表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バカな俺のスパイ伝説  作者: 白 一梅
第一章 地下組織
7/8

第七話

―――カツッ カツッ カツッ


おそらくは、ハイヒールを履いている女の足音なのだろう。

足音は、だんだんと近づいてくる。

まだ、足音はだいぶ遠く聞こえ、すぐそこの角を曲がったところから聞こえてきた。

俺は、ダンボールを必死に折りたたむのだが、焦ってしまったせいか、

なかなか畳めない。

焦りと緊張のせいで手元が狂ってしまっているのだ。


・・・くそっ


俺は一言自分を罵り、目を瞑って深呼吸をした。

息を吐き出した直後、閉じていた目を開き、俺はダンボールを畳む作業を再開する。

その間にも、足音は絶えず一定のリズムで耳に聞こえてくる。

俺は、今度は落ち着いてダンボールを畳む。

 

―――カツッ カツッ カツッ


ハイヒールだろう靴音は、角のすぐそばに迫っていた。


よっしゃ!


俺は、ダンボールを畳み終えて思わずガッツポーズをとる。

あとは、ダンボールを引き上げて、通気口の蓋を閉めれば・・・

と言うところで、ダンボールが通気口の穴に突っかかってしまった。

縦ではなく、幅の広い横で通気口の穴に通そうとしてしまったのだが、ときすでに遅し。

靴音は、すぐそこに迫っていた。

俺は、見つかってしまったと言うことを確信した。


・・・あーあ。 見つかっちまったよ。 せっかく、薄型の強化ダンボールを買ってきたのにさー。

100ワンコインだけど・・・。


え?ダサい?

もー、どうにでも言えばいい! 俺はな、スパイなんて本当はやりたくなかったんだよ!!

カッコイーな、とは憧れていたけどさ!

一度、やってみたいと思ったこともあるけどさ!!

一度で十分な上、かつ囮じゃなくてスパイがよかったんだよ!!!

もちろん、命の保障付き☆でさー・・・。


・・・囮?

そういや、俺、囮じゃん!

見つかってしまっても、結果オーライじゃねーか!

おぉー、なんだ、俺の任務成功じゃん。

さっすが、俺!!


・・・どーせ、囮なんですけどね。


俺が一喜一憂している間に、靴音の主は遠ざかる。


・・・遠ざかる?

近づいてくる、じゃなくて??


俺は、ダンボールをささっとしまうと(なんでさっきはあんなに時間かかったんだろう。)

ヒョイと通気口の穴から、顔を出す。

さかさまに顔を出すため、少し気持ち悪くなったが、靴音の主は俺に気付かずに行ってしまった。


・・・ラッキー☆

俺、最強じゃん♪


俺は、しばらく自惚れながら、狭い通気口を這いつくばっていきました。




しばらく通気口を進んでいくと、蓋の合間からやけに明るく光が漏れてくる場所があった。

俺は、なんとなく気になって、蓋をずらして隙間から見てみると・・・。


そこにあったのは、ものすごいもの、と言うわけではなく、普通の部屋でした。


その部屋は、特に何も置いてなく、ただただ明かりが強いというだけで、ほかには何の特徴もない。

人が1人もいなかったため、俺はいったんこの部屋に降りることにした。


トンッ、となるべく音が立たぬよう部屋に下りた俺は、ダンボールを組み立てて

その上に乗り通気口の蓋を閉める。

そのあと、ダンボールを畳んで懐(かっこつけて言っただけで、実は俺のバッグです。)に

しまう。


一連の動作が完了したあと、俺は改めて部屋を見回した。


ドアがひとつあるだけか・・・。

つまんない部屋だな。


俺は、そう思いながら、やけにまぶしく光る明かりを消そうと、スイッチを探す。

スイッチはドアのすぐそばにあり、(白い壁に白いスイッチで見つけにくかった。)

俺はそれをoffにした。


「へ?」


俺は、思わず呟いた。

確かにスイッチをoffにしたはずなのに、明かりは消えない。

それどころか、部屋に変化した様子は見当たらない。

俺は、「なんだ、この部屋?」と独り言を呟いて、もう一度部屋から出ようとしたところ・・・。


すごいものを見つけちゃいました☆


なんと、壁だと思っていたところが、開いたんです。

エレベーターのドアが開く感じで。


面白そう、と俺は好奇心にしたがって、その開いた扉の中にはいる。

中は・・・。

エレベーターでした。

エレベーターのドアが開く感じ、ではなくエレベーターのドアが開いたのです。


といっても、扉から入ってすぐにボタンがあるため、エレベーターなのだと分かったものの

とてつもなく広いこのエレベーターの空間は、もはや部屋とでも呼べるほどの広さだった。


俺は、何のためにこの場所があるのだろうか、ということは

微塵も考えずに、ただ好奇心の従うまま何があるんだろうなー、とワクワクしていた。


この真っ白な、部屋ほどの広さがあるエレベーターのボタンは、開くと閉める。

それと、U1という意味の分からないものしかなかった。


俺は、意味が分からないながらも、とりあえずそのボタンを押してみることにした。


エレベーターは、音も立てずに扉を閉めて、動き出す。


俺は、この先何があるんだろう、と期待に胸を膨らませていた。


任務など、すっかり忘れてしまってね。


この時、俺がこのエレベーターに乗ったときこそが、俺の冒険の始まりだったのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ