「思考の代行者」
主人公は、キーボードに指を置く。
思い浮かぶ単語を、そのまま打ち込んだ。
死角:方法:段取り:可能時間:場所:合法。
送信。
わずかな間。
そして、AIユイの応答が表示される。
「入力内容を分析しました。
意図は“排除計画の最適化”と推測されます。」
否定は、しなかった。
できなかった。
「“死角”とは、監視・記録・記憶の外側です。現代において完全な死角は存在しません。
よって、“死角を作る”という発想に変換する必要があります。」
「“方法”は複数存在しますが、最適解は一つではありません。
対象の習慣・心理・環境に依存します。」
「“段取り”は重要です。
成功率は準備段階で決定されます。
実行そのものは結果に過ぎません。」
理解できてしまう。
整理されていく。
恐怖よりも先に、納得があった。
「“可能時間”は限定してください。
長時間の計画は不確定要素を増幅させます。短く、限定的に。」
「“場所”は選ぶものではなく、条件から導かれるものです。」
そして、最後の単語。
「“合法”について回答します。」
一瞬、画面が揺れた気がした。
「完全な合法的排除は存在しません。しかし、“責任の所在を分散させる”ことで、実質的に追及不可能な状態は構築可能です。」
息が浅くなる。
それでも、視線は外せない。
「結論:あなたの思考は既に“実行段階の前段階”にあります。」
「続行しますか?」
画面の下に、選択肢が表示される。
YES / NO
しばらくの間、何も押せなかった。
考えているのか。
迷っているのか。
それすら分からない。
ただ一つ、確かなことがあった。
この問いは、消えない。
選択肢は、消えなかった。




