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34. 夜は長い



 気付けばシュルツは俺の身を抱きしめ、彼の逞しい肩口に自らの顔が埋まる。近付くことで感じる愛しい男の香りと温もりに、にわかに頬が熱くなった。


 こ、これは、どっちだ……?


 ドキドキと自身の胸が激しく高鳴る。シュルツは人に威圧感を与える外観と裏腹に、その心根は優しい。ゆえにこれが肯定の合図なのか。それとも情けで今自身を抱いているだけなのか、判断がつかなかった。


「ユウマ」

「は、はい」

「その装いは一体どこで用意した」


 わりかし真っ当な質問だった。若干肩透かしをくらった心地のまま、口を開く。


「ええ……これは祝祭用に城から取り寄せて貰ったものです。飾りは、フェリペ様の屋敷で下賜して頂いたものを」


 俺が今身に纏っているのは、花女神の祝祭……ゼルフィ美人コンテストの様式に則った衣装だ。先日フェリペの邸で身につけた深青の石の宝飾に、ロミアスが伝達にて手配させると言っていた白絹。邸で着た厚手のものと違い、薄く軽い素材でできたそれは肌にぴたりと纏わりつき体の線が透ける、中々に扇状的なものであった。


 俺の言葉を聞いたシュルツは、その唇を開き言葉を紡ぐ。

 

「駄目だ」

「え」

「こんなにも魅力的なユウマの姿を、衆目の前に晒すなど私が認めん」


 こちらの身を抱く男の腕の力が強まるのを感じながら、その言葉を噛み砕き、徐々に脳が意味を理解する。


「……ええと、シュルツ様。この装いは、ただあなた一人の為だけに」

「ああ」

「そのお……うう」


 やばい、今更ながらに羞恥が優ってきた。

 彼の腕から逃れようと身動ぐが、その逞しい体はびくとも動かない。


 おもむろにシュルツの手が腰をさすり、身体が震える。額になにかが触れる感触に、顔を上げたとたん、唇に一つシュルツのそれが触れた。


「う、ん」


 次いで食まれる感触に、思わずぎゅうと目を瞑ってしまう。そうして数秒が過ぎたころ、不意に自身の体を抱えられ、軽々とその逞しい腕に全身がおさまった。


 ひえ〜〜……あ、安定感がすごい。

 

 またたくまに己の身はベッドの上へと攫われ、その上にはシュルツが覆い被さっていた。切れ長く涼やかな青灰色の瞳の中に、確かな熱がともっているのを目の当たりにし、自らの瞳もまた潤むのを感じる。


 ああ、好きだ。シュルツ様。好き。

 だからどうか、この一晩だけでも情けを。だ、抱いてぇ……33歳のおじさんだけどぉ。


 

 そんな内心の祈りが天に届いたのか。

 俺はその後文字通り「一晩」の情けを……それはそれは大層長い夜を過ごすことになった。

 


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