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漆黒のイレイサー

作者: 桂木 景

「釈放だ。」

警察署の牢屋に入れられていた、金髪・碧眼の黒コート姿の青年に向かって年輩の警察官が声を掛けた。

「まだ、眠い…zZ」

「え〜い、牢屋はお前の寝床じゃないわー!!」

勢いよく布団を剥がし、青年を放り投げる。

「ルーさんのケチ。」

「ケチとかそう言う問題じゃなくてだな…。」

どうやらルーはこの青年の扱いに不自由しているようだ。

「遅いと思って来てみれば…、行きますよクロウ。」

ビシッときまったスーツ姿の黒髪・茶眼の中年紳士が声を掛けた。

「ザック遅い〜。ここにお泊まりするって決めたのに…。」

「何を言ってるんですか。これ以上遅かったら裁判所行きですよ。そんな面倒はイヤですからね。」

「弁護するのが弁護士の仕事じゃんか。」

クロウはベットの上にあぐらをかいてブーたれていた。

「仕事の方もまだ、片付いてないじゃないですか。」

「分かった…。行く。ルーさん、ありがと。」

どうやら”仕事”って言うワードに反応したようだ。

「じゃぁ、ここの書類にサインしてくれ。預かってた拳銃2丁だ。」

箱に入っているのはずっしりと重いクロウの愛銃、デザート・イーグル。一つ2kgもするかなり厄介な代物だ。

「今のご時世こんな時代遅れの銃を使うなんてホントに物好きだな。」

クロウは黙ってルーが差し出した書類にサインした。


クロウ・リード


「確かに。気を付けて帰るんだよ。それともう、食い逃げするなよ。」

ルーはわざわざ警察署の前まで送ってくれた。

「分かってるよ。目の前に猫が飛び出して来なかったらちゃんと逃げれてたのに。」

「今回は猫だったんですか…。」

ほとほと呆れたように言うザック。どうやらクロウは食い逃げの常習犯のようだ。

「ザック腹減った〜。事務所戻って飯にしよ〜。」

「さっき泊まるって言い張ってたのに。おかしい人ですね。」

クスクス笑いながらザックは自分の事務所を目指して歩き始めた。


サーストン法律事務所

ザックはここの所長をしているようだ。

「飯、飯〜。」

事務所に入るなり、クロウは叫びながらソファにダイブした。

「もう!クロウさんいい加減にして下さい。仮にもここはアイザック・サーストン様の事務所なんですよ!」

「ネフィア〜どうだっていいじゃんか〜。それよりも飯〜。」

「仮にも法律界最高峰と言われるサーストン事務所の所長と友達だなんて、本当に信じられません!もっと品のある行動をして下さい!」

「飯〜飯〜。」

「ネフィア、今のクロウに何を言っても無駄だよ。それより、何か作ってあげてくれないかな?」

「ですが、所長…。」

「お願い、ね?」

ネフィアはザックに言われて渋々キッチンへと向かった。クロウは相変わらず、うめいている。


数分後、事務所においしそうな臭いが流れてきた。

「飯!しかもこれは、オニオングラタンだな!!」

いち早く反応したのは先ほどまで呻いていたクロウ。

「出来ました。キャ!クロウさんの分もちゃんとありますから、ソファで待っててください!」

ネフィアに抱きつくようにしてグラタンを食べようとしているクロウ。なんと微笑ましい光景だろうか。

「いただきまーす。ウマ、ウマ。」

ネフィアは先にクロウにグラタンを渡し、ザックの方にも持っていった。

「いい加減あの品のない男と縁をお切りになられたらどうですか?」

クロウには聞こえないようにそっと告げた。

「でも彼は優秀な賞金稼ぎだし、それに私の親友でもありますから。」

ザックは苦笑いをしながら答えた。

「ネフィア、美味かったぞ。」

「はいはい、お粗末様でした。」

クロウの食べ終わった食器を片手にキッチンへ戻るネフィア。

「ザック、食べながらでいいから聞いてくれ。例の仕事のターゲットは見つかったのか?」

そう、クロウは表、賞金稼ぎ。裏、殺し屋として働いているのだ。一方、アイザックは表、エリート弁護士。裏、情報屋をしている。

「ナザレのことですね。」

「そうだ。今夜やろうと思う。」

「そうですか…。コレが資料です。気を付けて行ってきてください。」

「心配することないって。こんな小物ちょちょいのちょいと…。」

「なんの話してるんですか?」

ネフィアがキッチンから戻ってきた。

「食い逃げのことですよ。」

「クロウさんって、本当に食い意地張ってるんですねー。」

「そんなことないし…。腹が減っては戦はできぬってな。グラタンご馳走さん。」

ネフィアに捕まる前にクロウはそそくさと事務所をあとにした。


◇◆◇◆


ナザレの屋敷

三日月を背に、若い男が中庭に降り立った。

「侵入者だ!!」

警戒中の兵士達がクロウに向かって銃を発射する。しかし、そこにはクロウの姿はおらず…

「眠ってろ。」

いつの間にか兵士の後ろに立っていたクロウはそのまま手刀で気絶させる。

叫ばれたのが災いした。屋敷中、警報が鳴り響き兵士達が次々とあわられる。クロウをしとめる為に放たれる無数の銃弾。

しかし、彼の脅威となる弾は一発もなく、全て見切られ闇夜を彷徨う。

彼の反撃が始まった。目にもとまらぬ神速の片手撃ち。一挺2kgもある銃を2つ持ち、絶大な反動をモノともせず次々と兵士を仕留めていく。

「何事だ!!」

どうやら本命のナザレが出てきたらしい。スキンヘッドでいかにもギャングらしい格好をしている。

「お…お前は…。”イレイサー”!!」

「死を与えにきたぜ。」

月夜に照らされるクロウは、先ほどまでと全く違う雰囲気を醸し出していた。

「死んだと噂されていたのに…。生きていたのか?!」

「俺が簡単にくたばると思うのか?サキを殺しておいて。復讐にきたぜ。」

碧眼が次第に紅く染まって行く。

「まってくれ…。話せば分かる…。やめてくれ!!」

「時間だ。お休み、ナザレ。」

逃げるナザレに容赦なく放たれる一発の銃弾。正確無比にナザレの後頭部に命中し、死を与えた。


◇◆◇◆


翌朝、クロウはサーストン法律事務所にやってきていた。

「報酬は振り込んでおいたぜ。」

「ご苦労様。あの男はやっぱり例の事に関わってたのかい?」

「ザックの情報通りならな。アイツの顔を見ると、昔の血が騒いで…。」

「”イレイサー”になっちゃたのかい?」

「……。」

「そっか…」

二人の男は窓から、サクラ吹雪をみて哀愁に浸っていた。

皆様の評価が高ければ、通常連載をしたいと思っています。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] なかなか面白いですよ。スパイ系でしょうか?主人公もワケアリで個性的です。是非連載してください。
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