのお口チャックしてお家に帰ってくれませんかね?」

「ギャハハ!そんなんじゃ甘いぜぇ。ちょっくら一発殴らないと、この子の妄想友達癖も治らないんじゃ無いか?」

「おっと、それいいねぇ。って……何冷静こいてんだよっ!!」


 どういう訳か、一年の時からこの三人組…… 増田 研、水野 修司、中山 康介たちは執拗にカイトに絡むのだ。カイトはまたか、と小さく呟き、溜息をつきながら焦りや恐怖など微塵も無い表情で彼らを見上げていた。

 その表情が増田には何か小馬鹿にされている様に感じたのだ。

──気に食わない。

増田はそう感じていた。

 一年から同じクラスだったカイト。いつもボソボソ独り言を話して社交的でない、絶好の獲物の……はずだった。


 それは一年の夏の事だった。カイトを初めて暴力で黙らせようとした時だった。いつもの三人組でカイトを呼び出して自分の立場をわからせようとした。

 しかし、それは失敗だった。カイトは、尽く3人の攻撃をヒラリヒラリとまるで次の手が読めている様に避ける。その上、疲弊した増田たちを気遣ってきたのだ!

 その時、増田は酷い怒りと憎悪に襲われた。いつも弱いものを虐げ、強さに酔っていた増田のプライドを土足で踏みにじった。

 その後、増田は知ることになるカイトの家は道場と寺をやっているらしい。

 例を上げればキリがない。成績も増田にはそれなりの自負はあったのだがカイトから引ったくった解答用紙は全て自分より圧倒的に高い。

……その上


「やーやー、皆さんおっはよ~!!」

 一人の女子生徒が教室に飛び込んできた。腰まで届く烏の濡羽色、そんな例えが相応しい艷やかな髪に若干垂れた大きな瞳は優しげで美しい。スッと通った小ぶりな鼻筋に薄い唇が完璧な配列で並んでいた。


 彼女は花咲 舞、この学校で男女問わず人気を誇り、その明るい性格と美貌からこの学校の天使とまで言われていた。

 そんな、舞がカイトに気がつくやいなやカイトの元まで走って来るではないか。

「あれあれ〜〜?何で、増田くんカイトの事絡んでるの?ダメだよそんなの」


 クラスの空気が凍りついた。あの天使と詠われている舞がカイトを庇ったのだ。その上、名前の呼び捨てで、だ。クラス中の男子の凍てつく視線がカイトに突き刺さり、カイトは困った表情で苦笑いをする。


「そ、そんなんじゃねぇよ花咲さん。俺は独り言がうるせぇって注意しただけだ!だろ?山川くん」

「本当?」

「う、うん」

 舞の怪訝しそうな目に若干戸惑いながらもカイトは返事を返し、増田達は悔しそうな面持ちで別の場所へすごすごと逃げて行った。

 身分相応で無い女子、それも増田には到底手の届かない高嶺の花に仲良くしてもらっている。それもカイトに対する嫌悪の一つだった。

 そんな背景があったために増田はカイトを異常なまでに敵視していた。


 ともあれ、増田が居なくなったことでカイトは少し肩の力を抜きホッとした顔になる。

すると、また別の三人がカイトに話しかける。


「あらあら、カイト君おはよう。毎日大変ね」

「山川くん、君のその癖そろそろ治らないのかい?舞も毎度毎度、君を庇う訳にはいかないんだ」

「全くだ。こんなことを言うのも何回目だと言うんだ。去年より酷くなってやがるぜ。」


 唯一カイトに挨拶をしたのが立川 時雨。舞とは幼なじみで親友みたいな関係だ。そして身長が173センチと高く、切れ長の凛とした目と短く切り揃えられた髪は可愛いと言うよりかはカッコいい、そう思えるような女性だ。

 剣道部の期待の新星と言われてるみたいで、面倒見が良くて、姉御気質のせいか女子からよく告白されている。カイトと同じで父親が道場をしているせいか、カイトとは家が離れているが親善試合もよくしていた。結果は五分五分だったが……


 次にカイトにまるで自分が絶対的に正しいのだと言うような臭い発言をしたイケメンが星野 (ひじり)彼もどうやら幼なじみの様な関係にカイトには見えた。

 彼のその端整な顔立ちとカリスマ性が女子を惹きつけるらしくファンクラブ出来る程だった。頭脳明晰、運動神経抜群、その上サッカー部主将で去年はスタメン入りしてすぐにチームを全国大会に導いた男だ。これで靡かない女はいねぇ!そんなの男だ。


 最後に呆れた様な言葉を言ったのは松平 健二、聖とは小学校からの付き合いで親友どうしである。

 とあるサンバの曲を歌った俳優を彷彿とさせる名前だが、見上げるほどに高い身長に、制服の上からでもわかる筋肉は流石としか言えない。

 熱血漢で努力、友情、根性が好きな彼はカイトの様な悪いところを直さない所が気に食わないらしく、聖と自分の忠告を聞いてヘラヘラと言い訳をするカイトを鼻で笑い無視の態勢に入った。

 カイトが腕の立つ武人だと聞いていた健二はカイトを柔道部にスカウトしたのだが断られている過去を持っていた。


 そんなこんなで、聖は舞に向かいカイトを鼻で笑いながら言うのだった。

「舞も人が良すぎるんだ。こんな男と話していないで皆で昨日の事について話し合わないかい?」

『こんなとは何よ!!カイトだって好きでこの体質じゃ無いのよ!』

 聖の言葉に奈々子は怒りを見せるが幽霊のため声はカイトの元にしか届かない。カイトもそろそろ開放してくれないかな、と困った顔をしていた。


「何で、聖くんが私に指図するの?私は今、カイトと話したいんだけど……」


 舞の言葉にざわつく教室。男子たちは歯を食いしばりカイトを睨みつけ、聖と健二は驚きに目を見開いていた。増田たち三人組に至っては昼休み、カイトに一矢報いる作戦を検討している。


「ま、舞は優しいな〜。コイツのためにそこまで言うなんて」


 取り繕う様に聖はそう言い、カイトは射殺すような男子の視線に逃げるように窓の外を見る。あぁ、青空が綺麗だ。カイトはすぐ側でギャースカ話している聖、舞そして二人の周りを一緒にギャーギャー騒いでいる奈々子を傍目に入れながら

(いや、お前視えて無いから……)

と、カイトは内心ツッコミをする。事に留めていた。


「悪いわねカイト君。あの二人悪気は無いのよ」

彼らの心情をよく察ししている時雨がカイトに謝罪をした。

「それは解っているが、そろそろあの二人を回収してくれないかな?」


 時雨はそれもそうね、というと聖と舞の耳を引っ張り上げ引きずるようにして移動する。二人は揃って悲鳴を上げる。カイトはその姿を見て若干微笑んだ後にふと思い出し声を上げた。


「花咲さん、さっきは助かったよ。ありがとう」

すると、舞は痛みが吹き飛んだ様な満面の笑顔で大きく返事をしたのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜

 時は少し流れ、朝のショートホームが始まる。担任の川端 梓先生が出席を取る。カイトの番まで後、数人くらいだった時だ──運命とは悲惨で不条理である

 教室の床と天井に金色の幾何学模様をした紋章が現れる。


眩い光はカイトや生徒たちの視界を覆い尽くす。梓先生はとっさに「皆!早く外に!!」と叫んだ瞬間だった。


 紋章はさらにその光を激しくさせ、教室を金色に塗りつぶす。

「奈々子ッ!!」

 叫び声や驚きの声の中でカイトは近くにいた奈々子の腕を掴み自分の元に引き寄せた。奈々子の小さな叫びが聞こえるがそんな事はカイトにはどうでもよかったのだ。

 カイトは今まで見たことのない神秘を目の当たりに咄嗟にできたことはただ『拒絶』することだけだった。

身にかかる火の粉を振り払うように──全力で自身の持ちうる全ての力を使って拒絶する。

 運命に抗う魂の叫びが木魂した……


『霊術零式第三章 絶!!』


 黒いベールがカイトと奈々子を包見込むのと謎の浮遊感が襲うのは同時だった。そこでカイトの意識は消えてしまう……


 数十秒と続いた黄金の光は少しづつ静かになり、教室には机やイスなどの備品や道具類の一切を除くすべての人が消え失せていた。


 後にこの事件はとある高校の不可解な失踪事件や神隠し事件として世界中で報道される事になるがこれはまた別の話である。


「カイトが……神隠しに……ほんと??」

「はい、事実です。カイト様ほどの術者が神隠しなど何晏が得にくいのですが、いかがいたしますかヒビキ様。」

カイトの神隠しから一日ほどたったとある書斎。メイド服を着た美しく長身の少女が紅茶を運びながら主である響に報告する。響はよいしょと身に余るほど立派な椅子から飛び降りる。18歳に見合わない小柄な体を走らせていうのだった。

「巻き込まれ体質のバカ助けに行く……愛奈も来て……あとユウトも呼んで」

「了解しました。では私はユウト様の手続きと魔術協会に調査申請に行きますので。」

「ん……頼んだ。僕は先に調査に行ってるからユウトのことは頼んだよ」

響の言葉に愛奈は短く返事をすると体を霧散させ響の前から消えていき、響は手早く身支度を整えユウトのもとに足を急がせるのであった。


「全く……カイトはいつも神秘に好かれてしまう……でも、そこも含めていい!!」


響は面倒くささとは裏腹に、自身の好奇心とこれから起こる神秘に対し不思議と笑顔になっていた。


 暗闇から眩い光が広がり、カイトはその光で目を細めさせながらも結界を解くことはなかった。しかし、目の前に広がる光景に思わず気を緩めてしいカイトは結界を解除した。


 無詠唱の鬼術を行使したせいでカイトの持つ霊力はすっからかん。その上、いつもの出力の10分の1すらも出ておらず、自分しか守れなかった。いや、その自分自身も今の状態を見るに守りきれなかったのだろう。

 カイトは霊気を使いすぎた事で悪くなった顔のまま悔しそうに舌打ちをするのだった。


 現在、カイトの周りには呆然とへたり込んだクラスメイトたちがおり、後ろを振り返れば舞も同様に呆然としていた。カイトは舞を確認するとホッと胸を撫で下ろし状況を確認しようとする。


『ちょっと、カイト!これは一体どう言う事なのよ!』

「奈々子か、お前も巻き込まれたか……」

『そんな事よりも状況説明よ!』


 カイトたちは、石レンガで作られた広間にいた。天井はとても高く、壁にはブロンドの美しい女性が赤ん坊を抱いた姿が描かれている壁画。美しい草原や夜空などが部屋中に描かれており荘厳な雰囲気を醸し出している。

 足元を見れば教室にいた時と同じ幾何学模様の紋章が描かれておりカイトたちは現在その真上にいた。周りの状況を見るに少なくともあの教室にいた人と幽霊(奈々子)は全員居るようだった。


 カイトは今の状態と教室のあの現象を考察して奈々子に小さく答えた。

「済まないが解らない。少なくとも鬼術ではない事は確かだそしてどうやら失敗したみたいだ」

 自身の渾身の鬼術でも防ぎきれなかった事実にカイトはうなだれる。

『カイト気にしなくてもいいわ。こうして生きてるし。でもカイトでもわからないとなるとこまったわね』

「ああ、そういってくれると助かる」

カイトが笑顔で返すと奈々子も気分がよくなったのか『エッヘン』と胸をそらし自慢げだ。それを目にしてカイトは気分を落ち着かせていた。

(さて…どうしたものか鬼術でもなければ魔術とも思えない)

自身の全力が通じなかった半面カイトは自身の経験した神秘に胸を躍らされていた。こんな神秘が世界にはまだあったのか!!と。


〜〜

鬼術──それは自らの魂から生成される霊気を使い理論と詠唱を基に発動する術だ。事象に干渉し、魂に干渉できるこの術はカイトの曾祖父が発案し世界中に発信したものであった。魔術とは異なる神秘の形である。

 カイトは物心つく前から霊力が強かった事と、才能があった為に実の母でシャーマンでもある友理に鬼術の指南を受けていたのだ。

 もしも、これが鬼術だったのならばカイトは即座に術の発動を阻止できただろう。しかし、カイトには全くそのような力を感じることができなかったのだ。


 カイトと奈々子が話していると大広間の扉が開かれた。クラスの全員は扉の方へ視線を向ける。そこには西洋風の鎧を着た騎士が4人とその先頭に50代程の翁がいたのだった。


 翁は白いローブを身に纏い長い白ひげを紐でまとめていた。手に持つ杖は身長とだいたい同じで杖には水晶のような物が付いており、彼らの印象を一言で言うなら『ファンタジー映画の登場人物みたい』だった。


 彼らは驚いたような顔をするとすぐさま膝を着き、祈りを捧げる仕草をしだした。そして、翁はこういったのだ。


「ようこそ、ガディードへ。我々は勇者様及び、その同胞の皆様を心から歓迎致しますぞ。私めは、ベルガイア王国の魔法師長の地位に着いておりますイシュタル・モルゼスと申します。以後お見知り置きを。」

「ファァ!!(異世界なんで、なんで?!そんな神秘わっち聞いてない!)」


 聞いたこともない“ガディード”という単語に思わず異世界だと結論づけてしまうあたりカイトは意外とそういう物に詳しいのだろう。今までのクールなイメージとは半面、驚きで一人称がぶっ飛び、その間抜けた叫び声が広間に響き渡った。


〜〜〜〜〜〜〜〜


 カイトたちクラスの全員は今玉座に座する若い青年に現在進行形でひれ伏していた。一瞬目にしたその青年の体は豪華絢爛な部屋の主には似合わずに体は引き締まり堂々と玉座に座るその姿は偉大であり輝きを放っているようにも見えたのだ。そして当の玉座の青年はひれ伏す異界の客人をつまらなさそうに見物する。


「面を上げよ名も知らぬ世界から来た客人よ。余は第16代国王ユリウス・ストラトスである!ようこそ我が王宮へ……」

物色が終わったのであろうか一呼吸を置き、王はさらにつまらなさそうに強く言い放った。

「正直に言おう余は貴様らを見てがっかりしている。まさか皇国が召喚しようとしているものがこの様な愚物とは思いもしなっかたわ!」


 国王のあまりにも辛辣な言葉に一名を除きクラス一同みな口を開けて固まってしまう。異世界転移といえばたいていが厚遇されるのがテンプレだろう。だがそれを許さないのがこの王なのである。そんな王にその一名もとい聖は無謀にも怒りをあらわに王に意見する!

「勝手に俺たちを召喚してながらお前は何を言ってるんだ!愚物だと!!」

「ふむ、自らのおかれてる状況すらわからぬ愚か者までいるか、そこの口を開けて固まっている者共のほうがまだましといえよう。おい!イシュタルお前はしっかりと説明をしたのであろうな?」

「申し訳ない王よ。何分急召喚と謁見のためそこまで手が回らず」

「ならよい貴様は良い仕事をした。此度のミスは目をつぶろう。そして、此度の仕事に対しては後日改め正当な評価を使用ではないか!」

「ありがとうございます」


 顔を真っ赤に怒ったのは聖であったが全く相手にしてもらえないどころか愚か者呼ばわりである。聖は悔しさに顔をしかめ、自分を無視して話し込む王に更に言葉を発しようとする。しかし、そこは聖の世話係が黙っていない。時雨は聖を黙らせるためすぐさま抑え込み首にとんっと手刀を走らせ意識を刈り取る。そして聖を寝かせ時雨は懇願する。

「ユリウス王よ、此度の無礼お許しください。何分何も状況がわかないので思わず声が出てしまったのです」

 ユリウスはふんっと笑うと

「良い、その美し手刀に免じ許そうではないか。ここで許さなければ王としての器もはかれようて。しかし次はないぞ?」

 王の凍てつくよな問いに対し時雨はうなずくことしかできなかったのだった。


 このやり取りでクラスの殆どが自らのいる国が恐ろしいもの、と思っただろうしかし、それは正しくもあり同時に間違っているとも言えたのだ。それがわかるのはユリウスの言葉からであった。

「状況が飲めぬのであらば仕方あるまい。この余が貴様らに高説しようではないか!」

〜〜〜

 王の説明を要約するとこうであった。

この国とは別の国……皇国がカイトたちを召喚する星が見えた王はすぐさまに召喚陣を作り召喚を横取りしたという。

 伝説の勇者が釣れたら上出来。悪くても面白い見世物になると思ったらしい。どうやらカイトたちはそのんなユリウスのとんでもない行動からこの国に来てしまったのである。


「貴様らが、皇国に行っていたら魔王討伐の名目に戦争の道具にされてただろうな。異世界の者は総じて特別な才能を持つらしい。天を裂き海を割る力はさぞあの国も欲しがりそうだ。良かったな余の国で。」


「それではユリウス王よ、では私達をどうなさるおつもりでしょうか。その……戦争の駒として使われるのでしょうか。」

 恐れながら、そして足を震わせながら勇気を振り絞りユリウスに言うのは梓先生だ。先生は震える声で王に問うと王も面白そうに返す。


「そんな不確定要素戦争に入れるわけなかろう。貴様らは覚悟もない童子ばかり。皇国のように隷属させ意思をなくせばマシになるが。余はそんな玩具はいらん。何より余に屈服させ、余を崇め、余のために魂を捧げるものこそ余の戦場にふさわしい勇者というものよ。服従させるまでが楽しいのである。だからこそ貴様らは自由意志を持っているのである。感謝こそすれ、そこの倒れている愚物の様に叱責せれる言われは無い!」


 王はふと一人の目立たない一見地味な男を一瞥し短く笑った後、無表情で処遇を言い渡す。


「貴様らには、身を守る術を身に着けてもらおう。若干1名は必要無さそうだが……まぁ良い。己と向き合う時間も必要だろう。明朝に使いの者を寄越す。己の力と向き合うがいい。己の運命と向き合うが良い!エリス!こ奴らを客宮に連れて行け。以上だ!異論はあるまい。これにて謁見を終了する!」


 王はそう言うと玉座から立ち上がり謁見の間を後にする。そしてエリスと呼ばれた女性は美しい立ち振る舞いでカイトたちにお辞儀をし自己紹介をする。

「私は、第16代国王ユリウス・ストラトスが妻……いわゆる王妃です。皆様の案内をさせていただきます」

 恥ずかしそうにそういった彼女は美しい……例えるなら聖女という言葉が似合うそんな人であった。彼女は申し訳なさそうに言う。

「皆様急な召喚の動揺の中ユリウス様のあのお言葉にとても驚きになられたでしょう。あの人は自らの欲に正直な方ですので、もうああいう人だと思ってください。」


 エリスは反面まともに見えクラス一同空気がが軽くなったのを感じた。中には緊張が解けたせいで腰が砕けてへたり込むもの、思わず涙を流すものなど様々だ。

 そんなクラスの様子を見て更にエリスは続ける。

「ユリウス様は本当に興味のない……嫌悪するものは相手にせず追い出す方です。そんな方が貴方達を迎え入れたのです。どうかお願いです。彼のことを恐れはしても恨まないでください。」

 深々と王妃は礼をする。その姿に、周りの兵は慌てふためき、イシュタルは頭を上げるように説得する。しかし、王妃は一向に面を上げない。ただひたすらに礼をする。


その姿に先生は何かを感じたのだろうかエリスの元により、方に手を載せる。そして羨ましそうに笑顔を浮かべ言うのだった。

「顔を上げてください。エリス……さん?貴方の気持ちは伝わりました。王様のことが本当に好きなんですね。私たちはこの世界に着いて何もわからない身です。どうかよろしくお願いしてもいいですか?」


「……はい!」

 梓の言葉にエリスはこの上ない喜びと恥ずかしさを浮かべて返事を返したのだった。

 エリスは仕切り直しの咳払いを1つすると「それでは皆さん、案内いたしましょう。客宮はここより少し歩きますゆえ、歩けない方は……そうですね。騎士の方々に肩を貸してもらうといいでしょう。」

 そう言うと、エリスは騎士たちを呼びつけふらつく女子生徒や気弱そうな男子生徒の手助けをさせる。


「お嬢ちゃん初めての謁見でよく頑張ったな。俺は漏らしたぜ。」

「あんちゃんも良くやった。さぁ肩に掴まれ。」

等とユリウス王とは反面、とても丁寧な対応を騎士たちは行う。

 倒れ伏す聖を騎士は運ぼうとすると、その手をケンジがつかむ。

「こいつは俺が運ぶから騎士さんは別のやつの介助頼みます。」

 短くそう言うとひょいっと軽々と聖を方に担ぐケンジ。

「ん?」

 何か違和感を感じた健二は首を傾げて聖を担いだままぴょんぴょんとジャンプする。聖はその動きに合わせるようにブランブラン、バタンバタンと健二硬い筋肉に打ち付けられるが健二は気にしていない。

 さらなる違和感を感じる健二に騎士は不思議な人だなと思いながら礼を言い他の人たちの介助に行ったのだった。


 エリスはクラス一同が落ち着くまで待った後に、客宮まで案内をするのであった。


〜〜〜

「では皆様、明朝に使いの者が皆様の才能を見極める道具持ってきます。それまでゆっくりと体を休めてください。」


 客宮に着きエリスと別れた後に、客宮の使用人たちに簡単な施設の説明を受け、そして身の回りの世話は使用人たち……メイドたちがしてくれるらしい。その上、メイド服を着ていることにクラスのボルテージは上がる。

風呂は、毎日入れるらしいし衣服も用意してくれるらしい。食事は朝夕の2回らしいがそれがこの国の普通らしいのだ仕方ないと諦める他なかった。

 しかし、中世ほどの文明とは思えない程の高待遇に胸を撫で下ろすどころか安心がこみ上げてくるのを感じないものはいなかった。


〜〜〜

「あ〜死ぬかと思った!聖め余計な事を言いやがって首が飛ぶかと思ったわ!」

 俺は投げやりにそう言うとベッドに倒れ込む。無駄に柔らかいベッドは俺を優しく包むがどうも気が収まらない。異世界転移に興奮しているのか、それとも前の世界との空気の違いだろうか。俺は頭の中でこの二択を考える。

 後者の方だろう……どことなく神秘的なエネルギーがこの世界には多く充満してるように感じたのだ。前の世界の魔術師どもが言うような魔力と言うやつであろうと俺は予想した。


「おい奈々子、何か変化とかないか?違和感でもなんでもいいからこの世界に来ての変化を教えてくれないか?」

『変化ねぇ……そうねどことなく強くなった気がするわ!それと存在力かしら?それも強くなった気がする……後、空気がエネルギッシュでおいしい!』


 なるほど、霊体からしたら外が来るエネルギーが存在に影響すると言うわけか。ならば……

「式術一式……焔」

 何となくで唱えた小さな火種を生み出す術を発動させてみるがどうやら以前とは変化は無く発動ができた。

「どうやら鬼術の発動自体は問題ないみたいだな。魂自体には大きな損傷も無いから失敗だけど成功かな?」

『あの絶って言う結界のこと?初めて聞いたわよそんな鬼術』

「鬼術じゃないよ……霊術だ」

『だからそれは、何なのよ!』

「それはだな……ん?」

 俺が菜々子に説明しようとした時だ部屋の扉がノックされる音が聞こえた。

「すまん、説明はまた今度な」

 耳元で菜々子が愚痴るが聞こえない聞こえない。俺はそっと扉を開けるとそこには不安そうに顔を歪める舞が立っていた。


「カイトくんちょっといいかな?」

「……良いよ。俺で良ければ」

「ありがと」


 どれくらいだろ5分か?10分か?奈々子は空気を読んで『後は若いお二人でー』何て抜かしてどっかに出ていったし。それから沈黙が続いている。


 きまずい!とにかく気まずい!何か話さなくては!特にこんな美人なクラスメイトは何故俺のような奴にいつも付き纏うのか訳が分からない。とにかく何か喋らなくちゃ!


「あの、花咲さん……落ち着いたかな??」

「うん……ごめんなさい。余りにも急なことで動揺したしね……」

 花咲さんは力なさげにそう言う。確かにあの王のインパクトは絶大だし明らかに俺たちを食い物にしそうな感じはした。花咲さんの動揺は当たり前だろう。こんなのに動揺しないのは俺くらいのものだ。


 俺は、不安げな彼女の頭を撫でる。

「俺は、花咲さんを守れるような人間でもないし、この状況を打開できる力もない。でも、花咲さんの不安くらいなら肩代わり……出来るかもだからその……まぁ落ち着くまでここにいてよ」

 舞はカイトの何気ない言葉に目を見開きそして俯きながら返事をした。そこには確かに安心が浮かんでいたのだ。


〜〜

『カイトー!でどうなの?1発やれたかな?』

「何をやるんだよ」

 暫くしてニヤニヤ笑いながら奈々子が部屋に飛び込んできた。カイトは呆れた顔でツッコミを入れるが奈々子は気にも止めない。そしてカイトの膝の上を見てアララと更に嬉しそうにする。


『カイトやるわね……奈々子ちゃんも嬉しいわ。』

「真顔で言うんじゃないよ。そろそろ足が痺れて来てやばいんだ。どうしたら良い!」

 女慣れしていないカイトに膝枕など身が重いにも程があった。カイトのヘルプ要請に奈々子はガン無視を決める。

『この娘も、かなり疲れたんでしょ他の子たちもみんな寝てるし。でも、あんたは男らしく我慢しなさいよ?』

「まぁ仕方ないな。で?お前が外に行ったんだ。何もなしに帰ってきたわけじゃあ無いだろ。」

カイトは、先程までの優しい顔とは裏腹に鋭い目線で奈々子に言う。

『私をなんだと思ってるの!幽霊歴、20年のベテラン浮遊霊!カイトの式神よ。何もしないわけ無いわ!』

 ない胸を張りながら偉そうに言う姿はたいそういい情報を持っているのだろう。カイトはそんな奈々子に嫌な予感をしながら早く言うよう催促する。


『はいはい、そんなに催促しないって!そうね私の仕入れた耳寄り情報!』

「………(ごくり)」

『服部 忍くんのパンツは白ブリーフ!!いやぁ、服部くん高校生でブリーフとか恥ずかしいね!野獣かな?』


「……式術10式痺!」

とてつもなくどうでも良い情報な上にこのドヤ顔である。思わず、式術もぶっ放したくなるものである。目の前でアババババと痺れる奈々子。


「お前が自信満々な時は大抵ダメだ!知ってたよ。」

『知ってたらこんな仕打ちしないでよ!』

「すまん脊髄反射だ。生理機能だから無理だ。」

 悪びれのないカイトに頭をプスプスと爆発させた奈々子はポカポカと叩く。


 カイトは、そんな騒がしい中奈々子の声も感じられていない少女の頭を優しく撫で一人思うのだった。


──俺はこの世界を楽しもう


 こんな、非現実的な楽しむなどクラスメイトが聞いたら怒られるだろうがカイトはこの神秘を運命に感じた。


 だからこそ、この命が軽い世界。冒険と神秘に溢れる世界と新たな出会いに胸をはせているのだ。


──あゝ、もう限界!花咲さん起きて!!もう足が限界!


 最後が締まらないのもカイトクオリティかもしれない。


プロローグ+第1話(仮)END

いかがでしょうか?

続き気になりますよね?私も気になります。ええ、だから私も必死に書きます書きますとも!反応云々関係なく書きます。(だからといって反応悪いとモチベにかかわるが)

もっとキャラの掘り下げが出来ればいいのですが……オットこの話中で、一番輝いていたのは王様ですね。おーい王様来てくれやーい!


王「む、読んだか。愚物よ」

はいぃ、短編読んだ皆さんに1言欲しくてですねぇ(手スリスリ)

王「ふむ、この愚物……もとい作者はかなりのサボリ症でな多分続きは書くだろうが気長に待つと良かろう!余の活躍もこの後沢山書かれるのだろう!何せ王である余が最後の締めなんだからな!」

まぁその辺は展開と読者の反応ですかねぇ。(シラー

王「何だと!この愚物め!それだから貴様はエタらせるのだ!短編ばかり書かずとも連載すればよかろう!そうだなタイトルは王ユリウス・ストラトスの英雄譚とかな」

はい、面倒い上に空気読めない王はこれまでにして続き書きますのでこれでおさらば!

王「おい何だ!その対応は!余は空気を読めないのではない!読む必要がないのだ!そこを勘違いするでない!おっと読者の皆のもの1万オーバーの作品ご苦労だった。良から褒めてつかわす。しばし待ってくれ作者が死にものぐるいで書くだろうよ。ではまたGWにでも会おうではないか」





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