第三章 偽りの恋と真実の誓い
王宮の舞踏会の夜。
華やかなドレスをまとった令嬢たちが、王子を囲んで笑う。
私は赤いドレスを纏い、会場の中央に立った。
「殿下、一曲お付き合いいただけますか?」
私が手を差し出すと、マクシミリアンがわずかに眉をひそめる。
「ミレーユ。貴女はまた……アメリを陥れようとしているのか?」
「いいえ。今回はあなたを救うためです」
「……?」
音楽が始まり、私は王子と踊り出した。
しかしその足取りは、徐々に《影の呪文》のリズムに合わせて動いている。
「……これは、影の踊り?」
「ええ。あなたの魂に刻まれた《影の契約》を、踊りで解く。これが唯一の方法です」
「……何の話をしている?」
「あなたは本当は善人です。ルイガンはあなたの優しさを逆手に取り、あなたを操った。でもそれは偽り」
「……!」
「殿下、あなたが本当に望むのは平和な国。そして、アメリとの未来。それを取り戻してください」
私の言葉にマクシミリアンの瞳が揺れた。
そして、突然──
「……ミレーユ……なぜ、貴女が……?」
「私は悪役令嬢。でも、あなたたちの未来を信じている。だからこの役を演じる。誰からも憎まれ、追放されても、構わない」
その瞬間、王子の体から黒い霧が抜ける。
《影の契約》が、解けたのだ。