38話
「約束してね、菊」
目の前の白髪の少女は、感情が欠落した瞳で私を見つけめ、感情がこもってない声色で私を呼ぶ。
「な、何を?」
少し怖くなって怯え腰で聞くと白髪の少女は私の頭を撫でた。
「私が死んでも悲しまないで」
「どうして?」
「菊は情報屋、私は殺し屋。殺し屋は、いつ死んでもおかしくない。私はその世界に足を踏み入れる。私は・・・死んでもいい。覚悟はできてる。ううん、覚悟なんてもの最初から、ない。でも、私は大丈夫。だけど私が死んだら菊が悲しがりそうだから」
感情がないのを必死にアピールしているような長文で零はそう告げた。
「わかった。約束。その代わり・・・何回か遊びに来てね?」
「もちろん」
◆◆◆
「ぜ、零!!」
叫ぶ菊の声は虚しく響き、陽一の耳に届いた。
「あーやっぱり。この子、零なんだ。大丈夫、殺してないよ。ちょーっと眠らせただけ」
「ね、眠されただけ・・・?」
菊は驚いたように言われた言葉をそのまま言った。
「ぜ、零が、そんな簡単に敗れるはずない!どうして?」
菊の疑問に陽一はなんてことのないように答える。
「そりゃあ、僕のほうが強いからじゃない?」
「・・・」
悔しそうに地面を睨みつけた菊は両手のひらを地面に置く。
「おいで」
そう、菊が呟くと黒くてぐるぐるした人型が何体も出現した。
「わ!なにこれ!」
有心が驚いているのに目もくれず、菊は陽一を見定める。
「ヨウイチヲ コロシテ」
菊がそう言うと、黒い人型は陽一に向かって行く。陽一の周囲を囲み、静止した黒い人型に菊は再度命令を出す。
「ゼロハ トリカエシテ
コロシタラ オマエラヲ ジゴクニ オトス」
『オマエラ』というのは、黒い人型のことだろうか。菊に、そんな力まであるのか。有心は疑問に思いながら、黒い人型を見た。
「ヤレ」
菊がそう言うと、黒い人型たちはそれぞれが違う行動をし始めた。
一人は地面を泥にし
一人は空を覆い
一人は無数の刀を取り出し
一人は増殖して陽一のさらに近くを取り囲む
「もしかして異能力者!?」
「私は・・・死者を呼び出せ、異能力者も呼び出せる」
「陽一!!」
「あ、有心。大丈夫。死ななきゃ、有心が助けてくれるでしょ?」
「そうだけ、ど・・・」
そう有心が逡巡してると黒い人型の一つが零を菊のもとに連れて行った。
そんな零を愛おしそうに菊は撫で、満足げに笑う。
「生きてる・・・」
するとパチリと目を開けた零はガバリと起き上がり、周りを見渡す。そして、陽一が殺られそうななか、陽一のもとに走ろうとした。
「っ!?
ゼロヲ トメテ」
驚いた菊は急いで黒い人型にそう命じると、零を止めさせーられなかった。
踵を返した零は菊の頭を撫でる。
「落ち着いて。陽一を殺さないで。私は生きてるんだから」
息を吐き、零は菊に向かって言う。
「私が死んでも悲しまないでって言ったよね?」




