36話
「おーい、いるかー?」
零と有心は家を出て、少しだけ歩き、安そうなアパートの二階にたどり着いた。『二〇一』と書かれた扉の前で零はインターホンを使わずに、扉をひたすら叩く。これをノックなんて可愛らしいもので呼んじゃいけない。バンバンと、グーパンしている。
「いるなら返事しろー。お前が家を出ないことは知ってるんだよ」
とうとう扉に蹴りを入れた。
とてつもなく大きな音が鳴り、有心は心配そうに零を見る。
「ね、ねぇ零。そんなに乱暴したら駄目だ。きっと家にいないんだよ、帰ろう?」
「いるよ」
零はポケットにしまっているヘアピン形を変形させ、鍵穴に突っ込みガチャと小気味よい音を奏で、鍵を開けた。
「入るぞー」
ゴミの山をかき分け(足で蹴飛ばしながら)零は入ってく。有心は気後れしてしまい、外で棒立ちしてしまう。
「あ、有心は入んなくていいよ」
零の許可もあり、有心は待っていることにした。
「有心、入っきていいよ」
零に呼ばれ、有心は部屋に入る。先ほどは汚かった部屋が良い感じに歩けるようになっていた。(部屋の隅に目を向けるとゴミ袋が山のように積まれている)
「こいつが死者を呼び出せる異能力者。一応組織の人間だよ。ま、見ての通り引きこもりなんだけどね」
もぞもぞと布団をかぶりながら動く姿はまるで芋虫だ。そんな姿に零はため息を付きながら踏みつける。
「挨拶」
冷たく零が命令すると布団から死者を呼び出す異能力者は顔だけ出した。
白に近い金髪を顎のラインで切りそろえできるのかどうかわからないぐらいボサボサだが、きっとボブぐらいの長さ。年齢はわからないが・・・零とそう大差ないのではなかろうか。
「は、初めまして・・・こ、コードね、ネーム・・・菊」
「そーいうことだから、望月陽一さんを呼び出して」
「だ、だからできないって言ってるでしょ・・・」
「え、できない?」
有心が話しかけると菊は小さな悲鳴をあげ布団を被った。その菊に今度は軽めに蹴りを入れながら零は続きを急かす。
「私ができないってことは・・・その人、死んでないですよ」
布団にこもりながらゴモゴモっと菊は言った。
「でも、僕は、あの時・・・確かに陽一の亡骸を・・・」
「世の中、広いですから・・・身代わりとか、誰かの異能力でも、借りたんじゃ・・・ないですか?」
「つまり、有心。死体を誤魔化すのは簡単だってこと。そして、菊が呼び出せないなら生きてるよ、陽一さん」
零の話を聞かず、ブツブツと呟く有心の肩を掴み、零はハッキリと言い切る。
「望月陽一は生きてる」




