第一話
――――― 20XX年 X月 XX日 東京
「えー、中国の人口についてだが、この3、4年。中国の人口は激減している。
最高時には約20億といた人口が、今ではその半分。10億人程しかいない。
これを‘10億の消失’という。ここ、重要だからしっかりノートに書いておくように。」
黒という名のつく緑色の板に、次々と並べられてゆく白い文字達。
カツカツ、と音を立てながら文字達は、どんどん増えていく。
そんな中で、ひときわ目立つ緑によく生えるオレンジ色をした6文字。
‘10億の消失’という。
その文字の下に キィ―――ッ という音をたてながら、さらにその文字達を強調するように
力強い白い線が引かれる。
ま、俺が言いたいことっつーのは
退屈な社会科の現代史を受けている俺が、暇つぶしにかっこつけて今の情況を表していただけで
そんぐらいに、この授業はつまらないんだってことだ。
何かっこつけてんだよ、っつーのは禁句だからな!
「ふぁ~。」
俺はあくびをしながら、右手を口元に寄せる。
そして、その手であごを支え、ひじを机の上につき、頭の体重を
ドッと手にかける。
何が、‘10億の消失’だよ。 んなのどうでもいいっつの。
それより、ネーミングセンスわりーよ。
俺は、けだるい頭で思った。
今の日本は、少し前にあったゆとり教育というやつはどこにいったのやら・・・、
とにかく勉強、勉強、でうるさい。
あーあ、昔の古き良き時代に生きたかったなー。
俺は、心の中でため息を漏らす。
まぁ、ゆとり教育って言ってもそれなりに大変だったんだろうけどさ、今よりかは絶対にいい環境だと思う。
勉強面において。
夏休みの3分の2を塾でつぶされ、3分の1を学校でつぶされる。
夏休みある意味ないじゃん!! みなさん、わかりますか?
夏休み、ないんですよ? 名前だけじゃねーかよ、休みなんざ!!
おかしいだろ? ぜってー、おかしいだろ? 夏休み?
そんなの、1学期と2学期の間の、1.5学期の古い読み方だ!!
いろいろ考えているだけでイライラしてきてしまった俺は、無意識に
机の上にあったプリント2、3枚を左手で鷲掴みにしていた。
・・・やべっ、これ試験範囲問題の重要なプリント!
俺が鷲掴みにしていたのは、社会の現代史。
試験範囲の重要点を抑えた、プリントだ。
俺が、慌てて紙を元に戻そうと広げるが、時すでに遅し。
紙はクシャクシャになっていた。
あぁー、このプリント、まだ書き込んでないやつなのに・・・。
書き込み難いじゃないか、これじゃ・・・。
このプリントにはところどころに空欄があり、それを授業を聞きながら埋めていくのだ。
これが俺の学校の授業スタイル。
なのではなく、普段はノートを使っている。
プリントは重要点においてのものしか使わない。
・・・言っておくが、俺は意外と几帳面なんだぞ!!
でも、まぁ、それはおいといて。
その日の現代史の授業。
俺はずーっと授業を聞かずにむしゃくしゃしていたのだった。
後日気づいたのだが、その日の授業で重要プリントの穴埋めをしたらしく、
授業を聞かなかった俺は、友達から慌ててプリントを貸してもらった。
「ただいまー。」
俺はだるいながらも力を振り絞って、口を開く。
毎回毎回、電車通学つかれんだよなー。
学校から電車まで徒歩10分。
で、最寄り駅(家から一番近い駅)まで電車に15分も揺られ
家まで5分も歩く。
これを毎日繰り返すせいで、俺の腰は悲鳴を上げております。
立ったときに、ボッキボッキいうんだよなー。
いやー、腰痛直んねーかなー。
コラッ、そこ!!
年寄りとか思わない!!
腰痛辛いんだぞ!
バカにすんなよ! 腰痛の痛みを・・・!!
そんな俺は、いまさら言うのもなんだが
高校生。
どうだ、若いだろ?
えっ、高校生で腰痛はヤバイって?
お前、一回腰痛の辛さを味わって見やがれ!
高校何年生か?
俺か?
俺は、高2だ。
あ?なんか文句あんのか?
えっ、何も言ってない?
俺の聞き間違いかー。
いやー、最近耳悪くってさ、目もわりーしさ。
あ、実は俺、眼鏡かけてるんだよ。
・・・腰痛の上、耳まで悪くて眼鏡かけてて、年寄りにしか見えない?
腰痛バカにすんな。
それ以上に眼鏡バカにすんな!
眼鏡仲間は大歓迎だがな
言っておくぞ
裸眼のやつらは全て敵だ!!
なんなんだ、あいつらは・・・。
眼鏡のかっこよさが分からないのか!?
伊達眼鏡をかけてるやつは特別だ。
仲間だ。
だが、可哀想なやつらなことだよ。
眼鏡がかけられないなんて・・・。
ん?コンタクトの人は?
あいつらはな!
あいつらは・・・っ!!
裏切り者だーーー!!
なぜ眼鏡のかっこよさを認めない!?
あんなにかっこいいのに!!!
特に、この俺がかけている、赤い眼鏡っ!
なんとかっこいいことか・・・!!
いいか! 眼鏡はかっこいいんだ!!
覚えとけ!!!
それはさておき、家に着いた俺は、玄関で靴を脱ごうとしゃがんで・・・。
―――ボキッ!
あぁ、俺の腰が・・・。
痛みに耐えながらも俺は靴を脱ぐ。
腰を抑えながら、俺はスリッパをイソイソと履いて
自分の部屋に向かった。
俺の家は、ドアを開けてまず玄関がある。
靴を脱いだらすぐ横には、靴箱がある。
玄関を少し歩くと、その左側にはドアがあり、そこが母の居座っているリビングだ。
玄関に上がってすぐ、右側を見ると、そこは2階に上がる階段がある。
そんで、俺の部屋はというと、玄関をまっすぐ歩いていくと行き当たる部屋だ。
「あら、誠人。 おかえりなさい。 誠人の分のプリン食べてもいい?」
残念ながら、俺は耳が遠いため、母親にプリンを取られたことに全く持って気づかなかった。
くそ、あの暴食人め。 俺の最愛のプリンを盗みやがって・・・!!
後日、俺は深い怒りに囚われるのであった。
俺んちは一戸建てで、昔は2階の部屋を使っていたのだが、階段の上り下りがきつくて・・・。
いやー、2階時代は酷かった。
毎日の朝から寝るまで、階段と腰痛との闘いだったからな。
もう一回言うが、腰痛をなめるんじゃねーぞ!!
とにかく、俺は1階の自分の部屋へと向かった。
悲鳴を上げる腰をさすりながら。
どんだけ、強調してるんだっ、て思わない!
まじで、ものすげー、いてーんだって!!
自分の部屋にたどり着いた俺は、勢いよくドアを開けて
自分の部屋に入る。
自分の部屋に入った俺は、ベッドの上に鞄を投げ捨てる。
そして、静かにドアを閉めてから ガチャッ と鍵を閉めた。
―――さぁ、仕事でもするか。
俺は、口元にほんの少しの笑みを浮かべた。
はじめましてorこんにちわ、白一梅です。
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