最終章 味方であった悪役令嬢。そして、また悪役になる
あれから一年の月日が経ち、王宮の庭園では平和な祝祭が行われていた。
アメリは魔導院の長として、国を支えている。
マクシミリアン王子は賢明な王として、民を導いていた。
そして、私はと言うと──
「ミレーユ様、お手紙が届いています」
侍女が差し出す封筒には赤い薔薇の紋章。
開くと便箋にはこう書かれている。
悪役令嬢よ。
貴女の役は終わった。
だが世界にはまだ守るべき物がある。
次は東の国で会おう。
──グレイムより
私は静かに微笑んだ。
「……また、悪役を演じるのかな」
そして庭の薔薇の前に立ち、静かに呟く。
「でも私は──味方だから」
風が赤いドレスをなでた。
どこか遠くで、新しい物語が始まろうとしている。
*****
それからまた数年後。
東の大国、シンラ王国。
戦乱が続き、王女が暗殺されかけたという噂が流れてきた。
その夜、黒い馬車が王宮に近づく。
中には赤いドレスの令嬢。
「──私はミレーユ・エリューズ・シャリエール。この国でも悪役令嬢を演じましょう。だって私は──味方だから」
馬車のカーテンが閉じた。
そして、新しい物語の幕が静かに開く──。
THE END