12話
チェントの首元を切れる。
そうレイが確信した瞬間、鎌の柄の部分でチェントはレイの攻撃を防いだ。
「お前、零だろう?なのに、なんでそんなに、とろいんだ?」
好戦的な目。
零よりも劣っている。そう突きつけられた気がして、レイは悔しかった。
ジブンの力量では、有心を守りきれないかも知れない。それがひどく怖くて、手が震える。
『あ〜もう、一旦私に変わって』
頼りがいがあり、安心できる声。しかし、感情のこもっていない。レイは安心して体を氷のような声の持ち主に預けた。
「あーあ、ほんっとにそんな鎌で私に勝てると思ってるの?」
どこか舐め腐ったような表情、絡みつくような視線。白い髪は艶やかに輝き、氷のような瞳はギラギラとしていた。
そう、そこには好戦的な殺し屋を演じている零が君臨した。
「鎌はさ!!」
大声で叫びながら零は一歩踏み出し、刀に変形させた闇で斬りかかる。
「刀に勝てないの!!」
チェントは鎌を一度消し、後ろに飛んで零の攻撃を避けた。
「ましてや、私よりも弱い三流殺し屋が、私に勝てるわけ無いでしょ」
「私はまだ・・・負けてないっ!!」
悔しげな声とともにチェントは百個の金属武器を操りだした。
「うわお。なるほど・・・チェント。イタリア語で百を意味する名。百個の武器を操るから、か・・・。いいね、燃えてきた」
ニヤッと零は笑い、一瞬でチェントとの間合いを詰めた。
「はっ!?」
チェントが零を認識したのは、零の刀がチェントの首を切ったとき。
零はふっと笑い、倒れたチェントを見下ろした。
「弱い弱い。百個の武器を手にしたって、自分の気が大きくなるだけで、強さは変わらない。あんたの敗因は、私を怒らせたこと」
「な・・・どう、いう・・・」
ゴホッと血を吐き出し、チェントは倒れた。
「レイ!?」
背後から大きな声がして、零が振り返れば有心が上半身を起こし、零を見ていた。しかし、有心は零のことをレイと思っているようだ。
だから、零はレイに演る。
「どうしたの?先生」
「チェントが来てから、安心しちゃって少し寝ちゃってた。何かあったの?」
そう言いながら、有心は視線を足元に落とした。
「って、チェント!?どうして・・・」
「先生を殺そうとしてたから」
「レイが、殺したの?」
「うん、私が殺した」
有心が零をじっと見つめる。零は有心の視線を軽く受け流して、有心を見た。
「チェント、治すの?」
「いや、治さない。ボスからも、用済みって言われてたんだ。だから、お掃除屋さんを呼ばなきゃ」
「そっか」
有心は零を注意深く観察する。
「レイ、お掃除屋さんが誰か、分かるの?」
「いや」
「ねぇ、ホントにレイ?」
「うん」
有心は尚、零を見続ける。
「零?」
「・・・え?」
有心が零の名前を呼んだ。
「先生?私が零になれるわけないじゃん」
「そうだけど・・・。でも、レイは僕のことを“先生”って呼ばない。なんか、チェントを呼ぶちょっと前から“センセ”って呼ぶようになった。それと、レイはそんなに素っ気なくない。最近、心を知っていったから、もう少し感情があるように見える」
「ふぅん、レイのことそんなに見てるんだ」
零はレイを演じることをやめた。




