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カイゴはツライ?  作者: みょうみょう
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ツラいのは介護ではなく、人間が人間ではなくなること

特別養護老人ホーム、通称特養。ユリが今日から勤務するのは、全室個室でユニットタイプの施設である。介護の仕事ははじめてであるユリは、採用が決まるまで、そんなことさえ知らなかった。一週間前、見学に来たとき、施設長に館内を案内してもらい、その静かさに意外なおもいがした。ユリが実習で行った施設はどこも、大きな部屋に利用者がおおぜい集まっていて、がやがやとにぎやかだったからだ。居室に囲まれたリビングには、ポツン、ポツンと数人がいるだけで、なんだか淋しいかんじがした。

今日は初日ということで、午前中はユニット型施設についてのDVD鑑賞と、看護部長の話で終った。正直、なんてラクなんだろう、と思った。保育士として乳幼児施設で働いた経験のあるユリにとって、まるまる半日を説明などで費やすのは、のんびりというか、贅沢な気がした。

昼食後、配属されたユニットに入るが、責任者は不在らしく、他の職員は何の指示も受けていないのか、自己紹介がすむと、自分の仕事に戻ってしまった。手持ち無沙汰で落ち着かず、利用者に話しかけてみたり、職員の動きを観察したりして、ようやく数時間が過ぎた。数週間後、利用者の家族から「ユリさん、動きが全然違うね。もうすっかり慣れたみたい。初日は直立不動やったもんね」と言われた。30半ばも過ぎて指示されなければ何もできない自分も情けないが、新職員がくるのに責任者は不在で、他の職員になんの指示もしていないということにも疑問を持った。だが、実習中も同じようなものだった。一応予定は組んであるのだが、具体的に何かを教わることはなく、“コミュニケーション”が主な仕事であった。

特に何をしたわけでもないのに、初日はぐったりと疲れた。初日ってどこもこんなようなもの、そう自分に言い聞かせた。

          

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