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12. でっかぁ……



 嬉しいなぁ。楽しみだなぁ。


 先ほどのナーバスとうって変わり、自身の機嫌はただすこぶるに良かった。


 今更ながらの話であるが、俺は同性愛者だ。前の世界では恋人も何人かいたし、経験もそこそこある。


 33歳のいい大人である。ウブな少年少女と違い、好いた相手がいれば当然愛を育む営みをしたい。それをためらうかのような、恥じらいの心はとうの昔に捨てていた。


「シュルツさまぁ♡」

「少し待っててくれ」

「っえ、シュルツ様……?」


 シュルツは、先程部屋を出た際に取ってきたのだろう。小瓶に入った液体を一息で飲み干す。なんだそれは、精力剤か何かか?


「あ、なるほど。俺相手にその気になるか不安だから、わざわざ用意してくださったんですね」

「これは鎮静剤だ」

「鎮静剤」

「万が一お前に乱暴を働くことがないよう、あらかじめ服用しておこうかと」


 別に多少激しくされたとて、俺としては全く無問題なのだが。

 むしろそんなものを飲んでしまって、いざと言う時に方が不味くないか?


 そんな自分の戸惑いもなんのその。深呼吸の後、シュルツの手が恐る恐るこちらへと触れ、俺の体をベッドの上へと押し倒した。


「口付けをしても良いか」


 こころよく頷くと、シュルツの美しく精悍な顔がおりてくる。

 

 迫る男の顔は、目に見えて緊張の色を浮かべていた。か、かわいい〜……そうだよな。女は分からないものの、男は多分初めてなんだよな? ああ、ウブで可愛い。


 俺は同性愛者だが、相手は誰だって良い訳ではない。その点目の前の男は何もかもが自身の好みドンピシャで、ただただ高なる胸の鼓動を抑えきれなかった。





「本当にすみませんでした」


 自身の口から、思いのほか深刻な声色のそれが零れ出たのを自覚する。


 いや本当に……自分から誘っておいてこの体たらく。誠に申し訳ない。最早懺悔の気持ちしか湧き上がってこなかった。


「ユウマ……」


 共にベッドの縁に腰掛けていたシュルツが、こちらを労わるよう優しく肩を抱きさすった。


「悪いのは私の方だ。煮え切らない態度のせいで、ユウマを不安にさせ事を急がせてしまったな」

「あ、いえ。そんなことは……」


 一応、準備は万端のはずだった。問題はシュルツの……それが色々と規格外だった故、流石にこれはまずいと俺が行為の途中にストップをかけたのだ。いやすみません。当人の体も大きいのだからそりゃあ……と俺が想像力を働かせるべきでした。うぅ。


「……私は、お前のことを好いている」

「っえ、あ、ハイ。俺もです、シュルツさま」


 うおっ、急な告白に心の準備が。なんだなんだ。


「いずれは名実共に、夫婦の関係になりたいとも思っているとも。だがそれ以上に、ユウマの体に負担をかけたくはないんだ。私はいつでもお前を待っている。だからどうか無理だけはしないでくれ」


 ホワァ……! や、やさしい。うぅ、この労わりが嬉しいのと同時に心が痛かった。


 慣れない異世界の地で、自身を呼び出した第一王子と互いに両思いであることが発覚し。しかしその前途にはまだまだ困難が待ち構えている。


 つ、次は絶対に成功させる。必ずしや名実共に彼の伴侶となるのだと、そんな決意を胸に俺とシュルツの初夜は更けていくのであった。



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