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零の愛寵  作者: Lilly
51/57

49話

「じゃあ続きから」

 泣き止んだ零は、一呼吸置いてからそう言った。



◆◆◆



「殺したってどういうこと?」

 瑞花の声がする。男の子は口を開く。

「ボクが殺した」

「だ、だから、誰を?」

 男の子は無言で家の中を指さした。

「私の家族を、殺したの?」

「うん。・・・・・・ごめんなさい」

 その謝罪には感情がこもっていないような気がした。

「こ、殺さないよ」

「なんで?」

 男の子は虚ろなまなざしで見つめてくる。有心は言葉にしにくい恐怖を抱いた。

「と、とりあえず・・・あの、その・・・」

「警察に通報したら?」

「そんなことしたら、キミが殺したって警察に伝わっちゃう」

「ボクは、捕まるべき」

「・・・絶対違う」

「なんで?」

 瑞花は家の中を見た。何も言わぬ死体になった家族を。

「この人たちのこと、ずっと嫌いだった。私のこの、紅い目のせいで捨てられそうになった。だったら私がこの人たちを捨てても、いいんじゃないかな」

「え?」

 男の子の混乱したような声。瑞花は男の子を見て、言った。


「ありがとう」



◇◇◇



 場面が切り替わる。

 どうやら瑞花は走っているようだ。隣には瑞花と手をつなぎ走っている男の子。

「ど、どこに行くの」

 男の子が聞く。

「どこに行く?」

 瑞花が言う。

「ボ、ボク、いい場所知ってる」

「ほんとに?」

「うん」

 すると男の子は走っていた足を止め、右側を指さした。

「ここ」

「え、ここ?」

 そこは古びたバー。子供とは縁もゆかりも無い場所のはずだ。

「いいの?」

 瑞花が聞く。男の子は頷いた。

 男の子はドアの前に立ち、ドアを開ける。

「入って」

 そう言われ、瑞花も入った。


「よー、ボウズ」

「こんにちは、おじさん」

 中にいたのはグレーのズボンを履き、ストライプのシャツの上からベストを羽織った高齢な男性だった。印象的なのは中折れハットだろうか。

「おじさんじゃねぇ、お兄さんだ」

 少ししわがれた声も年齢とマッチしていた。

「んで、ボウズ。そこのお嬢さんは誰だい?ずいぶんと血まみれじゃねぇか」

「この人は・・・ボクが殺した家族の娘?」

「は?何で一緒にいるんだよ」

「私が、一緒に逃げることを望んだんです。家族のせいで、私は・・・嫌な思いをしてきました。捨てられそうにもなりました。そこを、この子が救ってくれたんです」

「だから、逃げてきたのか?」

「はい」

「警察には?」

「通報してません」

 数秒間、高齢な男性は瑞花を見た。どこか値踏みをするような視線だったが、薄暗い感情は瞳にこもっていなかった。

「おじさん、匿ってもらえる?」

 男の子が聞くと、高齢な男性は快活に笑った。

「もちろんだ」

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