16話
「魅せられるって具体的に、どんな感じになるんだ?」
「精神操作に近い感じ。相手が私の思い通りになるし、私のことが好きになる」
お茶を飲みきったのか、零はさらなるお茶を要求した。
「え、お茶欲しいの?」
「美味しいから欲しい。このお茶、好き」
「でも、感情がないなら好きとかなくないか?」
有心が渋ると、零の目が紅く染まった。
【お茶ほしい】
「うん、分かった」
その紅い目に見つめられながら、零がお茶を欲しがると有心から目の光が消え、すくっと立ち上がった有心はお茶をいれに行った。
零は目をいつもの色に戻し、有心に話しかける。
「ね?私の思い通りになったでしょ?」
「あ・・・」
はたと我に返った有心はくるっと後ろを振り返り、零を見つめた。
「今のが、零の異能力?」
「相手の意志を変え、相手を文字通り“零”にする。空っぽにするから、私のコードネームは零なの」
「え、そうなんだ」
「今考えた」
「・・・」
有心は微妙な顔をしながら、新しいお茶を持ってきた。
「零も冗談言うんだな」
「意外?」
「そうだね、意外。でも、僕の勝手な考えを押し付けちゃいけないだろ?」
「ふぅん、変なこと言うんだね」
零は窓の外の景色を見た。
「なぁ、零」
有心が零を呼ぶ。零は窓の外から視線を移動し、有心を見た。
「なに?」
「君は、いつから・・・この業界に足を踏み入れたの?」
零は首を傾げる。言っている意味がわからないのか、それとも言いたくないのか。有心には見当がつかなかった。
「有心は?」
「僕は、十五歳のときかな。今から七年前」
「じゃあ、七年前に異能力が発現したってこと?」
この業界に足を踏み入れるには、異能力が絶対条件である。
「いや、そうじゃない」
異能力を持っていないとこの業界、つまり裏社会の存在を知ることすら不可能であることを知っている零は、さらに首を傾げた。
「じゃあどうやって、この世界に足を踏み入れたの?」
「友人が、異能力に目覚めたんだ」
零はますます首を傾げた。零には感情がないため、何かを思考するということをしない。なので、額縁通りにしか言葉を受け取らないところがある。
「友人が異能力に目覚めても、裏社会に入れるわけない」
「そうだね、でも僕は違ったんだ。なんというか、その・・・常識と」
「意味が分からない」
零ははたと、何かを思いついたように目を見開いた。
「有心」
そう、呼びかけると零は目を紅く染めた。
「何?」
【教えて、有心の過去】
有心が危ないと思ったときには、もう遅く、有心の口は己の過去を語るために、言葉を紡ぎ出した。
その頃、レイは真っ白空間にいた。零と初めて話したときにいた場所だ。
レイはぐるぐるとあたりを見回し、少し探索をし始めた。しかし、どこへ行っても白い空間で進んだ感覚も戻った感覚もない。ずっとそこに留まっているような錯覚に陥る。
「どうして、誰もいないの・・・!?センセ・・・!!」
白いだけの空間はレイの不安を煽るばかり。
助けを求めても誰も来ない。




