49話
「じゃあ続きから」
泣き止んだ零は、一呼吸置いてからそう言った。
◆◆◆
「殺したってどういうこと?」
瑞花の声がする。男の子は口を開く。
「ボクが殺した」
「だ、だから、誰を?」
男の子は無言で家の中を指さした。
「私の家族を、殺したの?」
「うん。・・・・・・ごめんなさい」
その謝罪には感情がこもっていないような気がした。
「こ、殺さないよ」
「なんで?」
男の子は虚ろなまなざしで見つめてくる。有心は言葉にしにくい恐怖を抱いた。
「と、とりあえず・・・あの、その・・・」
「警察に通報したら?」
「そんなことしたら、キミが殺したって警察に伝わっちゃう」
「ボクは、捕まるべき」
「・・・絶対違う」
「なんで?」
瑞花は家の中を見た。何も言わぬ死体になった家族を。
「この人たちのこと、ずっと嫌いだった。私のこの、紅い目のせいで捨てられそうになった。だったら私がこの人たちを捨てても、いいんじゃないかな」
「え?」
男の子の混乱したような声。瑞花は男の子を見て、言った。
「ありがとう」
◇◇◇
場面が切り替わる。
どうやら瑞花は走っているようだ。隣には瑞花と手をつなぎ走っている男の子。
「ど、どこに行くの」
男の子が聞く。
「どこに行く?」
瑞花が言う。
「ボ、ボク、いい場所知ってる」
「ほんとに?」
「うん」
すると男の子は走っていた足を止め、右側を指さした。
「ここ」
「え、ここ?」
そこは古びたバー。子供とは縁もゆかりも無い場所のはずだ。
「いいの?」
瑞花が聞く。男の子は頷いた。
男の子はドアの前に立ち、ドアを開ける。
「入って」
そう言われ、瑞花も入った。
「よー、ボウズ」
「こんにちは、おじさん」
中にいたのはグレーのズボンを履き、ストライプのシャツの上からベストを羽織った高齢な男性だった。印象的なのは中折れハットだろうか。
「おじさんじゃねぇ、お兄さんだ」
少ししわがれた声も年齢とマッチしていた。
「んで、ボウズ。そこのお嬢さんは誰だい?ずいぶんと血まみれじゃねぇか」
「この人は・・・ボクが殺した家族の娘?」
「は?何で一緒にいるんだよ」
「私が、一緒に逃げることを望んだんです。家族のせいで、私は・・・嫌な思いをしてきました。捨てられそうにもなりました。そこを、この子が救ってくれたんです」
「だから、逃げてきたのか?」
「はい」
「警察には?」
「通報してません」
数秒間、高齢な男性は瑞花を見た。どこか値踏みをするような視線だったが、薄暗い感情は瞳にこもっていなかった。
「おじさん、匿ってもらえる?」
男の子が聞くと、高齢な男性は快活に笑った。
「もちろんだ」




