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48. 美人コンテスト



 さぁー今年も始まって参りました『第629回ゼルフィ王国美人コンテスト』。実況は私ヴァリエ王国のユウマと第一王子シュルツでお送りします。


 …………と、こんな風にふざけてられるのも、不幸中の幸いで自身がこのコンテストへの参加を免れたからだ。まあでも実際ね。暗殺の危険とか考えたらフツーに危ないしね。


 ゼルフィ王国美人コンテスト、別名を花女神の祝祭。グロリース湖より少し離れた地点、開けた平地にて開催されるそれは、数百年も前より続くこの国の名物なのだとか。


 会場に集まるのは、大陸各国の王侯貴族の姿。中心部から離れた場所には平民用の席こそあるものの、そこに居るのは城仕えや裕福な商人など、一部の身元確かな人間のみ。


 このコンテストの参加資格は意外にも厳正なものだ。年齢は15歳から34歳まで。水の属性以上の魔力を持ち、容色麗しい未婚の男女。特に男は『転性の儀』を受ける素質のある者しか参加できないのだという。


 ちなみに離婚していればバツ1バツ2でもOKらしい。厳しいのか緩いのかイマイチ分からない規定だ。まあ『花女神』といいつつ男の参加も許可してる時点で今更感はある。


「ーーー続いての参加者は本大会の優勝候補! 13番、セレニケ・ネーベル・ファルタ王子。御年18です」


 司会者の声と同時、壇上に立つセレニケが、頭から被っていた長い黒布を地面に落とす。


 現れたのは、繊細な刺繍を施したレースをいくえにも重ねた白絹。葡萄の蔦と葉をモチーフにした輝く銀細工の宝飾には、果実の房が垂れ下がるよう紫水晶と若草色のカンラン石がふんだんに使われている。


 紫がかった銀髪を飾るのは身に纏うそれと同色の宝石で、大粒の輝きはセレニケの美貌に勝るとも劣らず……いや、いささか霞みすらするだろうか。


 相変わらずエグいほどに美人だなぁ。セレニケ王子。

 これはフェリペのみならず、さぞ多くの殿方から求婚されることだろう。


「彼が出るのはこれで二度目か」

「そうなんですか」

「前回はアリエスに敗れ惜しくも優勝を逃したそうだ。今年こそはと意気込んでいたらしいが、奴も急遽出場を取りやめたからな。さぞ無念なことだろう」


 あー……なるほど。セレニケがフェリペの邸で語っていた言葉を思い出す。確かに彼の美しさは、アリエスのそれと中々に良い勝負だ。今はうら若く瑞々しい美が、歳を重ね円熟し、その艶やかさを増した際にどうなるか楽しみだ。


「ーー更にお次はヴァリエからの客人。カネナリ・ユウマ殿が欠場となったため、急遽代打として参加する運びとなりました! 16番、リオナ・ルーミエ! 御年16となります」


 出た出た。ああ、かわいそうなほどに縮こまっている……。


 代打でのリオナの参加を提案したのは、他ならぬこの国の王。アリエス陛下その人だった。


『年も若いし可愛い顔してるし、ちょうど良いんじゃない? 俺も今回不参加にしちゃったからさぁ、頭数が欲しいんだよね。服も宝飾も、俺が直々に見繕ってあげるから、ね?』


 そう一国の王に請われてしまえば、リオナも首を縦に振らざるを得なかったらしい。かわいそうに。


 リオナが纏っていた黒布を地面に落とす。現れたその姿は、柔らかな素材の白絹に清楚な花の飾りをあしらった、何とも愛らしいものである。


 彼の体は幼い顔に似つかず存外男らしいのだが。喉元や肩をはじめ彼の男性性を際立てる部位は、銀糸の刺繍も細やかな薄桃色の絹布と、真珠と金剛石を散りばめた小花の飾りによりたくみに覆い隠されていた。灰褐色の髪は白と薄桃色を基調とした髪飾りでまとめ、要所に宝石の飾りを編み込んでいる。


 清楚に見えて、その実華美で贅と趣向を凝らした装い。流石は一国の王の見立てといったところか。近くの席で、ぶふと誰かが噴き出す音を聞く。振り向くと、そこにはリオナと同じ灰褐色の髪をもつ長身の青年が、口元を押さえて震えていた。


「あれはリオナの兄だ。ルーミエ家の次男でな。ゼルフィの祝祭には毎年好んで参加している」 


 何も笑ってやることは……と思うものの、まあ俺も自分の弟が同じ祭りに参加してたら噴き出す自信がある。悲しいが、男兄弟というのは得てしてそういうものなのだ。


 しかし参加者も残り4人となった頃。改めて思うが、女性の参加者が少ない。というより一人も存在しなかった。魔力持ちの女性がそもそも希少という事情もあるのだろうが、仮にも女神の名を冠する祭でこれはいかがなものか。


「……ゼルフィの祝祭は、古来より妙齢の魔力持ちを衆目の場にて披露する意味もかねているのだ。魔力持ちの女性であれば、こういった機会を設けずとも縁談の話は山のように舞い込んでくるからな。女性の参加者は五年前のペーリエの娘御が最後だという」


 実況席のシュルツさん、解説ありがとうございます。

 

 確かにシュルツのいう通り、装った参加者の姿がお披露目される度、周りの王侯貴族がにわかにざわめく気配を先ほどから感じる。あれはぜひ、我が息子の嫁に……。そんな言葉がよりによってリオナが壇上に立つタイミングで耳に入る。俺はただ苦笑いを浮かべながら、自身の身代わりとなった彼の姿を見守る他なかった。

 


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