40話
「そこにあったのは、なんだったの?」
有心が質問する。
陽一は瞼を閉じ、意を決したように口を開く。
「まずはさ、場所を変えない?」
陽一の提案に有心が挙手をした。
「それなら、僕の家にしよう」
◆◆◆
有心の家に来た陽一、零、菊たち四人はリビングのソファに座る。
「さて、話の続きだよ」
陽一が意を決したように口を開くと全員が陽一の話に意識を向けた。
「僕が見たもの。それは異能力者の死体だ」
「異能力者の死体?」
零がオウム返しすると陽一は頷いた。
「そう。ボスの異能力を知ってる人はいる?」
陽一の問いかけに有心が手を上げる。
「確か、氷を操るんじゃない?明確には分からないけど、氷や雪を操れるって聞いた事あるよ」
それは零の記憶を聞いた時に判明した。
「有心、それはボスの異能力であっても、ボスの異能力じゃない」
「どうゆうこと?」
零が睨みつけるように言う。自分が倒された恨みはまだ消えていないようだ。
「ボスは自分で殺した異能力者の異能力を引き継ぐことができるんだ」
「え・・・」
菊が呆然としたように呟く。その異能力は、菊の異能力と酷似していた。
「菊さんの異能力は、死んだ異能力者の異能力を全員操れるんだっけ?」
「は、はい。えっと、あの・・・その、自分が殺していなくても、過去に死んでいれば操れます」
「それに複数操れる」
零が補足を加えると菊は頷いた。
「ボスは自分が殺した異能力者の異能力を一つだけ操れるんだ。だから、菊さんよりは弱い。異能力だけで言うなら」
「どう言うこと?」
零が睨む。
「ボスは自分の異能力の強さと弱さを熟知している。その点を加味すれば今の菊さんより強い」
「でも、勝機はある」
陽一は沈んだ空気を持ち上げるように言った。
「それが僕の異能力さ。僕の異能力は他の物体に人格を移動できる。また、人格をちょいといじって性格まで変えられる」
「だから、恐れられてたんだ」
零が興味なさげに呟く。
「うん。だって、みんな自分が壊れるのは嫌でしょ?」
「そうかな」
零は反論する。陽一の目をじっと見つめながら。
「私は構わないよ。人格が変わっても」
「ちょ、零」
菊が咎めるように名前を呼ぶ。
「だって、ないに等しい。人格なんて」
零は誰にも聞かせる気がないように、でも全員に聞こえるように話す。
「人に合わせて性格変えてるような人格なんて、本物の人格はどこにも存在しないのと同じ」
「じゃあ、いじっちゃおうかな!」
陽一は明るく言う。
「君以外の人格を」
しかし、その一言だけは暗く、黒く、闇のように言った。




