反逆 http://ncode.syosetu.com/n8094ba/
の1より前の話です。
赤ちゃんが泣いていた。姉さんの子供だ。ベッドで眠っていたかと思えば、次の瞬間には泣いていた。まるで怪獣のような泣き声だ。こういう時どうしてよいのか扱いに困る。こんなに泣いていて疲れないかと思うが、そんな僕の心配をよそに泣き続ける。泣き疲れたら、また眠るだろうと思うが側から離れられなかった。小さな手だ。思わず触ってみる。指を握られた。離してくれない。動けなくなってしまった。でも、泣き止んだようだ。可愛い寝顔だ。天使のような寝顔。ぴったりな表現だ。そんな天使にお願いしてみる。手を離して頂戴と。
大学の講義で人工知能論というのがある。僕は迷わず履修することを決めていた。僕の専攻は情報工学科だ。履修しないわけがない。しかし、講義を受けてみると後悔した。わけのわからん数式ばかりの教科書。理解できないまま教科書のサンプルプログラムを端末に入力し実行する。正直、理解できるヤツなんかこの大学にいるのだろうか?そう思いながらも実行したプログラムが最適な答えを導く様子を眺める。最初は数分かかった処理を数秒で導くようになっていた。理解できない。でも、凄いと思った。
この間まで泣いてばかりいた赤ちゃんは、名前を呼ぶと反応するようになっていた。名前はカレン。名前を呼ぶとこちらを向く。手を伸ばす。面白い。名前を呼ばれているのかわかるのだろうか?単に声がする方を向いているだけかもしれない。じっと、こちらを見ている。カレンが笑った。人の顔を見て笑うなんて失礼なヤツだ。そんなことを考えながらも自分の顔が笑っているのには驚かされた。
心理学の講義を受けていた。今日は発達心理学についてだった。生後すぐは、視界がほとんど見えないらしい。音は聞こえているらし。生後4カ月ごろには、声を出すようになるという。カレンのことを思い出す。最近、手を伸ばして声を出す。そのうち、ハイハイをするようになるだろうし、言葉も増えてくるのだろう。そういえば、人工知能論で作ったプログラムに言葉を学習させてみよう。まずは、単語を保存できるように改良しなくては。
カレンを抱っこする。ほっぺたを引っ張られる。怒ると笑う。僕は怒るのが下手なようだ。いや、こんな無邪気な子に本気で怒れる人間なんていないだろう。そんなことを考えながら、ほっぺたは引っ張られ続ける。いつの間にか眠くなったのか、不機嫌な泣き方をする。抱き直し、背中を軽く撫でる。いつのまにか眠らせるのが上手くなっていた。それにしても、涙とヨダレの汚い寝顔だ。




