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陽光の短編集  作者: 陽光
3/3

回る廻るマワル

去年の学園祭で展示したテーマ小説です。

テーマは“風土”。

これから連想して、昔話をモチーフに書きました。



 俺がちっさい頃、近所に住んどったじいさんが話してくれたことなんやけどな、海の底には竜宮城ゆうもんがあって、乙姫さんっちゅー別嬪さんがおるんやって。


 へぇ、何や胡散臭いな。


 やろ? じいさんが言うには若い頃、子どもらにいじめられとった亀助けてその礼に連れてってもろたらしいわ。


 どうやって?


 亀の背中乗って。


 ほんまかいな。海の底なんやろ? 竜宮城とやらに着く前に死んでまうわ。


 せやろ。今思えばそうなんやけど、あん時は子どもやったからな。目ぇ輝かせて聞いとったわ。


 ほんで?


 おん。竜宮城では色んな魚が綺麗な舞いを見せてくれたんやて。美味い魚料理も食うたって言うとったわ。


 それ共食いやん。


 じいさんが食うたんやから共食いちゃうわ。それに、おっきい魚はちっさい魚食うやろ? おんなじちゃうのん?


 色んな魚が舞ってくれたんやろ? ちゅーことは、鯛が舞っとる前で鯛食っとったかもしれんのやで。大体、乙姫さんは魚の仲間か家族か、そんなんちゃうの? それ食わすん?


 そういやそうやな。乙姫さんも残酷なことしはるわ。


 そもそも乙姫さんは何もんなん。


 さぁ? 聞く感じやと外見は人間みたいやな。他は魚ばっかりやったらしいけど……もしかして海神(わだつみ)なんやろか。


 かもしれんな。……あれ? なぁ、村にあんな人おったっけ。


 ん? ほんまや。おーい、兄さん! 見ん顔やな! どっから来たんや?


 あー、何かごっつい動揺しとるんやけど何なんあの人。めっちゃ怪しいやん。


 あれ、どっか行ってもおたな。とにかく、飯は美味いし乙姫さんは別嬪さんやしで三年くらいおったんやって。


 三年て居座りすぎやろ。


 そんぐらい心地好かったんやろ、たぶん。そいで、残してった両親も気になるしさすがに帰らなあかん思って、乙姫さんに帰る言うたんやと。そしたら開けたらあかん玉手箱ゆう箱、土産にもろてんて。


 何やねん、それ。開けたらあかん箱って意味あれへんやん。


 じいさんも変に思いながら持って帰ったんやけど、浜上がったらおかしかったんやて。


 何が?


 村の様子が。じいさんのこと知ってはる人が一人もおらんで、じいさん自身全く知らん場所に来たみたいやったって。色んな人に話しかけて、何百年も経っとることがわかったんやと。


 竜宮城おったんは三年やんな?


 おん。おかしい話やろ。誰も知り合いはおれへんし、寂しなって玉手箱開けてもおたら、ぼわん、てな。煙が出てって、何十歳も年とって、白髪のじいさんになってしもたんや。それが、俺におうた一、二年前のことやって。


 へぇ、そら大変な思いしたんやろうな。あ、さっきの人戻って来はった。何やふらふらしとるけど大丈夫なんか。……えっ。


 うわっ! 今のん見た? ぶわってなってじいさんなったで。あれ玉手箱ちゃうのん。


 え、ほんまに?


 なぁ、亀助けて竜宮城行って乙姫さんにおうたか聞きに行こうや。わくわくしてったわ!


 ちょ、待ちぃや! あの話がほんまやっても亀助けたりしたらあかんで! わかっとるやろな! 浦島!



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