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零の愛寵  作者: Lilly
43/57

41話

「それだけはダメ」

 怒りに染まった瞳で、零は陽一を見る。

「私の人格は何してもいい。でも、私以外の人格はダメ」

「分かってるよ」

 陽一はおどけたように肩をすくめる。

「じゃあさ、零ちゃん」

「零ちゃん?」

 零は陽一を睨みつける。

「うん、可愛いでしょ?」

「可愛さなんて求めてないけど・・・。それで?何」

「君の他の人格の名前と性格を教えてくれないかな」

「いいけど、でも見た方が早いんじゃない?」

「そんな簡単に入れ替われるの?」

「もちろん」

 零の即答に陽一は顎に指を当て考えだす。


「でも、まずは零ちゃんの口から聞きたいな。その子が生まれたエピソードとか、零ちゃんの主観を交えて」

「主観、ねぇ・・・。主観を交えられるかどうか分からないけど、できる限り頑張る」

 零の答えに陽一はニコッと笑い、菊と有心を見た。

「二人は出ていってくれないかな」

「え、どうして・・・」

 有心は陽一に聞く。

「二人には聞かせられない話もあるんじゃない?」

 陽一はニコッと笑い、零を見た。

「それに、僕たちだからこそ分かりあえるものもあると思うんだ」

「た、たとえば?」

 菊が尋ねる。不安そうな表情をしながら。

「ん〜そうだね。僕と彼女たちは演じてるってところかな」

 彼女"たち"。その一言は三つの人格のそれぞれを、まるで戸籍のある一人として扱っているように思えた。

 零やレイ、そしてこぼれを的確に言い表した言葉に有心はドキッとした。僕なんかよりも、零たちのことを理解しているのではないか・・・と。

「演じる・・・ね」

 零がボソリと呟く。

「演じてるつもりは、ないけどね」

「いいや、あるはずだよ」

 貼り付けたかのような陽一の笑顔。その笑顔の先にある無感情に気づいてしまえば、もう後戻りはできない。心が釘で刺されたように動けなくなる。

 陽一はふっと視線を零から外した。しかし、それは釘が引き抜かれただけで、心臓から血が、ドクドク出てくる。


 ガシッと、零は陽一の腕を掴んだ。

「零ちゃん・・・?」

 陽一が問いかける。

 有心は目を剥いた。

 菊は動けなくなった。

 なぜなら、零の様子がいつもと違うから。

 息は乱れ、手は震え、顔は苦しそうに歪められ、心臓は誰かに掴まれているかのように上手く動けず、肺は正常に呼吸することを忘れ、心は焦りと不安と憎しみと恐怖で支配され


 零は昔の記憶に縛られていた。

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