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零の愛寵  作者: Lilly
36/57

34話

「私は、ふざけてない」

 零は真剣な眼差しでこぼれを見る。

「どうして?今まで、ずっとわたしの言う事聞いてきたのに・・・どうして今更?」

 こぼれは揺らいだ瞳で零を見つめる。

「今更、感情が芽生えたの?」

「違う」

 少し、迷ったような目をしながら、告げる。

「ボスに、復讐したら・・・有心はどうなる?私たちは?今までボスのおかげで成り立っていた生活は?」

 心配そうに零はこぼれとレイを見る。

「私、今の生活を失いたくない。ようやく、ようやく得られた平穏を失うのだけは嫌」

「でも!」

 こぼれが反論する。

「でも、その平穏は零の犠牲あってのものでしょう?」

「私は別にいい」

「ワタシは良くない」

 レイも話し合いに加わる。

「人を殺したくない。できることなら、零お姉ちゃんにもこぼれお姉ちゃんにも、殺してほしくない。だから」


「復讐すべきなんだよ」


 レイは言う。


「人を殺さないために、ボスを殺そう」



◆◆◆



「駄目だ、見つからない」

 有心はルーズリーフを書かれた文字を見ながら、絶望する。

 零が寝てから、有心はこぼれだけでもボスに勝てる方法を模索した。

 その成果が、何十枚にも及ぶルーズリーフの束だ。

 しかし、こぼれの言霊の力の弱点を知っているボスを、言霊の力で制圧することは不可能に近い。そして、零が過去を話してくれたおかげでボスの異能力も判明した。それは大きな収穫だ。

 零の力を借りずに復讐しようとするのは、きっと有心のエゴだろう。それでも、探さずにはいられない。それはきっと、こぼれの言葉だ。

『わたしが殺す』

 零でもなく、レイでもなく、こぼれが殺すと言った。複数形にするわけでもなく、ただ一人で殺すと言ったこぼれを、支えたい。その気持ちは下僕になったからではなく、有心の本心だ。

「どうにかして探さないと・・・」



◆◆◆



「じゃあ、分かった」

 零たちの精神世界。そこでこぼれは告げる。

「異能力で決めよう。わたしが勝ったらボスに復讐する。零が勝ったらボスに復讐しない」

「いいよ」

「レイはどうする?」

 こぼれがレイを見る。

「ワタシは・・・審判やるよ」

「じゃあ決まり」

 こぼれが満面の笑みで言う。


「えっと、殺すのはなし。無理だと思ったらすぐに降参と言うこと」

 思いつくままにルールを述べていくこぼれ。

「異能力は制限なしに使っていい」

「分かった」

「それじゃあレイ、よろしく」

「うん!二人とも頑張ってね」

 レイは大きく息を吸い、二人の戦いを開始する合図を言う。


「開始っっっ!!!」



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