【番外編】会いたい
「ユウマに会いたい」
「まだ今日城を出られたばかりですぞ」
「帰りは二週間後になるのだろう? ユウマのいない孤独に耐えられそうにない。今から憂鬱だ」
彼を召喚した当初、ひたすらに避け続け邪険な態度をとっていた男の台詞とは到底思えなかった。
ハラルド・ローエン。自身には、弟の産んだ甥御のシュルツ王子のことを、幼少より側で見守ってきた自負がある。
彼は幼い頃から聡明で、思慮深く、そうして誰よりも心優しい。王としてはいささか頼りないと周りに思われがちだが、そんな彼だからこそ、自身はシュルツ王子がこの国の王に一番相応しいと思っていた。
「ふふ」
「何を笑っている、ハラルド」
「いえ、殿下が私めにそのような弱音を吐くのは、久方ぶりだと思いまして」
「仕方なかろう。ユウマは私にとって特別な存在なんだ。こんなに人を好いたのは生まれて……初めてのことだからな」
微かにつっかえながらも、そうシュルツ王子が口にする言葉に、耳を傾ける。手元の書類を整理した後、自身も口を開いた。
「……そうでしょうな、仕方のないことです」
「ハラルド?」
「あと一週間、といったところでしょうか。残りの山を片付けたら、後のことは私に任せてゼルフィにお行きなさい、殿下」
「……! しかしそれではお前が」
「先ほどからずっと手が止まっております。仕事に身が入らぬまま城におられるより、少し息抜きをされた方がよろしいかと」
自身の言葉に、シュルツ王子はハッとした顔をした後、書類に目を向けるべく視線を落とす。やはり無自覚であったか。こういった面はまだまだ未熟だと思うものの、同時に微笑ましく思う気持ちが湧き起こるのも事実である。
先代の国王もまたそうであった。強いリーダーシップで周りを率いるというより、どちらかと言えば周りが支えたくなる様な、人に好かれる魅力を持つ温和な人物。
シュルツ王子はその外見と振る舞いから誤解されがちだが、心根は誰よりも優しい。だからこそ人が側についてくる。王とは孤高の存在であるものの、けして孤独であってはならないのだ。
故に、もし彼でなくエクスが国王となることがあれば、自身はためらいなく今の地位をランバルに譲り渡し、シュルツ王子を国外へと逃すだろう。
彼はいまだ、弟と共に国を治める夢を思い描いているようだが、それは決して訪れることのない未来だ。なにせ弟のエクスは兄のシュルツを蔑み、そうしてそれ以上に、殺したいほど彼を憎悪しているのだから。




