34話
「私は、ふざけてない」
零は真剣な眼差しでこぼれを見る。
「どうして?今まで、ずっとわたしの言う事聞いてきたのに・・・どうして今更?」
こぼれは揺らいだ瞳で零を見つめる。
「今更、感情が芽生えたの?」
「違う」
少し、迷ったような目をしながら、告げる。
「ボスに、復讐したら・・・有心はどうなる?私たちは?今までボスのおかげで成り立っていた生活は?」
心配そうに零はこぼれとレイを見る。
「私、今の生活を失いたくない。ようやく、ようやく得られた平穏を失うのだけは嫌」
「でも!」
こぼれが反論する。
「でも、その平穏は零の犠牲あってのものでしょう?」
「私は別にいい」
「ワタシは良くない」
レイも話し合いに加わる。
「人を殺したくない。できることなら、零お姉ちゃんにもこぼれお姉ちゃんにも、殺してほしくない。だから」
「復讐すべきなんだよ」
レイは言う。
「人を殺さないために、ボスを殺そう」
◆◆◆
「駄目だ、見つからない」
有心はルーズリーフを書かれた文字を見ながら、絶望する。
零が寝てから、有心はこぼれだけでもボスに勝てる方法を模索した。
その成果が、何十枚にも及ぶルーズリーフの束だ。
しかし、こぼれの言霊の力の弱点を知っているボスを、言霊の力で制圧することは不可能に近い。そして、零が過去を話してくれたおかげでボスの異能力も判明した。それは大きな収穫だ。
零の力を借りずに復讐しようとするのは、きっと有心のエゴだろう。それでも、探さずにはいられない。それはきっと、こぼれの言葉だ。
『わたしが殺す』
零でもなく、レイでもなく、こぼれが殺すと言った。複数形にするわけでもなく、ただ一人で殺すと言ったこぼれを、支えたい。その気持ちは下僕になったからではなく、有心の本心だ。
「どうにかして探さないと・・・」
◆◆◆
「じゃあ、分かった」
零たちの精神世界。そこでこぼれは告げる。
「異能力で決めよう。わたしが勝ったらボスに復讐する。零が勝ったらボスに復讐しない」
「いいよ」
「レイはどうする?」
こぼれがレイを見る。
「ワタシは・・・審判やるよ」
「じゃあ決まり」
こぼれが満面の笑みで言う。
「えっと、殺すのはなし。無理だと思ったらすぐに降参と言うこと」
思いつくままにルールを述べていくこぼれ。
「異能力は制限なしに使っていい」
「分かった」
「それじゃあレイ、よろしく」
「うん!二人とも頑張ってね」
レイは大きく息を吸い、二人の戦いを開始する合図を言う。
「開始っっっ!!!」




