11話
何事にも終わりはある。どんな人と仲良くなっても、死ぬまで一緒にいるというのはなかなかにない。それこそ、漫画やアニメの世界でない限り。また、大事な友人をこの手で看取ることも、そう多くはない。だが、有心はこの手で、一生を共にすると思っていた友人を看取った。
漫画やアニメの世界では、大事な友人を亡くす日は、決まって雨の日か晴れの日だろう。だが、そのときは曇りだった。この雲で友人の魂が行き止まって、体に帰ってきてくれないかと有心は感じていた。当時の有心は、まだ異能力が発現していなくて、その友人を治すことができなかった。
ぼんやりする視界に、白い何かが入ってきた。
「先生、大丈夫?もう夜の7時だけど」
「あ、あぁ・・・晩ごはんの時間だね。ごめん、今・・・起きれなくて」
かすれている声で、有心はレイに言う。
「先生、それ異能力の副作用なんだよね」
有心は頷くことしかできずに、目を閉じた。
「先生・・・いや、センセ」
真面目な面持ちでレイは続ける。
「ワタシのせいで、センセに無理させてごめん。誰か、他に頼れる人っている?その人、呼ぶから」
有心の頭の中に、同業者の顔が浮かんだ。
「この家の、隣りにいる人。同じ組織の人だから、頼っていいと思う。で、でも・・・警戒は、して。同じ組織の人ほど、信頼できない人は・・・いない」
「驚いた。センセってそういう考えするんだ」
「この組織に、足を踏み入れて・・・長いからね。けほっけほっ」
「ごめん、無理に話させて。呼んでくるから、待ってて」
レイは有心に布団をかけ、家を出た。
有心とレイは、組織が所有するマンションの角部屋に住んでいる。隣は一人しかいない。
レイは恐る恐るインターホンを鳴らそうとして、ふと思い至った。
「ねぇ、零」
『なに?』
「ここで、零に体を乗っ取ってもらうことってできる?」
『できるけど、色んな人と関わりを持たないと人の心を知れないんじゃない?』
「あ、そっか。じゃあ、頑張ってみる。何かあれば、いつでも言って」
『分かった』
レイはインターホンを鳴らした。
「・・・はい?」
警戒を込めた声が無機質なスピーカーから聞こえた。
「れ、レイです。あ、あの・・・えっと、センセ、有心センセが」
必死に要件を伝えようとするが、舌がうまく回らない。
しかし、ドタドタと部屋の中から音がして、勢いよく扉が開けられた。
「有心に何かあったの!?って、あんた・・・零?」
「ち、違います。レイです。と、とにかく有心先生が副作用で、倒れられてしまって」
「分かった。部屋、入ってもいい?」
「あ、はい」
部屋から出てきたのは、明るい茶髪の大人びた女性だった。
女性は部屋にズカズカと入り、あっという間に有心の部屋の扉を開けた。
「おい、大丈夫?」
「あ・・・チェント。来てくれたんだね」
「ええ。それにしても、無様ね。今すぐ殺してあげたくなるわ」
その物騒な言葉を皮切りに、チェントは手から大きな鎌を取り出し有心を切ろうとした。
「っ!?」
有心が殺されそうになっている。
レイには、チェントの動きが遅く感じられた。しかし、レイは焦ってしまいすぐに反撃できない。
『鎌は間合いに入ってしまえば強い。だから、小回りの効く武器にしろ』
しかし、零の冷静な声のおかげで、我に返り小回りの効く武器、つまり小さめのナイフを闇で作り出した。
一歩、大きく踏み出し、鎌の内側に入り込む。
レイに気づいたチェントは鎌を大きく振るい、レイの背中から串刺しにしようとした。
しかし、それを間一髪で避け、転がり込んだ姿勢からクラウチングスタートの姿勢へと素早く切り替え、足に全身の力を込め、飛びかかった。




