~新たなる出会い(はじまり)~第三話
ずっと、お前を見守ってた。
誰よりもお前を大切に想ってる。
だからこそ、俺は……
「待って下さい!!」
そのまま部屋を飛び出して行ったシェルを、慌てて追いかけようとしたセレスだったが……シェルの身体能力には敵わない。
(なんて速さなんだ……)
双子の兄弟とはいえ、産まれた時からノンマルタス一族として過ごし、完全にノンマルタスの血が目覚めているシェルと、未だ覚醒していないセレスとではその力には雲泥の差があった。
(どうして、何時もこうなるんだ? 僕はただ、あの子に向けられたようなシェルの笑顔が見たいだけなのに。僕は何時もシェルにあんな顔しかさせられない。あんな……全てを拒絶したような氷のように冷たい瞳と、この世の全てに絶望してるような深い哀しみ。僕が君を微笑ませたいと思っちゃ駄目ですか? あの笑顔を僕だけのものにしたいと。僕は、あんな小さな女の子にまで嫉妬してるっ!)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アクアオーラの別邸を飛び出したシェルは、そのまま海へと走って行った。
近くに“オーバル”を隠してあったが、其処まで行く余裕はなかった。
(一刻も早く島から離れなければっ!)
シェルを動かしているのはその一念だった。
(みんな俺の所為だ! やっぱり俺は此処に居るべきじゃなかったんだ。セレスの不安を軽減する為に……なんて言い訳に過ぎない。本当は俺が、セレスの傍に居たかった! でも、もう駄目だ! 俺は此処には居られない!!)
――十日後――
セレスは毎日のようにアクアオーラの別邸に通った。
しかし、あの日以来シェルが此処に帰って来た形跡はない。
(シェル……君は一体、何処に行ってしまったんですか? 君を抱きしめて、君の唇に触れたあの時! 僕は確かに君の心を掴めたと思ったのに。あれは僕の錯覚だったんですか? ……そんなに僕が嫌いですか? それとも、こうして僕を苦しめる事が君の復讐だとでも言うんですか?)