21話
「うん、こぼれ姉さん」
零はこぼれにぎゅっと抱きつき、自分の中にある全ての感情をこぼれに渡した。
「よしよし」
その間もこぼれは零の背中を撫で続けた。
感情をすべて渡しきった後、零はかくんと倒れた。
「今日は闇の力をたくさん使ったの?」
零はこくんと頷く。
「使いすぎは注意だよってあれほど言ってるじゃん。なんで使うの?」
「ちょっと・・・楽しくって」
「楽しい・・・。そんな感情を抱いたの?すっごいね、零」
こぼれは頬を紅潮させて喜ぶ。
「でも、そんな感情は・・・いらない。私には感情はいらない」
「そうだね。零がいらないって言うなら、いらないんだね。わたしには、分かる。でも、もっと自分の体も大事にして?零だけの体じゃないんだから」
こぼれは小さい体ながら、零を撫で撫でしまくる。
「うん、分かってる。この体は・・・」
「零、どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
「でも、仕方ないよね。無理しちゃうのも分かる。わたしには分かるよ。でもね、だめ」
こぼれは、息を吸って吐いた。
「だめだよ。零。それだけは。駄目なはず」
こぼれは零の髪の匂いを嗅ぐように、顔をくっつけ、そして、耳元に口を持っていった。
「その闇は、わたしにも使えないんだから。目の力をいくらでも使うのは、いいよ?目の力は、わたしの力なんだから。わたしの意思で、制御だってなんだってできる。だけど、だめ。でも、その闇は・・・その闇の力は、わたしには扱えない」
こぼれは悲しげに、つぶやく。
「闇は、本来・・・零に与えられるはずのなかった力なんだから。使うだけで零に負荷がかかるの。分かる?」
零は何も言わない。
「どうして・・・こんな目に合うんだろね。零も、わたしも」
すっと声を低くし、こぼれは恨みがましそうに言う。
「こぼれ、姉さん?」
「おかしいよね。あいつらが、わたしの人格を体の奥深くに封印して、零を勝手に作り出して・・・。挙句の果てには、レイすら作り出すなんてさ・・・許せない」
「こぼれ姉さん、落ち着いて」
「許せない・・・・。許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない・・・!!!!」
言いながら、こぼれの体はどんどん大きくなり、十八歳の見た目になった。
「こぼれ、姉さん・・・」
「零のおかげで、わたしも自由になれてきた。もう、いいんじゃない?」
どこか縋るような声。こぼれは恨みがましさと悲しさ、他にもいろいろな感情がごちゃ混ぜになった目で零に提案した。
「・・・レイにも、聞こう?」
抑揚がなく、感情の読めない声で、零はこぼれに提案した。
「分かった」
こぼれは目を閉じ、意を決したように目を開いた。こぼれの目は色は変わらないままだが、怪しく光り輝く。
【レイ、こっちに来い】
その力は、零よりも強い。
強く、レイに命令する。
レイをこの精神世界に引きずり込むために。




