~新たなる出会い(はじまり)~第五話
(しかし、シェルタイト様はセレスタイト様に疎まれる事も憎まれる事も、覚悟されて此処に来られた筈。そのシェルタイト様がここまで動揺されるとは! 一体何が……!?)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
西の浜辺からの帰り道、セレスはそんな事を考えていた。
幼い頃からずっと感じていた。
自分を包み込む、優しく切ない想いがシェルの想いだという事を彼は日毎に確信するようになっていた。
それはシェルが島に来てから、より強く感じられるようになったからだ。
譬え、シェルの言葉や態度がどんなに冷たくても、それはシェルの本心ではないのだと信じたかった。
否、信じていた。
先刻、あからさまにシェルに避けられた事は確かにショックだったが、それよりもシェルと一緒に居た銀の髪の男の存在の方が気になった。
(あの人は、シェルの部下か何かなんだろうか? シェルはノンマルタスの次代の王なんだから、地上に一人で来てる方が不自然なんだろうけど。シェル、僕は本当に君の事を何も知らない。君はノンマルタスの都で何を想い、どんな風に過ごしてきたんだろう? 僕は君の事をもっと知りたい! 君が僕を避けるのには、きっと何か理由があるんだと、そう思いたい!!)
セレスとシェルは双子の兄弟でありながら、その生い立ちも性格も。
そして、考え方もまるっきり違っていた。
セレスは恵まれた環境で、実の両親からも周囲からも愛されて育った。
それ故に彼は自分に自信を持っていた。
人に受け入れられる事にも慣れていた。
自分が一族の長になるべく産まれた事も、自身の付加価値だと思っていた。
しかし、シェルは違う。
環境的にはセレスより恵まれていたかもしれない。
けれど、ノンマルタス一族の王子としての立場はシェルを逆に孤独にした。
彼は愛されているのは“王子としての自分なのだ!”と思い込んでいた。
自分が碧い髪を持っているからこそ必要な存在なのだと。
本当の自分は実の両親にさえ捨てられた、呪われた存在にすぎないのだと!
それ故に彼は愛に臆病になった。
たかが旅の占い師の予言でシェルを捨てたのは一族の過ちだったと、そう割り切った考えを持ち、シェルにその償いをしたい!
ただ一人の肉親として自分の傍に居てほしい!
自分を支えて欲しい!
……とそう願っているセレスと。
自分自身の呪われた運命と、現実に直面している危機から懸命にセレスたちを護ろうとするシェルと……。
その立場と考え方の違い故に、お互いの想いに気づかない。
その上、シェルがセレスを避けている以上、それぞれの想いが伝わる事は決してなかった。
それが二人の運命を悲劇へと導いていく――
セレスは凄くモテるので、自分が(この子いいなあ~)って思うよりも前に相手の方から寄って来る……って感じだったんですよね。
人に受け入れられる事に慣れていたセレスにとって、シェルの態度は逆に新鮮な驚きでした。
それにセレスは一族の長なので、自分と対等の人間が島には居ない。
シェルは双子の弟だけど、ノンマルタス一族の次代の王なのでセレスは一目置かざるを得ないんですね。(アクアオーラ王家よりもムーカイト王家の方が格上――という暗黙の了解のようなものがお互いにありますし)
だから元々セレスは言葉遣いは丁寧ですけど、シェルに対しては敬語だったり違ってたり、凄く微妙な感じになってます。