2.5
じいちゃんが入院してから半年になる。週末に見舞いに行くのが習慣になっていた。カレンも一緒だ。カレンの顔を見るとじいちゃんは嬉しそうだった。じいちゃんとはあまり会話はなかった。ちょっと、挨拶をして、病室のベッド横の椅子に座り時間を過ごす。じいちゃんは眠っている時間が長くなっていた。少しずつ覚悟をしていた。もう、別れの日は近いのだと。病室で考えていた。ラズに死を教えるにはどうしたらいいのか。そもそも、死とはなんなのか。じいちゃんが昼寝から目を覚ますと微笑む。胸が苦しくなる。じいちゃんの死をラズの研究に利用していたことに。この苦しみはじいちゃんが死んだ後、より一層強いものになった。
葬儀が終わるまでは泣かないと決めていた。じいちゃんが安心して天国に行けるように。伯父さんが葬儀の最後の別れの言葉を淡々と述べていた。もう少しで葬儀が無事に終わる。あともう少し。その時だった。涙が零れた。溢れだした涙は次々に零れ落ちた。息がうまく吸えない。あと少しだったのに。あと少し。あと少しでじいちゃんとお別れだった。ありがとうを言ってない。新しいラジオだって買えなかった。まだ、何も返せていない。これまでの思い出が浮かぶ。一番古い記憶。泣いている自分の姿。じいちゃんの手が頭を撫でる。温かい手だった。駄目だ。全然、変われていない。やっぱり僕は泣き虫だ。




