39話
「でも、零は死んでないから悲しんでも良くない?」
「悲しむ要素がないでしょ」
スパッと言い切った零に菊は嬉しそうに笑う。そして顔をクシャッと歪め、泣き出す。
「心配、したんだから・・・」
「ごめん」
「あのーお二人さん?」
陽一がそう声を掛けると零は菊をかばうようにして立つ。
「あなた、何が目的?」
「ん〜僕はね、君に興味があるんだよ」
そう言い陽一は零の前に立つ。
「なにしろ、三人いるなんて・・・初めてだ」
三人。そう聞いて零は目を見開く。
「な、んで・・・」
「名前は分からないけど、三人いるでしょ?君の中に」
陽一は零の心臓を指さした。
「・・・何が目的?」
「そうだね、君を知りたい」
「私を知りたい?」
「そう」
「あなた、ボスの味方だったりする?」
「いいや、違うよ」
そう言った陽一に、有心は掴みかかる。
「じゃあ!どうして・・・あの時、僕の前から離れたの?」
「有心・・・。ちゃんと、説明しなきゃだね」
憂い気なまつ毛は悲しそうにまばたきをする。
「僕はね、あの時・・・ボスに命を狙われてたんだ」
◆◆◆
あの頃の僕は何というか、感情をちゃんと知らなかった。
だから、僕はボスに悪用されてたと思う。そう、今の零みたいに。
でも、有心に出会って僕は感情を知ったんだ。それで、僕は愚かにもボスに口答えするようになった。
その頃からかな。ボスが僕を邪魔者扱いし始めたのは。
「ボス!どうして最近、僕に任務を与えてくれないのですか!」
ボスの執務室に行き、執務台をバンっ!と手で叩き、僕はそう叫ぶ。
「君に向かない任務が多いからだよ」
「違いますよね?僕が感情を持って、ボスに口答えするのが気に食わないんですよね!?」
僕がそう言うとボスは、笑っていた口角をさらに押し上げ、僕を見た。
ボスの瞳から逃れられなくなった僕はボスの瞳を見つめる。慈愛に満ちたていながら、所有欲のようなものさえ感じられ、もっとよく覗くと殺意も感じられた。殺意を覚え、僕はゾッとして目を逸らそうとしたが、逸らせなかった。逸らそうとした瞬間、ボスのさらに深いところが垣間見えたからだ。
暗くて、冷たくて、黒い。
それがボスの瞳の最深部のように思えた。
「大丈夫」
そう言い、まばたきをしたボスはようやく僕を解放する。
「陽一に向いてるなぁと思う仕事があったらちゃんと呼ぶよ。それまでは、良い子で待ってて」
◇◇◇
その帰り道、僕はエレベーターのボタンを3回ぐらい間違えてしまい、『8、2、8』の順番に押してしまった。
1階を押そうとして、どうして8階を押したのか。1階にしなくちゃと思って、どうして2階を押したのか。また間違えた正しいのを押そうとして、どうしてまた8階を押したのか。
未だに分からないが、押した瞬間エレベーターがスピードを上げ、下降をした。1階よりも下に。
「え!?」
たどり着いた場所を降りてみると、そこにはたくさんの死体が安置されていた。
「こ、この人たち・・・一体・・・・・・」




