15話
「私に殺されて、幸せ?」
かすれた声で、零は疑問をあらわにする。
「ああ」
「死ぬのに?幸せ?」
零は一歩後ずさった。
「私に殺されて幸せといったのは、有心が初めて」
淡々と事実を述べる零。
すっと視線を下げ、零は呟いた。
「私に有心は殺せない。でも、有心も私を殺せない」
「ああ、そうだね」
有心はより一層喜んでいるような声を出した。
「だけど、私は何かあれば有心だって殺せる」
「その場合、レイは悲しむし、ボスに怒られるんじゃないのかな?」
「ボスは、私のことも有心のことも、どうでもいいと思ってる」
零は下を向いた。
どこかさみしげに。
「零」
有心は零の名前を呼ぶ。闇でできた刀を意図的に握り、手から血を流しながら。
「なんで、怪我する」
「そうだね、でも僕は治癒能力を持っているから大丈夫」
現に、有心の手は治っては血を流し、治っては血を流しを繰り返していた。
「そんなの、無限地獄・・・」
「それでも良いんだ。零、君のことを知れるなら」
「え?」
「だって、おかしいだろう?レイは零が過去を失ったから現れたはずなのに、零は存在しているし、レイも存在している」
「・・・」
沈黙を貫いた零は力を消し、有心の目を見た。
睨めつけるように。
「何か、気に触ることでもあったかな」
「何も」
「じゃあ、なんで睨むの?」
「睨んでない。真顔だと睨んでいるように感じられるだけ」
「そっか」
有心は気を取り直して、立ち上がる。
「ここは廊下だし、リビングにでも行こうか」
「さて、話してもらおうか」
有心は温かいお茶を出し、零に話しかける。
「簡単な話。レイが勘違いしていただけ」
「勘違い?」
「だって、レイ言ってたでしょ。推測って」
有心は零の隣に座り、初めて会った日を思い出す。
「そうだね、言ってた」
「レイが自分の過去を消したと思っていた異能力者は、過去を消す異能力じゃなくて、人格を増やす異能力だったってだけ」
「だから、レイが生まれた」
「そう」
零はお茶を飲む。
「たったそれだけ。だから人の心を知れば過去を取り戻せるっていうのは嘘」
「でも、その記憶はレイの記憶だろう?」
「うん」
「じゃあ、なんでー」
「異能力ってさ、一人にひとつじゃないって知ってた?」
突如切り出された話に有心は困惑する。
「そんな話は聞いたことない」
「だろうね」
零は無表情なまま有心を見つめる。
「だって、私だけだもん。二つの異能力を持つのは」
「異能力が、二つ・・・!?」
「そう」
次第に零の目が熱く光りだした。
「零、君の目・・・」
赤く、紅く染まった零の目に有心は驚きを隠しきれない。
零がすっと瞼を閉じ、また開けたときには目はいつもの水色に戻っていた。
「これ使うと疲れるんだよね」
「疲れっていうのは、感情じゃないの?」
有心はふと湧いた疑問を零にぶつけた。
「疲れっていうのは感情じゃない」
お茶を飲みながら、零は疲労を隠す。
「その紅い目は、どんな影響をもたらすんだ?」
「私が疲れる」
「そういうことじゃなくて」
零はため息をつきながら、またお茶を飲んだ。
「紅い目で見つめられた人は、私に魅せられる」
「魅せられる?」




