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42. 死地再び3



「ナルシス様!? なぜこちらに」


 兵の一人が、上空の美少年を見上げ呆然とした声を上げる。その兵に這い寄ろうとするトカゲの姿が、再び上空から降り注ぐ光の中に消える。


「ヴァリエ王国の第一王子がこちらに見えると聞き、馳せ参じた! ……さ、シュルツさまぁ♡どうかそんな埃臭い場所でなく、私めの馬の後ろにお乗りください」


 そう言ってナルシスは翼をはためかせた馬と共に、地に降りようとする。


 その馬の翼を、飛んできた風の刃が瞬く間に切り刻んだ。

 アッ、と声を上げるまもなくナルシスの体が宙に投げ出され、その先には口を開けた大トカゲが待ち受けている。


 咄嗟に、短杖の先に練り上げていた魔力を地面に向けて解き放つ。しゅるりと大トカゲの顎下から伸びた蔦がその口を塞ぎ、ナルシスの体はその魔物の身と激突し、地面に投げ出された。


「ッ、つ……!っ、う」


 少年は辛うじて息をしているものの、全身を強打したからか、身動きの取れない状況に見える。


 まずい。俺はロミアスとダミアンに挟まれている現状、うかつに身動きは取れない。先程練り上げていた蔦の魔法も今消費し、シュルツはナルシスの元まで行くにもやや距離がある。


 迷っている暇は無かった。数節の詠唱で練り上げた魔力を急ぎ短杖に込め、意を決して解放する。


 じたばたと蔦を口に巻かれたまま暴れ、今にもナルシスを踏み付けそうな魔物の体が、俺の放った土弾を受け反対方向へと倒れた。


「シュルツ様!」


 俺の声に応え、シュルツはナルシスの身を軽々と抱き上げた後、こちらへと駆け寄る。シュルツが彼を地面に下ろした後、俺は今しがた起きた事とその感動を、喜びと共に口に出す。

 

「や、やった! 使えましたよシュルツ様……! 攻撃魔法を!」

「なぜお前がここにいる!!!」


 それは初めて聞く、自らに向けられたシュルツの怒号だった。低く圧があり、ぐわんと頭の揺れるような大声に思わずひゅんと身がすくむ。


「私の判断で連れて参りました」

「ロミアス……!」

「殿下、聞き分けてください。貴方が賊に襲われ行方不明となった状況では、これが最善手でした。後手に回っていては敵の思う壺です」


 ロミアスの言葉に、シュルツは沈黙した後息を吐いた。


「ダミアン。この戦線を離脱するのに、どれほどかかる」

「私の見立てでは十分ほどかと。この体勢のまま後退します。お二人は決して、我々の側から離れぬよう」

 

「……いや、ここは攻めに転じる方が確実でしょう」


 俺は自身の長杖に、火と水の魔力を練り上げ込めていく。そうして魔力が溜まり切った後、上空のグリフォンに向け爆殺の魔法を放った。


 グリフォンの首の付け根が爆発し、その身が捩れ血飛沫が舞う。

 側を飛んでいたエクスはやや呆然とした面持ちで、返り血を浴びたままこちらを見ていた。ハハ、驚いてやがる。以前マンティコアの餌になれなどと、俺に暴言を吐いたお返しだ。


「なるほど、すっかり調子が戻られたようですね」

「あと五発は撃てるかな……周囲の警戒はお願いします、ダミアンさん、ロミアスさん。ここでグリフォンの頭数を減らした後、撤退します」



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