47話
一瞬表情が固まる両親と祖父母。瑞花はそれを眺めながら、明るく振る舞う。
「お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、瑞花のこと、好き?」
瑞花の心の声は聞こえない。
「ええ、もちろんよ」
微笑む母。
「もちろんだとも」
頭を撫でてくる父。
「瑞花ちゃん、どうしてそんなこと聞くの?」
訝しむ祖母。
「・・・」
無言を貫く祖父。
「だって、今日は瑞花の誕生日だもん。それぐらい聞いたっていいでしょ?」
「そうね、瑞花」
頷く母。
すると焦点が合わなくなりだした。どこを見ても視界がぐるぐると回り、定まらない。それでも瑞花は動き続ける。操り人形のように。
そして次の場面。
ベッドから起き上がり、瑞花はリビングに向かう。すると、いきなり駆け足になった。急いでリビングの扉を開けると、瑞花の息をのむ音が聞こえた。
「お父さん、お母さん」
呟く瑞花。
そこにはー
血だらけで息絶えている両親の骸があった。
そして視線をさらに奥に移動させると、赤茶色の2つの大きな物体が転がっていた。
慎重に近づき、瑞花は悲鳴をあげる。
赤茶色の2つの大きな物体は祖父母の骸だった。
皮が無惨にも剥がされ、肉が露わになっている。両親よりも酷い姿。
ーピンポーン
静寂を切り裂くチャイム。
「ひっ」
と小さく悲鳴をあげ、瑞花は尻もちをつく。ベチョという嫌な音が聞こえる。急いで手を見ると血がついていた。
瑞花は何度も深呼吸をする。そして勢いよく立ち上がると、ドアを開けた。
ドアの向こうには瑞花よりも小さな男の子が1人で佇んでいた。
「え・・・」
瑞花が呟く。
深淵のような瞳をした男の子が瑞花の目を覗き込む。
何も言えずにいると、男の子が口を開いた。
「ボクが殺した。お姉ちゃん、ボクを殺して」
◆◆◆
映像が途切れる。途切れるのと同時に零がガタッと倒れた。
「零!」
菊が叫ぶと零がうっすらと瞼を上げる。
「ごめん」
そう言い残すと完全に意識を手放した。
「僕が診てみるよ」
有心がそう言うと菊は零の隣を有心に譲る。
緑色の光が有心の掌から溢れ出し、零を包み込む。
数秒すると、零がゆっくりと目を開けた。
「有、心・・・?」
零が呟くと、有心は微笑む。
「体調はどう?」
微笑んだ有心に驚いているのか、零は目を見開く。
「大、丈夫」
「体に異常は特になかったよ。ただ、脳が疲れちゃってたのかな。強制シャットダウンしたみたい。だから、脳の疲れを取ってあげたよ」
有心の説明を聞いても驚いた様子の零に菊は首をかしげた。
「零?」
「どうして治したの」
「え?」
「殺してくれて、良かったのに」
顔を歪め、零は言う。
瞳に水滴を溜め込み、それ以上何も言えないように閉じた唇、必死に何かが溢れないように耐えてる零のいつもと違う姿。
ただ、その姿は陽一と初めて目が合った時の零と似ていた。
「零!!」
菊が叫んだ。




