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零の愛寵  作者: Lilly
33/57

31話

「それで・・・その・・・」

 ボスの執務室から帰ってきた有心とこぼれ。しかし、有心の目の前にいるのは・・・。

「どうして零?」

「疲れたって言ってた」

「こぼれさんが?」

「うん」

 家のキッチンに立ち、お湯を沸かしながら零は答える。

「う〜ん・・・ほら、異能力って使えば使うだけ、跳ね返ってくるでしょ。この相手を思い通りに操るー言霊の力は、強い言葉を言えば言うだけ負担が大きい」

 茶葉を入れ、沸騰したお湯を入れる。すると、部屋に紅茶の匂いが充満し、有心は口角を上げた。

「だから、寝るって」

「次はいつ頃起きる?」

「明日とかじゃない?」

 ミルクも砂糖も入れずに、ティーカップを持って零はソファに座る。

「そっか・・・。でも、ボス言ってた」

「何を?」

「ボスを倒せるのは、零だけだって」

 紅茶を一口飲み、ふぅっと息を吐いて外を眺める。

「ま、こぼれ姉さんには言霊しか使えないからね」

 零は紅茶に映る、自分の目を見る。

「言霊は目を逸らせば力が利かない。ボスはそのことに昔から気づいてた」


「ねぇ、零」


 零の目を見るように座りなおした有心は疑問をぶつける。

「零は・・・ボスに、何されたの?」

「何も」

 ティーカップをソーサーに戻し、零は目を瞑る。

「何も、されてない」

「じゃあ、なんでボスに復讐しようとするの?」

「こぼれ姉さんに聞いて」

「ねぇ零、こぼれさんはこの前ボスと初対面だったんだよ?なのに、こぼれさんがあそこまで怒るってことは、零が何かされたんでしょ?ボスに」

「何もされてない。こぼれ姉さんが勝手に怒ってるだけ」

「そんなはずない。ねぇ、教えてよ。零」

「何もない」

「ねぇ・・・零」


「だからっ!!!」


 ここに来て初めて大声を出した零は肩を震わせながら、答える。

「何も知らない!何もされてない!私は!何も・・・」

 息を切らしながら、零は感情のこもった目で有心を見る。

「何も、されてない」

 それが、嘘だというのが有心には何故か分かった。


「嘘」


 真実を知りたい有心は残酷に暴く。

「嘘だよ、零」

「違う」

「僕、知りたいんだよ。零が何をされたのか」

「私は・・・」

「零の感情、初めて見た」

 有心は優しく語る。

「零も感情あるんだね。ないとか言ってたのに」

「・・・」

「零にそこまでさせたボスは、何をしたのかな」

「・・・」

「こぼれさんに聞けば、教えてくれる?」

「・・・」

「教え、ない」

 絞り出した零の声は、十八歳に見合ってて。

「こぼれ、姉さんは、何も教えない」


「私、から、教える」


 ポツリポツリと呟く零が、小さく見えて。

 有心は、ギュッと零を抱きしめた。

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