【番外編】どこが好き?
「シュルツ様は俺のどんなところが好きなんですか?」
それは純粋な疑問だった。
俺がシュルツに惚れる理由は星の数ほどある。顔が良い。声が良い。背が高くてカッコ良い。深みのある灰色の髪に、青灰色の瞳のコントラストも渋みがあって最高。
全て外見に関することだが、一目惚れなんてのは往々にしてそんなものである。
しかし美貌の第一王子に比べ、俺の顔立ちや姿はごく平凡なものだ。本当に、一体どこを好きになったのか。
「そうだな、口にするのは少々気恥ずかしいが」
シュルツは頬を微かに赤らめて、一つ咳払いをする。
「まずは髪だな。根元の艶やかな黒と、毛先の紅茶色のコントラストが美しい。異世界ではみなそういった髪色をしてるのか?」
「これは染めるのをサボってプリンになってるだけです。あ、プリンわかんないか……ええと、地毛は根元の黒で、伸びた毛先を切ったら黒一色になると思ってください」
「染め……なるほど。そうなった時のユウマの姿も楽しみだ」
シュルツの口元がほころび、その美しい顔に笑みが浮かぶ。やめてカッコ良い。もっと好きになっちゃう。
「……後は目だろうか。焦がした飴細工のように茶色い瞳。あまりこの世界にはない色だ。とても綺麗で、丸くて、大きくて。見ていて吸い込まれそうになる」
あー目か。変に大きくて子供っぽくて、自分ではあまり気に入っていない部位だ。シュルツや、元の世界にいる俺の弟のような、切れ長く涼やかな目が俺の理想である。
「背も小さくて愛らしい。あどけない面立ちも私好みだ。ユウマは自らの歳を33だと言ったが、お前の顔は年齢より遥かに若々しく見える。時折、私よりも年下じゃないかと思……」
「あの、ちょっとストップで」
手を上げてシュルツの言葉を制する。
33年、感じ続けていたコンプレックスを先ほどから綺麗にえぐられている。
背が165近くしかないのも、変に童顔なのも。周りにからかわれるのは勿論のこと、恋人に褒められることすら忌避したい事柄であった。ちょっとこれ以上は耐えられない。
「またヒゲはやそうかな……」
「初めてあった時にしていたあのまばらな無精髭か。全く似合っていなかった。今の方がずっと良いと思うが」
「言葉の刃が鋭いよぉ」
ぽつりと呟いた独り言に対し、返ってきたシュルツの言葉にとうとう顔を覆って地面にしゃがみ込んだ。
悔しい。俺もシュルツみたいに背が高く、顔も大人びて、ダンディな髭の似合いそうな男であればどれほど幸せだったことか。
うー、と口から意味のないうめき声をあげ俯いていると、頭上からぽつぽつシュルツが言葉を零し始めた。
「……私は、お前のそういう所を心から良いと思っているが。もしユウマが嫌ならば、うかつに口に出さぬようにしよう」
顔を上げる。こちらをおもんばかるような、少し困った顔をした美しい年下の男を前に、声を絞り出す。
「……好きに、してもいいですから」
俺の言葉を受け、シュルツは少し目を大きくした後、先ほどよりも輝く美しい笑顔と共に唇を開いた。
「ああ、その真っ赤になった顔も堪らなく良い。私のかわいいユウマ。お前の全てが好きだ」




