18話
1つずつ、僕は裏社会のことを陽一を通して知っていった。
そしていつの日からか、僕は陽一の仕事を手伝うようになった。
「なぁ、俺の仕事を手伝ってくれない?最近、忙しくってさぁ」
そう陽一は言った。陽一には異能力があるらしいけど、どうやら戦闘向きではないようだ。
「いいけど、僕に異能力はないよ?」
「うん、それでいいから」
陽一は二カッと笑い承諾した。
仕事ってなんだろう。人を、殺すのだろうか。
僕の思考は、その日の夜になるまで続いた。
人殺しは嫌だ。でも、僕の家系は代々そういう家だって、陽一に教えられた。なら、人を殺しても良いのか?家が人を殺すことを生業にしているから、そんな理由で、殺して良いのか?一体どんな理由なら、人を殺しても良いんだよ・・・。
「あ、いたいた〜」
陽一が僕を呼んだ。
「陽一、遅いよ・・・」
そう言って、僕は下げていた視線を陽一に向けた。
しかし、僕はそれ以外、何もできなかった。なぜなら、陽一の頬には血が、ついていたから。
「な、なんだよ、その血」
「え?ついてた?」
いつもどおりの笑顔のまま、異様な血が纏わりついた陽一に、僕はゾッとする。
「ごめんごめん、怖がらせちゃったよね。まぁとりあえず、こっち来てよ」
陽一に手を引かれ、僕は裏路地のような場所を進んでいった。
当時の僕は、まだ、血を見るだけで気持ち悪くなっていた。陽一から見れば、人殺しを生業とする家の人間とは思えなかっただろう。
路地を抜け、開けた道を進んでいると、辺りには怪我をした人間がたくさんいた。
「ねぇ、陽一・・・どこに、向かってるの?」
「ん〜?さっきまで俺が仕事をしていたところ、かな」
陽一は変わらない笑顔で、突き進む。すると、目の前に男の人が現れた。
「君たち・・・良い服着てるね」
「あげないよ、おじさん」
陽一の知り合いなのだろうか・・・?
「どうしてだい、年長者は敬えよ」
「俺はね、敬いたい年長者だけ敬うって決めてるんだ。そしておっさん、俺・・・おっさんのことは敬えないな。それに、お金がないから医者のもとに行けないような雑魚なんて、ここで死んだほうが社会貢献になるよ」
陽一は明らかに、僕たちより年上の男の人を雑魚と呼んだ。それだけで、男の人は顔色を変えた。
「あ?小僧、コードネームは?」
「陽」
その単語を聞いただけで、周りにいる人全員が悲鳴を上げた。それぞれ、小さな悲鳴だ。だけど、その悲鳴は集合して、大きなものとなり、陽一に向けられた。
「ねぇ、おじさん。俺、急いでるんだ。どいてくれない?」
ゾワッとした。当時の僕には、それぐらいしか表現できないが、とにかくゾワッとした。今思えば、それは殺気だと分かる。
「・・・ああ」
「病院代も稼げないような雑魚だけど、物わかりの良さはあるんだね」
陽一は持ち前の笑顔で、そう罵ってから、また走り出した。
走った末に着いた場所は、血の匂いが充満していた。
「ここで、さっき大勢の人を殺したんだけど・・・後片付けが面倒でね。手伝ってほしいんだ」
「う、うん・・・」
正直言って、視界に広がる赤に、僕はひどく気持ち悪くなっていたし、息を吸うたびに肺の中に広がる血の匂いが、僕の吐き気を募らせた。
その二つの相乗効果で、僕は見事なまでに気絶した。




