19話
有心は一度話を打ち切り、零を見た。
「続きはないの?」
零は有心に話の続きを催促してくる。
「あるけど、知りたいの?ここから先は有料コンテンツだよ」
「は?なにそれ」
冷めた目で、零は見つめてくる。
続きを催促してくるのは、零の意思なのか、それとも義務感からか。いや、もしかしたら義務感すらないかもしれない。それぐらいあやふやだった。
初めて会ったときのレイに似ていると有心は思った。しかし、レイと完璧に同じというわけではない。それは過去があるか、ないかの違いなのか。それとも、単に零になにか問題があるのか。
「零のことを教えてくれたら、ここから先のことも話すよ」
有心が提案した内容を、零はどう受け取ったのか。
「教えない」
キッパリとそう言った。
「別に私のことを話して有心の過去を知ろうとか思ってない。私は、誰にも過去を教えない」
有心が、自分の過去を話している間、レイは相変わらず白い空間にいた。
しかし、レイはこの空間を探索している間に見覚えがあることに気づいた。
「ここ、零と初めて会ったときと同じ場所かな・・・?と、なると何でもできるのかな」
レイは頭の中に、椅子とお茶とお菓子を浮かべた。
すると目の前に思い浮かべた通りのものが出てきた。
「わぁ、美味しそう」
有心は様々なお菓子をレイのもとに買ってくる。最初はよく理解できなかったレイだったが、食べていくうちに味を理解していき、いつしか洋菓子のような甘さが大好きになっていた。
「多分、ワタシがここにいるってことは零と入れ替わったことだよね?じゃあ、ここで楽しく過ごしてよ〜」
目の前に現れたケーキを食べようとしたレイだったが、ふと気づき椅子からふかふかクッションに変えた。
「これでオッケー。いただきまーす」
食べようとした瞬間。
「ねぇ・・・それ、ちょ〜だい?」
黒髪で赤色の目をした十歳ぐらいの少女が現れた。
黒を塗り重ねたような黒い髪、ガーネットのように深く紅い瞳、黒地に赤いラインが映えたゴシック服を身にまとった姿は、とても愛くるしい。
ニパ〜と笑う姿は年相応のようでいて、挙動やコロコロ変わる表情は可愛らしかった。
「食べたいの?いいよ」
レイはケーキを差し出す。
「ありがとう」
黒髪の少女はお皿を受け取り、フォークも使わずに手で食べ始めた。お嬢様然としているのに、食べ方は幼稚な姿に、レイは困惑する。
「フォーク、使わないの?」
「ふぉーく?」
黒髪の少女は食べていた手を文字通り止め、レイを見上げてきた。
「それ、ふぉーくって言うんだ。知らなかった」
「使い方、分かる?」
「ううん、わかんない」
「じゃあ、教えてあげるよ。その前に、君の名前はなに?」
「名前?」
黒髪の少女はこてんと首を傾げ、考え込むような素振りをした。
「こぼれ」
「こぼれ?」
「うん」
こぼれと名乗った少女はフォークをレイに渡してきた。
「ふぉーくの使い方、教えて?」
「うん、いいよ」




