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35. アフタートーク



 腰いっっっった。


「ユ、ユウマ。大丈夫か」


 大丈夫なわけないだろ、というその言葉を咄嗟に飲み込む。満身創痍の俺に対して、シュルツは心底申し訳なさそうな表情を浮かべつつも、その顔はどこか満たされていた。ああ、惚れた弱みで許してしまう……。


「だいじょうぶです」


 あまり大丈夫じゃないたぐいの掠れ声が出た。水。水が欲しい。しかしこの状況じゃ人を呼ぶこともままならないだろうと、下を向く。


 纏った帯飾りはよれ、着ていた白絹はぐしゃぐしゃに乱れ所々が裂けていた。どう見ても暴漢に襲われた後の光景だ。最終的にはあながち間違いでもなかったが。


 シュルツも見ていて居た堪れなくなったのか、自身の纏っていた上着をこちらの身体にかけてくれた。ぶかぶかのそれは、シュルツの香りと温もりがまだ残っていて、もう十分欲求を発散したはずの体が微かに熱をもつ。いやいや何考えてるんだ俺。もう無理に決まってるだろうと自身を留める理性に従い、口を開く。


「シュルツ、さま」

「今水と拭くものを持ってこさせる。ユウマはここにいてくれ、すぐに戻る」


 そういってシュルツはこちらの唇に一つ口付けを落とすと、衣類を纏って部屋を出る。いやまあ冷静に考えれば誘った俺が用意すべきだったな。気持ちが急ぐあまり、そこまで気が回らなかった。


 彼が居なくなった部屋で、改めて先ほどまでの出来事についてじわじわと実感が湧いてきて、衝動的にベッドに顔を埋めた。


 シュルツと、とうとう最後まで出来た。してしまった。しかも俺の勘違いだったのか、彼は相変わらず自身を好いてくれている様だった。よ、よかったぁ〜……嬉しいぃ……いてて。


 多幸感と、それを上回る体の痛みと辛さ。窓の方を見れば空はすっかりと暗くなり、今は夜も半ばといった所か。色々とぶっ続けだったもんな。よく生き残ったな俺。


 しばらくしてシュルツが水差しや桶を持って戻ってくる。自分でやると言ったが聞かず、彼は俺に手ずから水を飲ませ、濡らして絞った布で体をすみずみと拭った。


「ユウマ」


 シュルツが静かに口を開く。


「あの時言っていた『最後に』というのは、一体どういう意味だったのか」


 それは俺がシュルツに誘いをかけた折に発した言葉。結局は自分の勘違いだったので、そのまま流して欲しかったのだが仕方ない。


「……特に深い意味は。今朝のシュルツ様がそっけなかったので、少し不安になってしまっただけです」

「ああ、それは悪かった。一週間ぶりにユウマと会えたのが嬉しくてな。共にいるとアリエスとの用事も時間も忘れ、お前を離せなくなりそうだったので距離を置いた」


 言ってくれなきゃ分かんないって。しかしシュルツの言葉が足りないのは、今に始まったことでもない。それにこの事は、シュルツを信じきれなかった俺にも非がある。


「……こちらこそ、おかしなことを言ってすみませんでした。シュルツ様」

「謝るのは私の方だ。結果的に、お前に無理をさせてしまった。私の気を惹くためにと、色々と手間をかけさせたな」


 その懺悔の言葉に反して、シュルツの顔と声はあからさまな喜色に富んでいた。

 おい謝る気ないだろ。こちとら必死の思いで恥をしのんでめかし込んだというのに。


「……どうも見苦しいものをお見せしましたねぇ。年増の男が、殿方のために懸命に着飾る姿など」

 

「何を言う。花女神の様にいたく愛らしく魅力的な姿であった。なあユウマ。また私一人の為だけに、お前の美しく着飾った姿を見せておくれ」


 

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