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22.グロリース湖にて



 ゼルフィ王国美人コンテスト。


 全くもってふざけてるとしか思えない字面だが、こう見えてゼルフィに代々伝わる由緒正しき奇祭……いや、祝祭なのだとか。


 正式名称は『花女神の祝祭』。ゼルフィ国内だけでなく各国から選りすぐりの美人を集め、その年の『花女神』を決め大陸全土の豊穣を願う。


 花女神は、この大陸に聖教会の教えが広まる前から存在していた信仰の一つだ。この世界では特に宗教の弾圧などは起こなわれていないそうで、王侯貴族はみな聖教会の信徒でありながら、異教の神にも敬意を払う。まあ魔物の脅威を目の当たりに、人間同士で争ってる暇などなかったのだろう。


「花女神の零した麗しき涙を集め、グロリース湖が生じたという伝説がある。祭は代々、グロース家の治めるこの地で行われるのが慣習なのさ」


 ということでゼルフィにようこそ! ユウマ殿!


 やたらとテンションの高い様子で、両手を広げアリエスがこちらを歓迎する。もう酔っ払ってるのかと片手を見たら、すでに中身が半分ほど空いた酒瓶を握りしめていた。自由すぎるだろ。


 疾馬を飛ばすこと数時間。グロリース湖は比較的ヴァリエから近い場所にあり、壮麗な湖と緑豊かな森。水辺を臨む高台には幾つもの豪華な別荘が立ち並び、なかなかに素晴らしい眺めであった。


「まあゆっくりしていきたまえ。祭りまではまだ二週間もある。ユウマの為の別荘も用意しているけど、まずは俺の邸に来ると良い。歓迎しよう」


 俺の隣に立つリオナが、なんとも言えない表情を浮かべこちらに視線をよこす。どうやら彼はアリエスに若干の苦手意識があるらしい。まあ、気持ちは分かるよ。うん。


 

 結局あの日。俺はフラミスの提案に乗り、ゼルフィ王国の美人コンテストに参加すべく国を発った。


 もちろんその前には一悶着あった。シュルツは恐ろしいものを見るような面持ちでしばしアリエスからの手紙を眺め、そうして俺を引き留めようとギリギリまで粘り、駄々をこねていた。


 まあ、アリエスとの私信でそれとなく断っていたにも関わらず、金印入りの正式な招待状が来たものでシュルツからすればさぞ度肝を抜かれたことだろう。今回の事が俺とフラミスの企みで成り立っていることを彼は知らない。


『たしかにユウマは世界で一番かわいい……アリエスが何としても花女神の座を競いたくなる気持ちも分かるが、しかしあんな出来事があったばかりだろう。お前は私と一緒に国に居るべきだ。もしユウマがまた誰かに攫われでもしたら、今度こそもう生きていけない』


 そう今にも泣き出しそうな声ですがられ、正直後ろ髪を引かれなかったと言えば嘘になる。

 だがシュルツの言い募る内容があまりにも寝ぼけたものだった為、すんでの所で理性が打ち勝った。


 どう考えたって俺が花女神の座を競えるはずないだろうが。

 33歳の良い歳したおっさんで、大して顔が良い訳でもない。イロモノ枠にしても、あまりにミスマッチな人選である。


 くそっ、止めてくれるなシュルツ。俺はこれから大陸中の笑い者になりに行く。それでも行くしかないんだよぉ……。


 一応、美人コンテンツの参加者でなく来賓で行くという手もあった。しかしそれだと、ドミニクとの先約を断ってまでゼルフィに前入りをする理由が無くなる。そう。


「グロース家に美人が多いのは、この地の水と食べ物が格別に美容に良いからだとされている。飛び入り参加もあるにはあるけど、本気で花女神の座を狙うなら、やっぱ二週間はここで養生……おっと、己の美を磨いていくべきだね」


 組んだ足の上に自らの手を乗せ、そうアリエスは語る。

 

 招かれたアリエスの別荘は、ゼルフィ王家が代々所有するこの地で最も広く美しい邸だ。


 飴色に輝く重厚な調度品と、薄緑を基調にしつらえた室内は美しく品があり、テラスに出れば陽に照らされたグロリース湖の水面がキラキラと輝く様を一望出来る。


 その来賓室にてアリエスと二人。まず自身の元に運ばれてきた食事は、一皿の具なしのスープであった。



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