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誰にも見つからなかった詩

作者: 小雨川蛙

 一人の男が静かな死を迎えた。

 戦場での死だ。

 凍えるような死だ。

 しかし、穏やかな死だった。


 彼は幸運にも知恵が遅れていた。

 故に戦場で起きる様々な死とその意味を考えることは出来なかった。

 彼は自らの死だけを恐れていた。


 彼は幸運にも優しかった。

 だから、敵を一人として殺すことが出来なかった。

 彼は自らの死だけを恐れていた。


 彼は幸運にも隊列から逸れた。

 おかげで隊列と運命を共にせずに済んだ。

 彼は自らの死だけを恐れていた。



 そして、彼は今、穴蔵の中で死に至った。

 自らの死だけを恐れていた男の、誰にも気づかれぬ末路だった。


 彼は幸運だった。

 誰にも見つからず死んだから。


 彼は幸運だった。

 誰も殺さずに死ねたから。


 彼はそれに気づかぬままに逝った。



 ―――戦地にて一名の遺体を回収。

 その他、特記事項なし。



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― 新着の感想 ―
『彼は幸運だった』が続きますが、誰の視点なんでしょうな? この作品、『幸いなるかな、心の貧しき者』から始まるマタイの福音を連想させて頂いておりますが、凡人の私にはあの一節から始まる連呼が未だに『幸いな…
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