感情を喰らう剣
翌朝。開店前から店主のスアリッドに叩き起こされる。
「おい!働くって言ったよな!?よっしゃ、今日はまず鉄の磨き方から教えてやる!」
スアリッドは屈強な体で笑いながら、ゴツい鉄の塊を持ってきた。
そしてその背中を見つめるレイの中で、ひとつの疑問がふつふつと湧いていた。
(この人……何者なんだ?)
ただの鍛冶屋にしては、妙に勘が鋭く、やたらと「能力者」について詳しい。
能力者について何か知っているの?
「俺は昔からそういうのに巻き込まれやすくてね。若い頃はやんちゃばっかしてたけど今はもう腰に来ててよ」
教えてくれ!俺実はある人にお前の能力について説明するからエルシアに来いって言われてここに来たんだ!
「…そうか、その男はエルシアに来れば分かると行っていたか…」
店主は刀を叩くのをやめ、振り返って言った
「よく聞けレイ、この世界には特別な力を持つものたちがいる。彼らはソマーズといってお前のように人間を超越した力を持つ者だ。」
ソマーズ…そうか俺は気づかぬうちにそのソマーズの仲間入りしたと言うわけか。
「ソマーズはある日突然能力、すなわちソーマを得るらしい。俺にもその方法は分からん。詳しく知りたいのなら語りの塔に行くといい」
そう言うとスアリッドは街の中心の大きな塔を指差した。
閉店後、俺は語りの塔に行ってみることにした。そこは湖に囲まれた塔で周りに人はいなかった。入り口には大きな鉄格子があり、一週間後の祭典まで開かないと書かれていた。
仕方ない。出直すか。
店に戻るとスアリッドが待っていた。
「材料のこともあるし、そろそろ武器を作り始めようと思う。お前の欲しい武器はどういうのだ?」
すっかり忘れていた。なんやかんやで武器を貰えるんだった。
しばらく悩んでいるとスアリッドが提案してきた。
「レイのソーマを教えてくれるか?なに、その能力に合った武器を考えてやるのさ。」
わかった…俺は記憶操作系のソーマを使える。詳しく言うと、俺の能力は他人の記憶をすり替えたりすることができるのさ。
「なんだと?そんなことができるのか。そんなことができるソーマ使いはあまりいないぜ。わかった、それならこのどうだ?」
そう言うとスアリッドは引き出しから指輪を出した。
「この指輪はヴィゼラと言って使用者の感情によって形が変わる武器だ。怒れば斧、冷静なら短剣、恐れれば防具になるなど万能だ。ただ…」
スアリッドは少し躊躇いながらこういった。
「ヴィゼラは**“感情を喰らう剣”**として恐れられていた。持ち主の内に秘めた感情が強ければ強いほど、刀身に刻まれた文様が赤く光り、通常の武器ではあり得ない力を振るったという。昔、この指輪を持っていた女がいた。名はリリス。彼女は……人の“記憶”を読むことができた。記憶の奥にある、喜びや怒り、絶望まで――全部な。戦場で彼女が一振りすると、仲間の「希望」や「憎しみ」が光や炎となって敵を焼き払った。そりゃあもう、神話みたいなもんさ。だがな……感情ってのは、諸刃の剣だ。リリスは愛する者を失った。深い悲しみがヴィゼラに宿り、制御を失った。最後には、自分ごと呑み込んで……姿を消した。」
しばらく沈黙が流れた。
「…お前が触れた時だけ、指輪が……あの紅い光を灯した。」
スアリッドは指輪を差し出した。
「レイ、お前には感情がある。強い想いがある。だからこそ、ヴィゼラは応えた。だが忘れるな。お前が感情に呑まれたとき、この剣は――牙を剥くかもしれん。」




