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第一話:本物になる前
「はあぁーあ。ほんっっっっと人生ってつまんないの。
せめて魔法の一つや二つくらい使える世界線に生まれたかったわ。
ここら辺に魔素かなんか浮いてないかなぁー。」
と何もない空間を指してはため息を吐いているこの少女は 遑空奈 。
所謂、ただの女子高校生である。
彼女は物心ついた時から中二病を患っていた。
中二病といえば、大抵の人が「ウウッ……。みッ、右手が疼くぜッ……。」的なのを想像するかもしれない。
しかし、彼女はそうではなく、純粋に魔法が使いたい。あわよくばチート級の強さが欲しい!といった類であった。
そんな彼女の妄想が、現実的に考えて叶うわけもなく。
ひたすら手のひらに力を集めてもダメで。どこぞの映画で仕入れた呪文を唱えてみてもダメで。
「異世界転生系って、“事故って気付いたらいつの間にか___!?”みたいなのよくあるよなぁ。
あれ通じるのかな。
通じるならぜひとも事故らせていただきたい所存ですけれどもね、ええ。」
なんて独り言をぶつくさぶつくさ言い、そろそろお風呂から出ようとした。
___が。
ツルンッ
遑空奈。16歳。
短い人生は、そこで途絶えた。