8話
己の周りにに広がるのは血の海で
艷やかな黒い髪は白い髪に変わり
それは異能が始めて現れた合図で
それまであった感情が嘘のように
嘘の感情は消えてなくなっていく
消えた先に残るのは本物の感情で
本物の感情なんかどこにもなくて
全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て
消えてなくなっていく
目を覚ますと夢の内容を忘れることがあると有心から聞いたレイは、目を覚ましその現象が真実であることを知った。
寝汗はびっちょりで、息は荒い。
悪夢を見ていたのは想像がつく。だけど、内容はわからない。
「なるほど、分からないものは確かに怖い」
怖さに浸るが、この恐怖が本物か疑う自分もいる。
水を飲もうと、レイは立った。悪夢を見て起きた朝は、水をよく飲むと聞いたからだ。
人の心を知らないうちは、模倣するしかない。
そう結論付けた有心のもと、レイは1日の生活をなるべく普通の人間に寄せた。
水を飲み、一段落ついたレイはリビングのソファに座った。
テレビのリモコンを掴み、電源ボタンを押すと、テレビから出される光にレイの白髪が照らされた。
パチっと音がするとリビングの電気がついた。
「暗い中でテレビを見ると、目が悪くなるぞ」
有心がそう言いながら、台所に立った。換気扇をつけ、朝食の準備を開始する。
「暗い中でテレビを見たら目が悪くなるっていうのは合っているけれど、目が悪くなる一番の原因は遺伝子だって先生が言ってたじゃん」
「でも、レイの家族がわからないんだから、予防しておくに越したことはないだろ?」
「実はワタシはコンタクトなんだ」
「え!?」
脈絡なく告げられた真実は、有心の持っていたソーセージを落とすほど有心を驚かせた。
「冗談。裸眼だよ」
その証拠にレイは両目をあっかんべーして見せた。
少しシュールな光景に、有心は我ながら呆れた。
「ホントだ、裸眼だ。まったく、冗談は駄目だよ?ソーセージ、洗わなきゃじゃん」
「ふふ、先生の反応は楽しいから、ついつい冗談言いたくなる」
瞳の中をよく覗けば、そこには興味の色が隠れていた。
「やだ、先生。ワタシの目をそんなに見ないでよ。変態」
「言い方ひどくない!?」
「ふふ、楽しい」
ふっと笑いながらレイは言う。
「朝食作り、手伝うよ」
レイは優しく笑った。
その日の夜もレイは夢を見た。
どんどん目の前の人間が首から血飛沫をあげながら倒れていく。自分の体は自分の思いもよらぬほど動くことにレイは疑問を覚える。
感覚全てが鈍くなり、どこか現実味がない。
その感覚だけが夢であることを告げている。
それ以上、人が死んでいくのを見たくなくてレイは目を閉じた。
次に目を覚ませば、自分の部屋・・・ではなく、闇の板に乗っていて、月が自分の近くで輝いている。
「いい?レイ」
誰かが自分の名前を呼ぶ。
「レイは感情を知って」
その誰かはまだ有心と知り合ってばかりの頃の己と似ていて、でもどこか違くて、チグハグさに混乱した。
急に意識が遠くなり、レイは意識を手放した。




