26話
「ねぇセンセ。ワタシ、こぼれお姉ちゃんから聞いたの」
そう優しく微笑むレイは落ち着いた様子で話し出す。零と有心が話していた間、レイとこぼれに起きた出来事について。
「レイ、わたしの目的は復讐だってことを伝えておくね」
こぼれが出してくれたオレンジジュースを飲みながら、レイはこぼれを見る。
「そして、この体はもともとわたしの物だったの」
こぼれが紅茶を飲んでいると、こぼれの背後にとても優しそうな男女が現れた。特別豪華な服を着ておらず、大量生産されているであろうブランドの服を着ている。
「わたしはごく一般的な家庭に生まれ」
こぼれの話す内容に合わせて、男女の間に黒髪赤目の少女が現れる。それがこぼれなのだと、レイは容易に推測できた。
「わたしはそこで十歳まで過ごした。でも、ある日いきなり事故で両親が死んだ」
こぼれが悲しげな表情をするとともに、男女ーこぼれの両親は消え、黒い服に身を包み悲しげな表情をしたこぼれに変化した。
「その後、わたしを引き取ってくれる身内はおらず、わたしは児童養護施設に預けられた。誰とも仲良くできず、あまり楽しくなかったけれど・・・まぁ、今思えば良い生活だったと思う。そして、一人の科学者がわたしを引き取った」
いきなり声のトーンを落としたこぼれの隣にメガネをかけた薄気味悪い科学者が現れる。小さい時のこぼれの隣ではなく、今のこぼれの隣に現れたのは、なぜだろうか。
科学者を見上げ、こぼれは恨みのこもった目で睨む。
「わたしはコイツのせいで何もかもを失った。両親が異能力者だったことも、不慮の事故だと思われた両親の死は強い異能力者であった両親を殺すためにコイツが仕組んだことも教えられた。そしてコイツの目的は、わたしに新たな異能力を持たせること」
科学者が手を伸ばし、こぼれの頬を持ち上げる。
それと同時に喪服に身を包んだ小さい時のこぼれは白い実験服に変わった。
「毎日毎日奇妙な薬を体に打ち込まれ、どれだけ変わったのか確かめるために行われる実験。異能力は、使用者に危険が迫らない限り、現れることはない。そのせいで痛めつけられる体。嫌になった時・・・彼女が助けに来てくれた」
小さなこぼれの隣に、黒い髪で水色の瞳を持った零が現れた。
「体を預けて。そう言ってくれた零にわたしは甘えることにした」
小さなこぼれは、ふっと消え零だけが残った。
「そしてその零は、実験の途中で闇の異能力に目覚め・・・コイツを殺した」
零が闇で包丁を作り出し、科学者の元へ駆け出した零は科学者の背後から突き刺した。
血が、こぼれに降りかかる。その血を、まるで甘美な果物のように美味しそうにペロリと舐めたこぼれは満足そうに微笑む。
「それからは全部零が引き受けてくれた」
「でも」
レイがこぼれの説明に割って入る。
「こぼれお姉ちゃんの目的は復讐なんでしょ?零を生み出した科学者はもう死んでるよね?」
「ええ、そう。でも、わたしはこの後復讐に目覚めるのよ?」




